彼の最後の抵抗3
ボロボロになり身動きの取れなくなったルークをシオンの複数の右腕が優しく抱きかかえ、シオン本体、上半身のあるところまで運んでいく。
「ルー君、もうなにもしなくていいの。ただそこにいるだけでルー君の望みは全て叶えてあげる。大丈夫、お姉ちゃんに出来ない事なんて何もないんだから」
シオンの肩からまた更に新たな右腕が生えてくる。何の変哲もない右腕だがルークには見覚えがある。自分の右腕だ。
「どれどれお姉ちゃんが呼んでしんぜよう。もうその力の使い方はなんとなくわかったしね」
「「なっ‼」」
ルークとティグレが同時に驚愕した。シオンは『未来の右腕』で異世界転生を再現しようとしているのだ。
もしそれが叶うのならシオンは今の軍勢だけではなく異世界から神崎や強華クラスの桁違いの兵力を手中に収めることになる。
それは本当にこの世界がシオンの物になることを意味するだろう。
「あー、はいはい、こんな感じなのか。なんか門がイメージ出来てきた」
「出来るはずがない。いくら天才だろうが、神域の到達者だろうが、それは俺だけのものだ!」
「………………」
ルークは叫び。
ティグレは静観する。
叫ぼうが、見守ろうが、ボロボロの彼等にシオンの行為に介入するだけの手立ても体力も手立ても残っていないのだ。
シオンは空に叫ぶ。
「異世界転生‼‼‼」
時空の歪みを同じスキル保持者のルークだけが感じ取った。
「……これは」
ルークが息を飲んだ。
次に言葉を口にしたのはティグレだった。
「……間違いなくお前は最強だったよ。全盛期の私にも並びえていたかもな。しかし、三大禁忌を舐めすぎた」
シオンは叫んだまま静止している。
二人の何かを感じ取った様子に恐る恐るリオンが尋ねた。
「……どうなったの?」
「失敗だ」
空間は歪み、それは一向に元の形に戻らない。
ルークはそれは同じスキル保持者として感じ取った。
これは失敗だと。明らかに自分の時と違うと。
「ぐあああああああああああああ‼‼‼」
十数秒の静止ののちシオンの悲鳴が辺りを包んだ。
「一瞬焦ったが、やはり三大禁忌は複製出来なかったか」
「あああああああああああ‼‼ ルゥゥゥクゥゥゥンンンンン‼‼‼」
「今度こそ本当に壊れたな。もはや廃人だ」
シオンの絶叫はまるで獣の咆哮ようだった。




