本当の最後
ティグレとヨハネは静かに聞いた。
背後の戦闘に目をやりティグレは僅かに目を細める。
「それでも勝機は限りなく薄いだろうな。そもそも実行可能なのかも定かではない」
「ですです。それはあまりにも賭けですです」
「分かっている。だが、それ以外ないんだ」
二人は黙り込む。
代案はないからだ。
「私ぃは最後まで付き合うですです」
ヨハネが覚悟を決めた。
「どうせ私は最後まで傍観するだけだ」
ティグレが怠惰を決め込んだ。
「ふん、せいぜいあてにしてるぞ」
ルークは再び部屋の中に足を踏み入れる。
目まぐるしく戦闘の展開が変わり、その激しさに足を踏み入れるだけでも一苦労だ。それでも前へ進まなければならない。
伝えたい相手へ声を届ける為に。
ルークは基本的に躊躇いのない男だ。
必要となれば何でも利用し、どれだけ冷酷な事でも実行する。
目的の為に手段はいとわない。
そんな彼が今躊躇っている。
躊躇いまくっている。
それでもそれしか活路がないのだ。
ルークはグッと息を飲み大声をあげた。
「神崎ィィィィ‼‼‼」
戦闘中の神崎の視線が一瞬ルークの方へ向いた。
「俺と組め‼」
そして、また鬼々の方へ戻った。
「シカトされたですです」
「当然の反応だな」
ティグレとヨハネは予め分かっていたような反応で溜息をついた。
「どこの世界に殺した相手と組む奴がいる」
無視されようとルークは吠える。
「このままいけばお前は鬼々に殺される‼ それならば一時的に休戦協定を組み、俺の手を取り戦った方が勝機があるだろう‼‼‼」
無視は続く。
ルークの理屈は分かった。
全く言い分に筋がないわけでもない。
「千と五百の戦いに十や二十と足してもな」
だがと、ティグレは毒を吐く。
ルークはここで切り札を切る。
「……俺には最後の異世界転生がある。最後の一人の異世界転生者を呼びだし百でも二百二でもなる戦力を増強して見せるさ」
ルークは願わくば鬼々と神埼すらを殺す逸材を期待するが、と心の中で思う。
「これが正真正銘、最後の異世界転生だ‼‼‼」




