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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第四章 人を喰らえ、人共よ
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生き残りの末路

「ハレル⁉」


 アメの声が部屋に響いた。

 成功だ、ルークは喜びに震え、奥歯を噛みしめた。

 それと同時にルークも床に膝をついた。


「おい、リュミキュリテ、回復させてくれ」

「え? 今回復させたばかりじゃん」

「理由は後で説明してやる。とにかく急いでくれ」


 ルークは光に包まれ、全快する。

 そして、何事もなかったかのように立ち上がった。

 この場にいるルーク以外はまだ状況を把握していない。だが、解説より先にはルークはハレルの元へ歩み寄る。


「くく、無様だな。亜人族、それもお前はエリートなんだったか? そんな奴が人間如きを相手にして虫の息とはな」


 ハレルの意識は朦朧としているが、死んではいない。

 だが、ルークの言葉を正確に耳で拾えているかは怪しい。

 ルークは地面に転がるハレルの脇腹を蹴り上げる。


「やめて!」


 アメが涙を浮かべ叫ぶが、ルークは躊躇しない。


「亜人族の中でも大まかに種族は三つに分かれるらしいな。一番多いのがスタンダートな体型で様々なマジックと呼ばれる事象の書き換えを行える成人型。それと自然や魔物との対話に優れた小人型。あとは攻撃力だけに特化しているのに優しい気性の者が多いらしい巨人型。俺たち人族にとってはどいつも脅威だが、ここには小人のお前が頼るべき魔物も利用できる自然もない。ただの無力なチビなのだろう?」


 図星故に反論の言葉が用意できない。

アメは目だけで怒りを伝える。

ルークは追撃を加えるように転がるハレルを蹴り上げた。

アメは今度は声を殺した。声をあげたところで悪戯にルークを刺激するだけだと悟ったからだ。


「どいつもこいつも俺のような善良でいたいけな人族にとっては強すぎる。俺だって日々アップデートを重ね強くなっていっているのにまったく追いつかないと来たもんだ」


 ルークは肩口を指先で摘まむとしゅるしゅると音を立て、衣服の糸を伸ばした。


「村でのアレーニェ戦、そして俺のレベルアップ。そこから着想したんだが、今日の今日までまともに実践で使う機会すらないんだから困ったものだよな。どいつもこいつも簡単に弾丸を避けるんだからな」


 ルークはリュミキュリテとティグレの方を向いて「見えるか?」と尋ねた。二人は首を振る。その糸はよっぽどの至近距離から出ないと目視するのは難しいようだ。


「これはあの蜘蛛女、アレーニェの糸を加工している特別製だ。アレーニェのスキルが俺にはないので実際に消える糸には出来ないが、それでもこの細さだ。それに強度もある。充分な効果を得られたさ」


 ティグレは「それで?」と答えをはぐらかすルークに先を急かした。


「俺のスキルの発動条件はレベルアップし、直接接触からワンクッション挟んだ間接接触での発動条件にまで緩和された。つまり今までは敵に手で触れなくてはならないところを鞭などで絡めとるなどの接触でも良くなったんだ。これは大きい」


 ルークは「だから」と続けた。


「俺は俺の拳銃だけ装填方法、装填関係の器具の改良を施し、拳銃と弾丸の間に糸を繋げたんだよ。弾かれたり、避けられたら意味がないが、貫通、直撃なら俺と相手の間に糸が存在し、間接接触の構図が生まれる。初めは机上の空論かとも思ったが、何度か検証するうちに可能だと言うことが分かった」


 この解説にリュミキュリテとティグレはようやく得心がいった。

 つまりルークが先ほどハレルに斬られてもいないのに大ダメージを負っていたのは、ハレルとルークが糸で繋がり、スキルの限界値一杯まで時間外(オーバー)労働(タイム)を発動させて共に瀕死に追い込まれたというわけである。

 ハレルは倒れ、ルークが膝をつくところで収まったのは経験による想定と慣れによるダメージに対する耐性だろう。

 

「一発ごとに一定の射程で糸を切れる工夫をしたり、火薬で焼き切れないかとか随分苦労させられたが、ここで大金星を上げられたのなら安いものだな。さしずめ『()へ(ン)の(ビ)見えない(シブル・イン)(ポッシボウ)』と言ったところか」

「ダサい、不採用」

「僕様もそれはないと思う」


 すぐさまツッコミが入った。


「なっ、俺の技だぞ!」

「技なんて大層なものじゃないだろ。お得意の小細工だ」

「ふっ、ふん、まぁいい。勝てばいいんだ」


 ルークが得意げになっていると「ゴ、ゴミ、クズ」と地面からか細い声が聞こえてきた。


「流石に亜人族か。もはや戦う力は残っていないだろうが、辛うじて意識は戻ってきたようだな」


 ルークは足に加える力を強める。

 何度も何度も執拗に蹴りを入れた。


「勝った! 俺は勝った! 俺の力で、お前のような怪物に勝ったんだ! ははは! 笑わせてくれる! 俺が王族どもを殺したから、悪だって? だから、俺も殺す? 今までの全てを否定する? 全部、お前が俺に勝てたらの話だったな‼」


 表情は歪み、愉悦に浸る。

 戦闘に置いて格上とのカードは全て神崎ら他人に預けることしか出来なかったルークにとって、今の結果は舞い上がってしまっても仕方のないことかもしれない。


 だが、それもひとしきり気が済んだ。


「さぁ、トドメだ。俺もこの後、人類統一国家の王としての仕事も増えるだろうから、お前ばかりには構ってられないんだ」


 ルークは拳銃の先を動けないハレルに向けた。


「せいぜい地獄で俺の殺したこの国の王族どもに力不足でしたってごめんなさいしてくることだな!」


 引き金にかかる指に力がこもった。


「―今の話は本当なのですか?」


 ルークだけではない。

 その場にいた全ての者が声のする部屋の入り口側に目をやった。


 そこには本来ならルークを助ける為の加勢だった神崎、強華をつれたホイホイの王にして前国家の王族の生き残り元ホンニ王女ニアリスが立っていた。


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