あの時に君は
ルークは指先を僅かに動かし、弾丸を放った。
しかし、その弾丸がニアリスを捉えることはなかった。
「ほら、言ったでしょ」
貴重な弾丸は空を切り、薬莢が地面に虚しく金属音を響かせる。
「うるさい、うるさいんだよ、お前。初めて会った時から気に入らなかった」
「あら残念、私には二人の王子様が私を助けに来てくれたように見えましたよ」
「王子はあいつだ。俺は魔王になる」
死に体の身体。多くの兵士に囲まれたこの状況。そして、上の階に戻ったところで化け物たちの戦いの余波だけでも死んでしまう程の戦力差。
今度こそ揃った。
どう考えても死ぬほどのピンチだ。
「神崎の首をお前の前に転がしてやるよ」
「出来るものなら」
「……異世界転生」
【能力名】
異世界転生
【LEVEL】
LEVEL9(MAX)
【スキル詳細】
・異世界から死ぬ間際の人間のこの世界に呼び出すことが出来る。
・呼び出した人間と異世界の情報は大まかにだが頭に流れ込む。
・発動条件、スキル保有者が死ぬほどピンチに陥るたびにレベルが上がり、LEVELが一つ上がるごとに一人を呼び出せる。
ただし、複数回ピンチに陥っても一人異世界から呼び出すまでは次のLEVEL上昇は行われない。
・????????????????
最後の異世界召喚が行われた。
ルークがそれを口にした瞬間、部屋中に煙が舞い上がった。
それは部屋中を包み、直ぐに収束する。
最後にルークに呼ばれ、ルークの隣に立つ者はどんな者なのか、ニアリス達は煙が晴れるのも待ち切れずにじっと目を凝らした。
しかし、そこにはルーク一人しか立っていなかった。
「……ふむ」
渦中のルークは特に慌てることもなく自身の手の平をしげしげと眺めていた。
ルークはもう一度ニアリスへ目を向け「ニアリス」と呼んだ。
「次に会う時がお前の最後だ」
「ふふふ、悪者みたいなことをおっしゃるんですね」
「悪も正義もない、あるのは自分と他人だけだ」
ルークは他の兵士には目もくれず踵を返し、上階へ通じる階段の方へ向かった。
「あのまま行かせていいのですか?」
一人の兵士がニアリスに問うた。
「……私は何をすればよかったのでしょうね」
兵士の問いにニアリスは答えず、自分にもう遅い問いを投げかけるだけだった。




