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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第四章 人を喰らえ、人共よ
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必然の時

 群衆を割って歩く女。

 別に特別なことをしているわけではない。

 強いて言うならば彼女の身に纏うオーラだろうか。


「負け戦に置いて一番大切なのはその後のポジショニングなんだ。ルーク殿もこれから直ぐに使うことになるだろうから覚えておいた方がいい」


 ひん曲がった口からは「最も国として負けても私個人はまだ勝つ気だけどね」とこぼしている。


 そこにいたのはかつて人類最強の国と言われたメアリカの最大主ウーノ。


「……貴様が何故ここにいる?」

「まぁまぁまぁまぁ、そう興奮しないでくれたまえ。私はこの期に及んでホイホイと事を構えるつもりはない。私は敗戦国の将。それは認めているつもりさ。ちなみに侵入経路は企業秘密とさせてくれ」


 ウーノはちらりとルークの方を見ると、これ見よがしに手に持った紙の束をばさばさと見せつける。初めは何が書いてあるのかわからなかったルークだが、断片的情報から答えは直ぐに導き出せた。


「ワンコ‼ そいつの手に持ったものを奪い取れ‼」

「御意」


 ワンコが一歩目を踏み出す瞬間、ウーノの影がギョロリと動きワンコの影にくっついた。



【能力名】

 (シャ)(ドウ)()(ガーデン)

【LEVEL】

 LEVEL9(Max) 

【スキル詳細】

 自身の影を他者(生物に限る)の影に張り付かせることが出来る。

 張り付かせる影はスキル保持者の影の面積分ならば細分化し、複数人に張り付けることも可能。

 張り付かせる対象は相互の了承のない限りランダム。また、影が別の影の中にある対象には影を張り付かせることが出来ない。

 張り付かせた影は対象が気絶(睡眠を含む)もしくは死亡した場合、スキル使用者の元へ戻って来る。

 その影はスキル保持者の視力をゼロにしている間のみ実体化し、影の持ち主を襲う。実体化した影が攻撃対象とするのはその影の持ち主だけであり、また実体化した影にはその影の持ち主だけしか触れることは出来ない。

 実体化した影の戦闘能力は影の持ち主と同等とする。

 実体化した影の生命力は影の持ち主と同等とする。



「ランダムとは言っても目の前に対象が一人しかいないなら、必然的に影をくっつける対象は絞れるんだよ」


 ワンコの前にワンコの影が実体化した。

 そして、当然のように襲い掛かって来る。


「くっ」

「誰でもいい! あいつの紙を奪い取れ‼」

「ルーク殿、もう遅いよ。せっかく戻った視力もまた消えてしまった。なので、あとの真実は大衆の皆様に見て貰おうじゃないか」


 ウーノは手に持った紙の束を上空に投げ捨てた。

 それは風に乗り、バラバラと周囲に広がっていく。

 一枚の紙はニアリスの元へ落ち、ニアリスはそれを拾い上げる。


「……これは」

「あはははは、酷いものだろう。王族殺し? そんなもの些末な問題じゃないか‼ それは彼が主導の元、地下の研究施設で行ってきた人体実験のレポートだ‼ どうだい? イカレているだろう? 人が人に施す行いとは思えないだろ? それを無理やり罪を着せた囚人、自分の都合で戦わせた負傷兵、敵国の捕虜にやってやがる‼ 飛び抜けた男だよ、全く彼は‼」


 そこに記されていたのはルークがステニー、ドロクに行わせていた人間に他種族の血を混ぜて強化した再狂士(リーカー)を作る際の過程のレポートだった。当然、今戦線に出て戦えていた者はほんの一部の成功例だ。それまでに惨たらしいほどの死者を出している。決して楽には殺していない。弱かった人族を獣族や亜人族と同等の戦力にしようと言う計画だ、生半可な犠牲で済むわけがないのだ。


「……酷い、惨たらしすぎる」


 ニアリスはその事実の書かれた文面に震える。当然、それは神崎を初め、ハレルや他の民たちの目にも入っていく。


(まずい、あの女を速く排除せねば)


 ワンコが実体化した影を手刀で引き裂き、ウーノに迫った。


「待った。私はもう一つも知ってるんだよ。パンプキンケーキ、人気なんだってね。地下でレシピを見つけちゃったよ」

「くっ」


 ウーノのその言葉にワンコの手刀が止まる。


「ワンコ、構うな‼ どのみち手遅れだ‼ そいつだけでも殺してしまえ‼」


 下手に口八丁で場をかき乱されるよりははるかに良い。ルークはそう判断した。ワンコはその命令を一瞬の躊躇もなく実行する。


―が、それを阻むものがいた。



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