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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第五章 破滅と混沌の世界へようこそ
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旧知の敵 前編

 三人寄れば文殊の知恵と言うが、確かに三人揃えばとてつもないエネルギーが生まれるかもしれない。

 その三人は雨ですら隠し切れない欲望を持った者たち。そして、邂逅する。


 人類の領土の端の端の小さな街。ホイホイを追放され、全てを失ったルークは街の路地裏で転倒し、空を見上げていた。

 積み上げてきたものを全て失い途方に暮れていた時、彼の元に二人の知った顔が現れた。それは偶然なのか、必然なのか、示し合わせたのか、本人たちにしかわからない。

 

 でも、そこにいたのだ。


「……何故、こんなところに? チェスマン、シオン」


 ルークはもう一度彼と彼女の名前を呼んだ。


 チェスマンと呼ばれた男は年齢は三十代後半から四十代前半に見える身体が球体のように丸々と太った男。服装はどう来たのかもわからない身なりの良さそうなスーツ姿。手には太っているからなのか、真っ黒な杖を持っている。その両の目は捉えどころがなく、焦点がどこにあるのかいまいち読めない真っ黒な色をしていた。


 シオンと呼ばれた女は年齢はルークより四、五歳ほど上だろうか、二十代前中盤の見た目で髪は短くピンク色だった。服装は肌を大きく露出した挑発的な格好。へらへらと笑い、ルークを品定めする様な視線を送り続けている。


 ルークはそのどちらもをよく知っている。

 そして、出来るならば二度と会いたくない相手でもある。ルークは考え得る最悪の事態を想像し、重い口を動かした。


「……まさか、お前たちは手を組んでいるのか?」


 ルークの質問に二人はようやく互いの認識したかのように顔を突き合せた。


「誰? ルー君のお友達?」

「誰です? ルークの『外』に出てからのお友達ですか? それとも恋人?」

「おっ、オジサンなかなか鋭いねぇ。でもちょっと違う。そう、私達は切っても切れない永遠の赤い糸に繋がれたキョ・ウ・ダ・イ」


 ルークは一人っ子だし、家族はとうの昔に国ごと焼かれた。

 それでもルークはシオンの戯言に突っ込む気力もなく、如何にしてここから離脱するかの案を練っていた。


「もういい、チェスマン、シオン目的を言え」


(どう考えてもただですら弱っている俺個人の力でこいつら二人から逃げきれるとは思えん)


 彼等の目的なんてどうせろくでもないことだと確信をしていたが、それでもセブンズや他の仲間がルークを見つけ出すまでの時間が欲しかった。


「だから言ってるじゃないですかジェントルな私があなたを迎えに来たって」

「ルー君、駄目でしょ。お姉ちゃんのことを呼ぶときはシオンねぇって呼びなさいって約束したでしょ。そんなんじゃこれから将来が心配だよ。今からは待たせた分、一生一緒にいるんだからね」


 頭のイカレ切った二人はやはりまともな回答をしない。

 それでもルークをこの場から連れ去ろうと言う目論見はかろうじで分かった。


「……新たなキングが生まれました。これでまた全部揃った。ルーク、ジェントルな私達家族の元へ帰るのです」

「やっとルー君の御願いを叶える準備が出来たの。これからは姉弟水入らずで一緒に過ごせるね。あっ、ルー君がどうしてもって言うならリオンも一緒に連れていってあげるよ」


 天涯孤独、血の繋がりのあるものなどこの世に一人も残っていないルークへ執拗に勝毒アピールする二人の変態。思い出せば思い出すほどに辛い過去がルークを襲う。


 一人はルークが祖国を焼かれ、孤児となった時に出会った者。

 一人はそこから逃げ出した先で出会った者。


 その過去があり、物語の始まり、ルークと神埼の出会いに繋がる。

 彼等はルークから切っても切れない亡霊。


「ルー君、警戒してるねぇ。顔に出てるよ。そんなにこのオジサン怖い人なの?」


 お前もだ。お前も。

 ルークはそんな言葉を飲み込んだ。


「はは、面白い事を言うお嬢さんだ。ジェントルな私が怖い? どう見てもルークが怯えているのはあなたにですよ。お嬢さん」


 いや、お前もだ。

 ルークは飲み込んだ。大人だから、言葉にしても一文の得もないから。

 正直、二人と離れてそれなりの時間が経過しているため、現在の二人の実力は不明だが、油断ならないことだけは分かっている。


「いやいや、あなただ」

「いやいや、オジサンでしょ」


 ルークは二人の間に流れる不穏な空気を感じた。

 これはもしかすると、そんな期待感が生まれる。


「もう! 話のわかんないオジサンだな! ルー君は私の物なんだって‼」

「いくらジェントルな私でも我慢の限界です。ルークは私と共に来るのです‼」


 シオンが自身の右の二の腕を左手でポンポンと叩き始めた。


「愛は勝つ、愛は勝つ、愛は勝つ」


 ブツブツと呟くシオンにチェスマンは構わず杖の切っ先を彼女に向ける。


「ポーン! ビショップ! ナイト! ジェントルな私たち家族の絆を切り裂かんとする彼女を切り裂きなさい!」


 その号令に三人の人影が現れ、シオンへ一直線に向かっていく。


(懐かしい顔もあるな)


 ルークは彼等を知っている。

 それはチェスマンの駒たち。


「神はジェントルな私たち家族の方応援してくれるでしょう‼」

「神の愛すら私達の二人の愛の前では児戯に等しいのよ‼」


 シオンは勢いよく右手を突き出した。


「化け物は愛を喰らう」



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