獣と王
―獣族の国ハクア
「時は来たんだ」
獣族の王、四老獣の更に上に立つ存在。
白く長い銀髪を靡かせる幼き王、ドラゴ。
彼はそう口にした。
王の言葉を受け膝をついてその場にいるのは四老獣の二人、野太い声をした三メートル近いガタイの良い男ライオ、知的な声で眼鏡をかけた一見細身の男オオカ。バサギが殺され、トライが行方不明の今四老獣で残っているのはこの二人しかいない。
「偵察部隊から連絡がありました。今、亜人族ではクーデターが起きて混乱状態のようです。狙うなら今かもしれません」
偵察部隊を複数抱えるオオカは獣族の王ドラゴに進言した。
「うーん、今更ちんたら亜人族か。世界を取るって言った手前なんかみみっちくない?」
「千里の道も一歩からかと」
「ドラゴ様、チャンスは確実にものにしましょう!」
ドラゴは二人の進言もいまひとつ腑に落ちないようで「うーん、うーん」と頭を悩ませた。
「いいのですよ、ジェントルな私のキング。あなたは頭を悩ませる必要はないのです。指示は全てジェントルな私が請け負いましょう」
「あっ、チェスマン!」
霧の濃い森の奥から現れたのは身体が球のように丸い男、チェスマン。彼は不気味で不敵な笑みを顔に張り付けドラゴの背後に立った。
「誰だ貴様は‼」
「王の前で不遜であるぞ‼」
当然、自身の王に気安く接するチェスマンに対し二人の四老獣は牙を剥いた。
「あぁ、いいんだよ。ライオ、オオカ。チェスマンは僕の親なんだ」
ドラゴは二人に対していつも使わないような優しい声音で諭した。ドラゴはチェスマンの事を自身の親と説明した。しかし、その容姿はあまりにかけ離れていて、そもそもチェスマンが獣族にはとても見えない。
オオカは恐る恐るそれを口にする。
「……恐れながらチェスマン様は我らと同胞である獣族のようには見えませんが」
「ははは、ジェントルな私に種族など無意味ですよ。しかし、強いて言えばまだ亜人族に分類されるのでしょうね」
「それではドラゴ様の親と言うのは説明が付きませんが」
「オオカ、育ての親って意味だよ。分かったら、これ以上チェスマンに失礼な口を利くんじゃない」
「……はい」
腑に落ちない。
オオカ、ライオの反応は当然のものだった。
しかし、自身らが拝める王がそう口にすればもうその言葉に逆らう余地はない。




