彼の最後の抵抗2
一方的にボコられていくルークを見て既に虫の息のティグレが意図を読み取る。
(そうか異世界転生を使う気だな)
【能力名】
異世界転生
【LEVEL】
LEVEL5
~次のLEVELまで?
【スキル詳細】
・異世界から死ぬ間際の人間のこの世界に呼び出すことが出来る。
・呼び出した人間と異世界の情報は大まかにだが頭に流れ込む。
・発動条件、スキル保有者が死ぬほどピンチに陥るたびにレベルが上がり、LEVELが一つ上がるごとに一人を呼び出せる。
ただし、複数回ピンチに陥っても一人異世界から呼び出すまでは次のLEVEL上昇は行われない。
・????????????????
最早一発逆転にはこれしかない。
完全にギャンブルではあるが、異世界転生で神崎や強華クラスかそれ以上の戦闘タイプの異世界転生者を呼び出すしかない。
殴られ過ぎて口の中が血と砂の味で満ち、身体の感覚がごちゃごちゃになって来たとき、ルークは縋るように口にした。
「……異世界転生」
「え? なんて?」
ルークの言葉を聞き漏らさずシオンが聞き返す。
ルークのその力を知っている者たちは一瞬身構えた。
「…………」
何も起こらない。
そのことにルーク自身が一番驚き発動を促すように繰り返す。
「異世界転生、異世界転生……異世界転生! 異世界転生‼ 異世界転生‼‼ 異世界転生‼‼‼」
この世界とどこか知らない異界の狭間に門のようなものが見える。そして、それを唱えればその門は開き奴らはやって来る。ルークの脳内には常にそんなイメージのようなものが湧いていた。今回もその門のイメージまではうっすらと見えているのだ。しかし、肝心の門は何時まで経ってもルークの声には答えない。
その様子にシオンはくすくすと笑った。
「もー、やだー、ルー君、同じ言葉繰り返して赤ちゃんみたい。めちゃくちゃ可愛いね」
シオンは少し離れたところにいるアレットを残った左手で指差す。
「言ったでしょ。お姉ちゃんはルー君が心配で心配で、ずーっとアレットに様子を探らせてたんだよ。それでその力のことも勿論知ってる。よくわかんないけどそれでルー君はどこからか凄いお友達を呼び出せるんでしょ。凄いね。ルー君友達いなかったし、お姉ちゃん超安心したよ。まぁ、そのスキルのお陰でお姉ちゃんが合流する前にルー君が世界征服の計画を立て始めちゃったのは完全な誤算だけどね」
シオンは息遣いは荒いがそれでも口を止めることなくひたすらルークにだけ話しかけ続ける。
「どうしたの? そのお友達を呼ぶスキル使えなくなったの? 不思議だね、なんでかな? それがないともうお姉ちゃんに勝つ方法ないの?」
どうしてだ。
ルークの頭はそれでいっぱいだった。
これだけのダメージを負えばこれまでなら呼び出せたはずだ。
・発動条件、スキル保有者が死ぬほどピンチに陥るたびにレベルが上がり、LEVELが一つ上がるごとに一人を呼び出せる。
そういつものように死ぬほどピンチなら。
ティグレすらも答えは分からずただ状況が好転しないことに歯軋りしながら原因を探ることに頭を巡らす。
(これ以上、どうやって死ぬほどピンチになればいいんだ)
「はぁはぁ、ルー君、苦しそうだよ。いっぱい殴っちゃって、ごめんね。直ぐに結婚してあげるからね」
(……死ぬほどピンチ? くそっ、そういうことか)
ルークは絶望した。
世の中には死よりも深い絶望もあるのだと身に染み込まされた。
(こいつ、シオンの奴、そもそも俺を殺す気が一切ないのか。だからどれだけダメージを受けようといつまでも死ぬほどのピンチなんて訪れないんだ)
今までの敵は間違いなくルークを殺しにかかっていた。
そして、だからこと弱いルークは何度も死にかけ、その度に異世界転生を発動させることが出来たのだ。
だが、今回の相手はそうではない。
ルークを殺すことなんて目的に含まれていないのだ。
なんなら結婚しようとしている。
当然、異世界転生は発動しない。




