未開の地への来訪者 後編
「って、なんだ」
最初に弛緩したのはリオン。
「アレットじゃない。って、あなたどうしてここに?」
次にリオンの関係者とわかるやいなやヨハネとバレッタも緊張を解く。
「私、いつも言っているでしょう。リオン様のいらっしゃる所にはいつも現れると」
「相変わらず掴みどころのない人ね」
そして、最後まで緊張の解けない者がいた。
「ところでルーク様?」
アレットの真紅の瞳がルークを捕らえる。
ルークはびくりと肩を震わせる。
神崎や鬼族の長である鬼々と相対した時にも負けず劣らない緊張感だ。
ルークが子供の頃にリオンの屋敷に世話になっていた時からの絶対的上下関係。ある意味ルークのワイルドカードとしても最も有効で相性最悪の組み合わせ。
「なんでしょう」
普段から表情の変わらないアレットは少しだけ小首を傾げる。
「取りあえず死ぬまで殴ってもよろしいですか?」
ルークは瞬時に地面を頭にこすりつけていた。
「すいまっせんでした‼」
「いえ、謝ってもらわなくてもいいので、死ぬまで殴らせてくださるだけでいいんです」
「すいまっせんでした‼」
「だから、謝罪入りません。私ごときいちメイドがるーく様を許す許さないの立場にはございません。なので、死ぬまで殴らせてください」
「すいまっせんでした‼」
「……わかりました。許します。なので、死ぬまで殴りますね」
「すいまっせんでした‼」
リオンにしてみれば、子供の頃から見慣れた光景なのだが、初見のヨハネとバレッタは開いた口が塞がらず、何が起きているのか最後まで把握できなかった。
「キングのあんな姿初めて見ましたですです」
「ダーリンをあそこまでさせるなんて、あの女何者だ?」
最後まで地面に頭を擦りつけたルークはなんとかその場での処刑だけは免れ、露店の店主には「あんたも苦労してるんだな」と涙ぐまれ人数分のローブをタダで譲ってもらった。




