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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
最終章 誰もが欲しいものへ手を伸ばし、勝者は只一人
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間抜けなピエロ

 ルークが九回目の異世界(ナ・)転生(ロウ)を叫んだ。

 最後の人生最後の異世界(ナ・)転生(ロウ)だ。

 だから、格好つけた。

 咆哮をちょっと両手を伸ばして変なポーズで叫んだ。


 だけど不発だった。


「「「「………………」」」」


 一瞬の静寂。

 そして、神崎と鬼々は見えていないふりをしてくれた。

 ルークにはその優しさが染みた。


「あのー、キング?」

「黙ってろ。今話し掛けられると泣いてしまいそうだ」


 ルークが天を仰ぐ。


「……ティグレ」

「まぁ、考えられることは一つだろうな」


 ティグレとルークはなんとなく答えが分かっていた。


「今のお前は逃げようと思えば逃げられる。さっきまでの強敵と対面した状態じゃない。それが異世界(ナ・)転生(ロウ)の唯一の発動条件である死ぬほどピンチに陥る必要があると言うところを満たせていないのだろう」

「やっぱりそうか……いけるかなぁってちょっと思ってたんだけどな」


 ルークは眼前の死闘へ目を向ける。

 命を危険にさらすこと。それはとても簡単なことだ。目の前のこれに身を投じればいい。神崎と鬼々の世界の頂点を決める戦いに身を投じればルークの身は数十秒で虫の様に消え失せるだろう。


「……ノーリスクで得られるものなどないか」


 ジリッと地面を踏みしめた音がする。

 後退の一歩ではない。

 前進の一歩だ。


「うおおおおおおおおおお‼」


 ルークは叫ぶ。

 己を鼓舞するために。

 ギリギリまで肉体のパフォーマンスを上げ、嵐の中へ突っ込んでいった。


「行け、ルーク。己の欲するものは己の手で掴み取るんだ」


 ティグレが隣いたヨハネにだけ聞こえるようなか細い声で彼を応援した。


 ……の数秒後、ルークは神崎たちの戦闘の余波で瀕死となる。


「「あっ」」


 神崎と鬼々の声だ。

 それはあまりに弱くて小さな命。

 無意識に虫を踏み付けてしまったことに気が付いた声。


 魔王の間の広い床に穴が開き、そこから瀕死のルークは落ちていく。

 そして、崩壊とともに魔王の間の損害は修復していく。


「くそ、追わなきゃ」

「抜け駆けはさせない。あれは鬼々の得物」


 神崎と鬼々はルークを追いたいが、それを互いが妨害する。

 ティグレとヨハネはあまりもの瞬殺劇に一瞬固まってしまったが、直ぐに下の階へ足を運ばせに向かった。


(ルーク、生きていろよ。こんな死に方じゃ、あまりに間抜け過ぎる)



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