旧知の敵 後編
ポーンは自身の舌をカリッと小さな音をさせて噛み切った。次の瞬間には辺りが閃光で覆われる。
次に爆音。爆風。火柱。
ポーンは爆発を起こしたのだ。
予め事象を知っていたチェスマンたちは一手先に非難してほぼ無傷だ。
「ビショップ、ルークを回収してきなさい」
ビショップと呼ばれた少年は無言で頷き爆風で粉塵が舞う煙の中に躊躇なく足を踏み入れていく。煙のせいで視界は悪く、ビショップは辺りから人影を探す。
「―愛は無限と知れ」
一番最初に動いた人影はシオン。彼女の右手は緑色の液体とかし、右肩までにかけて腕の形状をとどめていなかった。そして、その一部とみられる液体がドーム状に薄く膜を張り、ルークとリオンを守っていた。因みにワンコは守られておらず自力での回避を図ったが、間に合わず深手を負った。
その液体は次にシオンの手足となりビショップの鼻と口を塞ぐ。
「煙が晴れる頃には人質の出来上がりってとこかな」
「シオン、そいつらに人質の価値はない。チェスマンの駒に過ぎない」
「ふーん、ルー君がそういうならそうなんだろうね」
ゴポッと音がする。
それはシオンが意図的にビショップを液体化した右腕で窒息死させた音だった。
「愛は有限だから美しい」
その言葉と共にシオンの腕は液体化が解かれ、元の腕に戻った。かと思いきや、その腕は数メートルにもゴムのように伸び、チェスマンを襲う。
「ちっ、生きていましたか! ビショップめ、使えない駒だ」
再度にらみ合いが続くかと思ったその時、今度は二人の間に瓦礫の岩が降って来る。
「……ルーク……大丈夫」
そこにはヨハネに肩を借りながら満身創痍の強華がいた。
「意識が戻ったのか」
後ろには残りのメンバーも揃っている。
「間に合ったか」
ワンコが傷口を抑えながら、皆に視線で合図を送る。
次の瞬間にはそれぞれの最大火力の攻撃でチェスマンとシオンに向かって放った。街中だろうと一切の遠慮は見られない。
「今の内に逃げるぞ‼」
それでも倒せた確証はない。
ルークの掛け声とともに全員は一斉に距離を取る。
「キング~、あいつらはなんなのですです?」
「……恐らく魔王討伐前の最後の障害だ」
ルークたちはそのままついに人類の領土を抜け、亜人族の治めるエア、獣族の治めるハクアの中間にある僅かな中立エリアに足を踏み入れることになった。ここから先は滅多なことでは人族が訪れることのない魔境。
だが、人類を統一したホイホイ、その王ニアリスに追われているルークたちには人族の領土内に存在を許されるエリアなどないのだ。




