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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第五章 破滅と混沌の世界へようこそ
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女の子の末路

 シオンの絶叫はまるで獣の咆哮ようだった。

 

「ルゥゥゥクゥゥゥンンンンン‼‼‼ ルゥゥゥクゥゥゥンンンンン‼‼‼ ルゥゥゥクゥゥゥンンンンン‼‼‼」


 視力を失ったのか、ルークを知覚出来ないようでその叫びはどこにいるのかわからないルークを探すものだった。

 ティグレとリオンはシオンの『未来の右腕』による模倣版時間外(オーバー)労働(タイム)を喰らい疲労困憊状態でルークの肩をそれぞれ借りながら変わり果てた化け物を見上げる。


「今なら止めを刺せるんじゃないか?」

「……馬鹿、他の連中は虫の息なんだぞ。俺にもあいつの首を落とせるだけの決定打がない」

「殺したくないだけだったりして」

「それこそ馬鹿な話だ」

「そうだね」


 ルークたちはのろのろと他の仲間も回収するために移動する。


「ルゥゥゥクゥゥゥンンンンン‼‼‼」


 シオンが辺り構わず身体を振り乱し暴れ始めたので、周りの建物も瓦解し始めた。


「やめてくれぇぇ‼ 俺のみせがぁぁぁぁ‼」「何があったんだ‼」「急に暴れ出したぞ‼」「お仕置きタイムか⁉」「シオンちゃああん‼」「俺だよ、俺‼」「正気に戻ってくれ‼」「いや、この子は元々正気じゃなかったろ‼」「そんなとこも好きだぁぁ‼」


 中立地帯は阿鼻叫喚に包まれた。


「ちっ、やっぱり普通に考えてこの化け物は殺せないだろ!」


 ルークたちも崩れる建物を回避しながらシオンに見つからないように身を隠す。

 すると数十分暴れたのち段々とシオンは味方の兵士も巻き込みルークのいる方向とは全く違う明後日の方向へ進行していった。

 幕切れは何とも呆気ない。


「終わったの?」

「終わってはない。あいつが生きている限りまたどこかで正気を取り戻す可能性もゼロじゃない。そうすればまた大きな壁となるからな……いや、待てよ。あの方角は」


 ルークは逡巡するとなにやら妙案を思いついたようでニヤリと笑う。


「どうせなら敵同士消耗してもらうか」


 ルークは唖然とする中立地帯に集まったシオンの兵士たちの耳に届くように高い場所から大声を張り上げる。


「聞け、お前ら‼」


 自分たちの頭であるシオンが原因不明の暴走で意気消沈し静まり返っているところにその声はよく響いた。


「お前たちの大将シオンは原因はわからないが今不安定な状態にある‼ このまま行けばシオンの行き先は大国ハクアだ‼ いくらシオンと言えども世界二大大国のうちの一つハクアにあれだけ不安定な状態でいけば返り討ちに会う可能性が高い‼ これを助けられるのはお前たちしかいない‼ 直ぐに全軍で追おう‼」


 三大禁忌である異世界(ナ・)転生(ロウ)の複製の一連の流れが少し離れていたシオンの兵士たちからは把握されにくかったとはいえ、ぬけぬけとよく言ったものだ。

 勿論、ルークの言葉を最後まで聞いたシオンの軍たちの中には「お前が言うな」「お前が何かしたんじゃないか」と不満の声がちらほらと聞こえ始める。

 そもそもシオンにルークが勝てば軍勢がシオンを副官のような形に置くことでルークの軍門に下る流れだったが、勝敗も曖昧でシオンもこの場にいないのではルークの指図に従う義理はない。


「今、そんなことを言っている場合か‼ お前たちの一番大事なものは誰なのかよく考えろ‼」


 その言葉にまたシオンの兵士たちは黙り込む。

 気に食わないが、四の五の言っても現状シオンを助けるには後を追うしかないのだ。

 するとシオンの兵士たちの中から代表者だろうか、一人の男が前に出た。


「俺たちは誰にも愛されなかったはぐれ者だ。だから、どんな思惑があろうと俺たちに愛をくれたシオンに感謝しているし、俺たちも愛している。そんなシオンがどれだけお前のことを好きなのかもよく知っているつもりだ。ここにいる全員が義務教育かの様にお前の話を最低百時間は聞かされているからな」


 ルークたちはもうこの程度ではドン引かない。

 物理的に一歩下がるだけだ。


「俺たちはまだ彼女に返さないといけない恩がたんまり残っているからな。お前の口車に乗せられてやるよ。ただし、一個だけ約束しろ」

「……なんだ?」


 代表者らしき男は鼻の下を指先で擦り少し照れながらこう言った。


「……この戦いが無事に終わったら、シオンのことを『お姉ちゃん』って呼んでやってくれよ」

「……リョウカイシタ。ワカッタヨ」


 ルークの無機質な返答にシオンの兵士たちから「「「うおおおおおお‼‼‼」」」と歓声が上がった。


「約束だぜ‼」「言質取ったからな‼」「ついでに俺のことお兄ちゃんって呼んでくれてもいいんだぜ‼」「あっ、ずりぃ、なら俺はお兄たまだ‼」


 あれだけルークに敵対的だった一同は何故か急にまとまり初め、ハクアへ行く為の戦の準備を整え始めた。


「……いいのね」


 リオンが静かにルークに囁いた。


「ボク、モウナニガナンダガワカラナイヨ」

「あっ、壊れたな」


 ティグレがルークを正気に戻す為に古い家電を直す様に頭を叩く。

 そうしているとシオンの『未来の右腕』による模倣版時間外(オーバー)労働(タイム)を喰らった面々も徐々に起き初め状況を把握する。


「ルークさんの具合が戻るまでどのみち我々も体力を戻さなくてはならないだろう。明日、明後日まではここで療養に努め、のちに出発と言う流れでどうか?」


 ワンコは周りに決を採るが特に反対する者もなく、ようやくルークたちの壮絶な戦いの一日が取り敢えず終わりを迎えた。





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