心臓はとっくに掴まれている
後方では地鳴りのような轟音が響いている。
アレーニェとハレルの戦闘が本格化してきたのだろう。ルークはその音を耳にして一つの違和感覚えた。
逆に進む先には物音ひとつしないのだ。
それに気が付いたのはルークだけではなかったらしい。
「変ですです」
「あぁ、これから向かう地獄はハレル以上の化け物ばかりだ。そいつらが戦闘をしているにしては静かすぎる」
「そうね。少なくとも魔王、神崎、姉貴はいるはずだしね」
ティグレはその三人の言葉を加味してまとめる。
「普通に考えれば睨み合いか……もしくはもう全て終わった後なのかもな」
「そうなれば漁夫の利を得るには最高の状態だがな」
「その面子は例え死にかけでもここの全員を屠れるわよ」
もはや誰もが化け物過ぎてその三人が戦闘を行えば誰が強いのかはルークたちでは想像がつかない。蟻がゾウとライオンとゴリラの誰が一番強いのか分からないのと一緒だ。
五人はそれぞれの先の展開を想像しながら歩を進める。その先に待っている未来を可能な限り想像する。想像し備えるのだ。
五人の足が止まった。
一際大きな両開きの扉が四人の前に強い存在感を保ちそこにある。
「……ここが魔王の間だ」
唯一、この城の内部を把握しているティグレが口を開いた。
五人は無言で扉に触れた。
その手を少し前へ押しやれば否応なく招かれる。
「いくぞ」
ルークの掛け声とともに皆が無言で頷き、扉を押した。扉には確かな重みがあるにはあったが、開かないほどの強固さではない。徐々に部屋の中の灯りが廊下へ漏れる。
「いらっしゃい」
扉が完全に開き切る前に半分が死んだ。
誰も越えもあげられず死体に目をやる暇もなく一瞬足りとも部屋の中の怪物から目を逸らせない。
最後の戦いが今始まった。




