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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第五章 破滅と混沌の世界へようこそ
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選ばれた王と選ばれた異世界人

「……やはり誰もが死なないと分からないのか」


 神崎は戦闘に備える。

 ドラゴは神崎の言葉を聞き逃さなかった。


「いや、相容れない他人の考えなんて死んでも分からないものさ」


 ドラゴの小さな体躯が高速移動した。

 瞬時に神崎の背後に回り一撃を加えようとする。

 それを神崎は背後に水の滝を発生させることで壁の様にして遮断する。


 ドラゴの一撃いちげきはそれだけで四肢を粉砕する必殺の一撃。正されを繰り出すだけでも大抵のものは敵にすらなれないだろう。

 だが、神崎はこの一撃を躱す、躱す、躱し続ける。


「くそっ! なんでだ!」


 神崎は足場を踊るように足裏でタップすると地面から地面と同じ素材でできた円柱の柱が競り上がりドラゴの腹部に一撃を入れる。


「グッ‼」


 一瞬動きを止めたドラゴの顔面に神崎が炎を纏った拳で追撃を食らわせる。


「ガッ‼」


 チェスマンは堪らず援護のマジックを発動し炎、水、雷が弧を描いて神崎に向かっていく。が、これを神崎は全く同じマジックで相殺。


「なんですと! お前は人族じゃないのか‼」


 ドラゴがその隙に体勢を建て直し拳に龍の鱗を纏い先ほどまでよりもさらに威力の増した一撃を神崎に向ける。

 神崎はそれをまた紙一重で躱す。

 が、


 神崎の頬に薄皮一枚分の切り傷が入る。


 この日初めての傷を負った神崎がドラゴへの警戒を一段階あげた。ドラゴは今の一撃に手応えを感じたのか、更に表皮を鱗で覆ってく。後肢に小さく見えていた尾も鱗が厚くなり一メートル程に伸びていく。

 ドラゴは鱗の効果かスピードは落ちたが、一撃の威力は増していく。

 神崎はその攻撃を避け、かわし、回避する。

 しかし、そこにあるのは苦悶の表情。


(なんでだろう。確実に回避しているはずなのに気が付けばダメージを負っている。これがこの子の能力なのか)


 種明かしの必要もない単純明快な能力。

 獣族の王、ドラゴの本能(ソウル)龍如(ヤクザ)』だ。一度、攻撃の動作を終えてしまえばそれを回避しようとも相手にその本来の回避できなかった場合のダメージの数パーセントを与える。

 だから、ドラゴにスピードは必要ない。一撃の威力だけに特化し続ければ相手はそのダメージを少しづつ貰い続け、どこかで回避を誤ればお陀仏だ。


「いいですよ! いいですよ! それでこそキング‼」


 チェスマンは次第に戦いは均衡しドラゴ側に傾き始めたことに歓喜する。そして、その間にも絶えずマジックでの援護弾が飛んでくる。

 神崎はこれを冷静に捌くが、防戦一方になり始める。


(以前の僕ならとてもじゃないが、勝負にすらならなかったな)


 ドラゴが次の一撃を出し切る前に神崎のショートアッパーがドラゴの顎を掠める。一瞬腰の落ちたドラゴに二撃、三撃と加えていく。

 単純な腕力による攻撃、スキルによる攻撃。

 まるで暴力の檻。それは止むことなくドラゴに降り注ぐ。


(いや、これはチャンスですよ。キングには最後の切り札が残っています。ジェントルな私が与えたキングの役職。これは逆境にこそ真価の発揮される王の称号『王の真価』それは残り体力が少なくなればなるほど、死が近付けば近づくほど、身体が弱れば弱るほど、攻撃性、威力が絶大的に上昇していく最高の力。キングの回避しても威力に比例して何パーセントかをダメージとして与えることの出来る本能(ソウル)龍如(ヤクザ)』との相性は最高です。敗ける筈がない。世界中を探し回り魔王にすら勝ちうるとジェントルな私が見つけた最高のキング。歴代でもこれ以上のキングはいなかった)


 チェスマンは自分にそう言い聞かせた。

 相手が誰であろうと自身の発掘した最高傑作に敗北の文字はない。せいぜい攻撃を当て続ければいい。その攻撃が止んだ瞬間こそ神崎の最後だと。


 しかし、止まない。


 暴力の雨は止まないのだ。ドラゴの攻撃力は、腕力、脚力、膂力、スピード、全て全快事とは比べ物にならないぐらい向上し始めている。

 しかし、それでも神崎の攻撃から抜け出せない。


(おかしい、おかしいよ。こんなことあるわけない)


 ドラゴが攻撃を止めようと少しでも四肢を動かせばそれを坊主がたるんでいる修行者の肩でも叩くように払っていく。

 

 止まらない。止まらない。止まらない。


 ようやく攻撃が止んだ時にはドラゴはボロ雑巾のようになり地面に落ちた。全身の鱗は剥され、打撲と出血で身体中は嫌な色に滲み、息をしていない。


 絶命だ。



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