上陸、深き森へ
カッコよく確信した神崎の予想を裏切る形でルークは全く混沌の中心になんていなかった。シオンにやられた傷を癒し戦闘の準備に数日、そして地道に移動に数日、やっとこさかかってハクアの一層目、外周辺りにやってきていた。
「やけに静かだな」
「シオンとその同志たちが向かったんだから絶賛戦争中かと予想してたんだがなぁ」
ルークとバレッタがどこか異様な空気を感じ取り言葉にするが、それを感じていたのは二人だけではない。ルーク一行はみな肌で感じていた。
「入り口はどこも大量の兵が行進した後があるの。これについて行けばまず迷わんじゃろう。無論、罠の可能性も高いがの」
アレーニェが地面の踏み荒らされた草木を指先で軽くなぞる。
「この人数で馬鹿正直に正面から乗り込むのは分が悪いな。俺たちの最優先目的はハクアの鉱山に大量に眠るとされているトリニティだ。暴走状態のシオンとその仲間がハクアに突っ込んで混乱が起きているだろうからそれに乗じてトリニティを確保するぞ」
「でも、どう考えてもこの人数じゃ大した量運び出せませんよ」
「運ぶ必要はない。ドロクとその辺の策は練っている」
話を振られたドロクは無言で親指を立てる。
「トリニティを詰め込めば即時使える強力な爆弾を開発してもらった。確保とは言ったが、正確には鉱山を占拠するぞ。そして、この国を俺たちの新たな拠点をするのだ」
ルークが概要を明かすと、それか如何に無謀で綱渡りの作戦なのかはだれの目にも明らかだったが、今更その程度の無茶に文句を言う者はいなかった。
「つまりある程度時間差を開けてここにやって来たのはシオンらの兵が獣族の兵と消耗し合い漁夫の利を狙う為ですね。流石、ルーク様」
「けけ、ダーリンの姑息だろうが、狡かろうが、なんでもやるって姿勢は好きだぜ」
ワンコとバレッタは寧ろ乗り気なまであった。
「あぁ、もう一度国盗りだ。世界を支配するのは他の誰でもない、この俺だ」
もう一度。
彼はそう言った。
初めて国を盗った時、そこには神崎とリオンとティグレの四人だけだった。そして、ホイホイを起ち上げ、世界を支配する準備はあと少しの所まで来ていた。
まさか、それを他の誰でもない、神崎礼嗣に邪魔されるとは。
(問題ない。俺は何度でも這い上がる)
ルークが再び神崎への憎しみを燃やし、気が付けばハクアの森の第一層を抜け、市街地のある第二層の入り口へ踏み込もうとしていたところだった。
まだ入り口らしき門は微かに視認できる程度だが、第一層入り口よりは人の気配と戦闘音が聞こえてくる。
「このまま市街地を抜けていけば鉱山への到着は速いだろうが、流石に敵兵うろつく中、これだけの兵力で騒ぎを起こすのはまずいな。外周を伝って迂回しながら鉱山を目指すか」
ルーク一行は充分に警戒し、時間をかけてでも戦闘を極力回避する選択を選ぶ。
充分な距離も取り、このまま行けば問題なく戦闘は回避できるはずだった。
が、僅かな音も逃さない門番がそこにいた。
「おいおい、御一行様お揃いでどこに行こうってんだ? パーティー会場とは随分見当違いの方向へ行こうとしてるじゃないか」
全員が声のする方向へ視線を向けた。
その敵に対し最初に声をあげたのは普段温厚なバルゴスだった。




