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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第四章 人を喰らえ、人共よ
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それは歴史の一ページ

 街の雑踏をすり抜け、ルークは目を凝らす。

 前国家の王族の生き残りバカアホ王子を探す為だ。


(あいつ自身も俺を糾弾するために城の方へ向かっているはずなんだ。ハレルが俺に倒されたとも知らずに合流を計り、城内の権力者にでもかけ合えば俺の地位を脅かせると考えるはずだ。一瞬目にしたあいつの特徴はぼろいローブみたいなのを被っていたな。後はアホそうで馬鹿っぽい顔。確実に捕まえたいのなら城下町と城を繋ぐ道を張っていればいい)


―だが、


「そうもいかないよな」


 後方から物凄い圧力を感じる。

 怪物がすぐそこまで迫っている。


「ルーク、次はどう進む」

「次の突き当りを左だ」


(神崎が戦闘を始めにくくするには人通りの多い道を選べばいい。あいつを完全に撒こうと思うのなら道の入り組んだ裏路地を使えばいい。ただし、裏路地を駆け回っても城への道から離れていきバカアホ王子を見つけられる可能性はかなり低くなる)


 ただ、バカアホ王子を見つけてもその場に神崎がいては殺害は容易ではない。

 ルークはそう考え、一度神崎から身を隠す為に路地裏の方へ進路を決めた。


「次の角を右だ。一旦裏路地に入って身を隠すぞ」


 強華がしっかりと頷く。

 地下に秘密の通路を張り巡らせ、街の罪人や負傷兵を人体実験に使うべく隅々までその者たちのねぐらを調べ上げた。

 地の利はルークにあった。


 背後へ目をやれば、神崎の姿は消えていた。

 強華のスピードなら神崎の滋養(マッスル)強壮(・アッパー)で強化された肉体にも劣ることはない。

 そこにルークの地の利が加われば神崎を撒くことなど容易である。


「微かに神崎の足音が聞こえる。まだこっちを細く出来てないみたい」

「よし、今の内のまた大通りへ出て今度は人混みに身を隠すぞ」

「うん」


 不謹慎だとは思いながらも強華はこのターニングポイントともいえる今この時にルークが自分に全てを預けてくれている感覚を心地よく思った。

 そう、強華はかなり強い。

 しかし、ルークの隣には今まで神崎がいた。

 主人公力ともいうべきか、大事な場面では結局ルークは神崎に託すことが殆どだった。強華に不満がないと言えば嘘になる。


(大丈夫。ワタシの方が神崎よりルークの役に立つ)


 ルークや神崎とは違うところで強華も強華なりの戦いがあった。


「よし、あと十字路を二つ抜ければ」

「ルーク、待って‼」


―ボォウ‼


 強華が呼び止めるのが一歩遅ければ終わっていた。

 強華の優れた聴力がそれを聞き取っていた。

 

「……竜」

 

 炎の竜がとぐろを巻いた。


 ルークたちいる路地裏を包み込むように通路ごと輪を描くように神崎の双頭(アクア・)(フレイム)による炎の竜が取り囲んでいるのだ。

 その規模は大きく、どうやっても大通りにでるにはその炎を避けられない。

 ルークと強華は建物の影に咄嗟に隠れると、炎の竜の頭がルークたちがいる建物の斜め向かいの建物の二階あたりにあり、その屋根には神崎が立っていた。


「ルーク、危害を加えるつもりはない。大人しく出てきて、罪を認めるのなら殺しはしない。別の形で罪を償ってもらう」


 神崎はどこにいるのかわからないルークに呼び掛ける。

 ルークにとってそれは死よりも重い行いになる。今まで築いてきたものを剥奪され、二度と天を掴む機会を失う。それでは生きている意味はない。


「理を破り、全てを統べる。力無きものが順当ではない現実を貴様らに与える。それが俺の生きる意味で死ぬ意味だ」


 ルークは神崎の言葉に答えにならない言葉を返した。

 奥歯を噛みしめる。


「強華、跳べ」


 強華が頷く。


 通路は全て塞がれた。

 炎の竜から逃れることは出来ない。

 ならば、通路は通らない。道は元々ルークの前にはなかったのだから。


 強華がルークを抱え、上空へ大ジャンプする。

 それは神崎も炎の竜も越え、ホイホイの上空に君臨した。


「支配者は俺だ‼」

「君は間違っている‼」


 神崎は一瞬躊躇したが、炎の竜をルークと強華のいる上空に放つ。

 逃れることの出来ない一撃が彼等を襲う。


「強華‼‼ 拳圧で神崎ごと弾き飛ばせ‼‼‼」


 ルークの怒号に周辺の皆が空を見上げた。

 ホイホイの国民はようやく異変に気が付き始めたのだ。


 乱気流のような猛烈な風の流れが街を走った。


 その風の流れに皆が手で顔を覆った、目を閉じた。


 だから、その戦いの決着を見届けた者は一人。



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