彼女の口から出る不確かな真実
「これで気が済んだ? ルー君たちの全力はこんなものなの? なら、今からはお姉ちゃんの時間だよ。ルー君仲間みんなに痛めつけて、ルー君がごめんなさいするまでいたぶってあげる」
(まだだ)
ルークは心の中で唱えた。
「はっ、俺からの攻撃はしっかり効いているようだし、よく余裕を保っていられるな」
「ルー君からの攻撃は愛だからね。攻撃のうちに入らないよ」
シオンは深くはなかったとはいえ、ルークに背中ら刺され時間外労働で疲労させられ体力も奪われたはずだ。
その上、右腕は変態族の力で治したとはいえ強華の一撃で両手の骨も一度折れ、左腕は今も折れたままのはずだ。
いくら傷を双思総愛で塞ぎ、無理やり動かそうとも相当なダメージが蓄積していることは確定しているのだ。
ルークたちもかなりの深手を負っているが、じわじわと追い詰めてはいる。
「最強だと宣っていた割には大したことはないな。これなら鬼族の方がよっぽど手ごわかったな。その上、まだ魔王だっている。お前の力が世界を支配できるだけの者とは思えないよ。少なくとも最強の種族である鬼族にも及ばない力だ」
ルークは挑発と同時にかつて自身が戦った最強の敵鬼族の長でありティグレの妹でもある鬼々の事を思い出していた。
ルークと神埼、それに強華まで加えた最強の布陣で手も足も出なかった相手。
間違いなくこの世界の頂点に近い位置にいる化け物だった。
シオンも確かに強いが鬼々と比べればまだ戦いになっているだけ可愛く思える。
「んー? 鬼、おに、オニねぇ。そんな子たちもいたね。確かに数は少なかったけど結構手強い子たちばかりだったよ」
「なんだ。戦ったことがあったのか。だが、お前の仲間の中に鬼族らしき奴らがいないところを見ると、負けたか良くて引き分けってところだろ」
「んーん、みんな殺したよ」
その場にいる誰もがシオンの発した言葉を理解できなかった。彼女は世界最強と言われる種族鬼族を皆殺しにしたというのだ。
一番最初に言葉を返したのは元同属だったティグレ。
「ばっ、馬鹿を言うな。お前如きにやられるわけがないだろう。私は鬼族の力を知っている。貴様は確かに強いが、それでも鬼族の方がタフで力も強いはずだ」
ティグレにしては珍しく言葉の端々に動揺が見られる。
「ティグレちゃん、戦い方にも色々あるんだよ。それにね、ルー君にも教えてあげたいな。これはお姉ちゃんからの忠告。ルー君の戦い方は常に弱い者からの視点からなのか、常に消耗戦しか想定してないんだよね。強者に自分たちの攻撃が通ったところで一撃で殺せるはずなんてない。だから、自分たちでも殺せるぐらいまで弱らせてから止めを刺そう。だそれまでは耐えて耐えて耐え忍ぶ。少しずつ相手を削って弱らせよう。昔からこればっかりだよね。陣取りゲームならそれで詰みもあるかもしれないけど、現実はそれだけじゃないんだよ」
シオンの右腕が変異し爪が鎌の様に鋭く伸びきる。
「どれだけダメージを負おうと、最後の最後まで劣勢だろうと、勝負は最後に立っていた方が勝ちなの。現にお姉ちゃんはまだピンピンしてる。パフォーマンスを一切落としていない。そして、今回も最後まで立っているのはお姉ちゃん。いつもそうだったでしょ」
鋭く伸びた爪が振りかざされる。
「姉は強し」




