見よ、刻め、世界
意地であろうか、目的に対する執着の差か。
神崎は鬼々に喰らいつき、どちらもルークの後を追えないでいた。しかし、ダメージは確実に神崎の身体の方に多く蓄積されていた。
一瞬、ほんの一瞬。
鬼々に生まれた隙を見つけ神崎がは背後を取る。
ここで最大火力を打ち込めば大ダメージだ。
神崎の拳が炎を纏い鬼々を打ち抜いた。
はずだったが、そこにいたのは知らない誰か。
神崎の拳は知らない誰かの身体を打ち抜いていた。
鬼々が肉の壁として生き返らせた知らない誰かだった。
恐らく鬼族の誰かなのだろう。
「ごめんね、角々。これで終わり」
角々と呼ばれた鬼族の男の身体は砂煙のように消えていき、また神崎と鬼々が対面する。しかし、攻撃を打ち終わった体勢の神崎と今まさに渾身の一撃を繰り出そうとしている鬼々、同じように向き合っていても圧倒的なアドバンテージが生まれている。
鬼々が放つ一撃は神崎にトドメを刺し得る一撃。
そんな拳が、神崎の胸元に届いた。
が、届いただけだった。
神崎の身体が後方へ少し押されたが、逆に言えばそれだけだった。
肉体へダメージを与えるほどの攻撃ではない。
神崎は疑問を浮かべ鬼々の方へ視線をやった。
しかし、そこには同じように疑問の顔を浮かべる鬼々がいるだけだ。
「ふははは、今のは貸しだぞ。試運転は上々だな」
そこにはいつもの高笑いが似合いう男がいた。
「……ルーク」
ティグレの口から小さくその名が零れる。
ティグレの隣に立つその男は間違いなくルークだった。どれだけ打ちのめされようとその男は馬鹿みたいに諦めず最後は不敵に笑うのだ。
「ティグレよ。俺は最後の最後で当たりを引いたようだ。やはり人間最後まで諦めるものじゃないな」
「ふん、お前はどうせ最後が終わっても諦めない男だ」
「違いない」
ルークが神崎と鬼々の前に立った。
今度こそ彼と彼女と対等に口を開く。
この世界の頂点と。




