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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第四章 人を喰らえ、人共よ
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始まりと完結の雨

 雨が足音を隠してくれた。

追っ手から逃げるルークたちにとって好都合だった。


「予想通りというか、なんというか、やっぱりラブジルは張られていたわね」

「パパがこっそり教えてくれて助かったな」


 ラブジルの王を父に持つバレッタがこの状況を楽しむように笑う。


「仕方ない。このままメアリカと華中の国境を縫って人類の領地の外側へ行くぞ」

「亜人族や獣族の国のすぐそばでしょ。大丈夫かしら」

「リオン、今は悩んでいる時間はないんだ」


 後方で殿をしていたゴローとアレーニェから追っ手の影が見えたと連絡が来る。


「くそっ、もうすぐそこに街が見える。追っ手の数は多くないらしいから、一旦そこに潜伏してやり過ごすぞ」


 ルークたちの馬のスピードが速くなる。

 後方ではアレーニェが糸を張り、簡易的な罠を張りつつ合流してくる。追っ手も直ぐには追いつけないだろう。


「囮がいりやすかい?」

「あぁ、だがそちらはヨハネの部下に任せてある」

「そいつはよかった。物資を調達したらルークさんの腕も直ぐに作りやすんでしばし辛抱してくださいね」

「あぁ、傷が古すぎてこればっかりはリュミキュリテでも治せないらしいからな。馬に乗りにくくて仕方がない」


 ルークたちが街へ入るとフードを目深にかぶり市街の散策から始めた。ここまで情報が伝わってきているとは考えにくいが、警戒するに越したことはない。


「一旦別れて情報収集にかかろう。一時間後、またここに集合だ」


 ルークの言葉に頷き、みなそれぞれの方向へ散っていく。

 街に入っても雨は降り続く。

 人通りは少なくなり、人目を避けるルークたちにとっては都合がいい。それでも念には念を入れて、建物と建物の狭い路地裏を通り、ルークは歩みを進める。

 追われている焦燥感からか、歩みがいつもより早く、しかし片腕のないルークはバランスよく歩くことも出来ない。

 雨水に隠されたブロックの段差に躓き、子供のように大きく転倒してしまう。


「……くそ」


 建物と建物の隙間から見える曇り空は容赦なくルークに雨水を灌ぐ。


「あと一歩、あと一歩だったのに、あと一歩で人類が俺の手の中に収まったのに」


 空へたった一本の腕を掲げ、空を掴む。そこに手応えはなく虚しさだけがいっぱいに胸を包む。

 ルークは敗北したのだ。

 一点、一滴、一欠けら、一粒の利益もなく、ここまで積み上げてきたもの全てを毟り取られ完全に敗北した。

 その事実を改めて噛みしめ、噛みしめきれずに涙を溢す。


「……俺はルーク・レビヨン、世界を手にする男なのに」


 そんな欲望の声も雨音が掻き消していく。

 しかし、言葉にすれば誰かに届く。

 好転するか悪化するのは置いといてだ。

 

 雨音に隠す気のない足音が二つ近付いてきた。


「……誰だ?」


 それぞれ反対の方向からルークを挟むように歩いてくる。

 二人はそれぞれ答えた。


「おやおや? ルーク、ジェントルな私のことを忘れてしまいましたか? その名は他ならぬジェントルな私が付けたのに」

「ルー君、泣いてるの? だから言ったじゃない、ルー君のお願いは全部お姉ちゃんが叶えてあげるんだからお姉ちゃんが来るまで待ってってね」


 その声を聴いた時、ルークの全身に悪寒が走った。

 どちらの声にも聞き覚えがあり、ルークの根幹に関わる人物だったからだ。

 脳内から無意識のうちに消していた人物たち。


「……何故、こんなところに? チェスマン、シオン」


 二人は示し合わせてわけでもなく、なんならこの場で初めましての関係だが、息を合わせてこう言った。


「「君を迎えに来たよ」」



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