ふれている男
【能力名】
異世界転生
【LEVEL】
LEVEL5
~次のLEVELまで?
【スキル詳細】
・異世界から死ぬ間際の人間のこの世界に呼び出すことが出来る。
・呼び出した人間と異世界の情報は大まかにだが頭に流れ込む。
・発動条件、スキル保有者が死ぬほどピンチに陥るたびにレベルが上がり、LEVELが一つ上がるごとに一人を呼び出せる。
ただし、複数回ピンチに陥っても一人異世界から呼び出すまでは次のLEVEL上昇は行われない。
・????????????????
(成程、何度練習しても発動させられないわけだ。)
スキル、異世界転生のレベルが5に達した瞬間、ルークに発動条件が開示された。
対象者が死ぬほどピンチになる事。
これ以上なく分かりやすい。
「五人目か」
ティグレは呟く。
そして、ルーク、ティグレとハレル、アメ、その間に挟まれる様に五人目の転生者が現れた。
「……リュミキュリテ、俺を治せ」
「いきなり僕様に命令する君は誰だい?」
「お前をこの世界に呼び出したものだ」
ルークからリュミキュリテと呼ばれた女性はハレルに背を向け、ルークを注視する。振り向きざまに薄橙色の一本おさげが揺れ、背中に生える白い二枚の翼から羽が舞う。
(人ではない?)
ティグレもまたリュミキュリテを注視する。
この場で彼女の情報を持つ者はルーク只一人だ。
「……うーん、凶悪な面だな。僕様は仮にも天使なんだけどな」
「俺の持つ力は向こうの世界でのお前の行いも知ることが出来る」
「それならもういいか」
リュミキュリテの翼が発光した。
「させるか!」
ハレルが剣を構える。
「もぉ、僕様の邪魔をしないでよ。大人しくしてな」
その瞬間、ハレルの身体が発光し始めた。
「くそ、スキルか? マジックか?」
光を振り払うようにハレルは身体を前後左右へ振る。
(ブラフ、だよ)
次の瞬間、ルークの身体も発光し始めた。
「あー、片腕は失ってから結構時間が経ってるね。僕様が治してあげられるのは十三日以内なんだ」
「ふん、それで充分だ。またドロクに義手でも作らせる。あれはあれで便利だ」
ルークの両足を中心に光は集まり、彼の傷を癒していく。失われた足は再生し、元の状態へ復元していく。
その様子を見て、ようやくハレルは現状の整理を終える。
「この光は回復状態を示す状態表示のようなものだったのか」
「だぜ。ごめんな、呼び出した人。敵っぽい彼の傷、疲労も回復させちゃったよ」
「隙を作るためだろ。やむを得ん」
ルークはリュミキュリテの能力を知っていたかのように、大した驚きもなく自身が受けた庇護を享受した。
復元した足で目の前の敵と対峙する。
「さて、ハレル。俺には最強のピースが揃ってしまったわけだが、まだやるか?」
「……一人増えただけで大した自信だな」
(只のピースじゃない。バレッタに出会った時から探し続けていたピースだ)
ルークは探していた。
バレッタのような最上位の回復能力。それもバレッタと違い、他人に行使できる者。本来、回復スキル持ちは本当に希少だ。いたとしてもバレッタクラスは伝説に近いレベルだ。更に、他人に施せるとなればそんな人間はこの世に一人いるかいないかレベルだとルークは考えていた。
ルークが知る由もないが、亜人族内でも回復マジック持ちは希少だ。また、無理に覚えようとしてもリターンに見合わない程度の効果しか期待できず、膨大なメモリを消費する。つまり亜人族ですら適正が問われる。
因みに自己治癒能力の高い獣族は個体差はあるが、ある意味全員回復持ちのようなものだ。
何故、ルークは探していたのか。
「わかるな、リュミキュリテ」
「大体ね。君みたいな人が考えそうなことだよ」
結論は見た方が早い。
ルークは腰の鞭を抜く。
片手で本来の精度には届かないが、それは真っ直ぐにハレルの方へ向かっていく。
「クズと遊んでやるほど、俺は優しくないぞ」
ハレルは『伝家』に触れた。
精度の甘い鞭は見切られ、払い落とされ、地面に落ちた鞭を切り刻む。
その短い時間にもルークは距離を詰める。策を弄するタイプであるルークには珍しい単身特攻。
当然、ハレルの『伝家』はその特攻を許すよりも早くルークを切り刻む。
(これで終わりか。拍子抜けだな)
当然、終わりではない。
ハレルは指先に僅かな違和感をぼ得る。
「……さっきの妙なスキルか。捨て身で削れるものがこの程度とは悲しいな」
身体を切り刻まれた瞬間、ルークは時間外労働を発動させている。
しかし、ルークの切り刻まれた刹那の時間では削れる体力もたかが知れている。
「……だが、それを永遠に続けられるとしたら?」
ハレルは地面に伏したルークに視線を移した。身体は発光し、先ほど切り刻んだ傷は見事に消えていた。
「まさかとは思うが、後ろのそいつの回復頼みで永遠と特攻し続ける気か? 馬鹿か、痛みが残っている以上、先に気が触れるのがおちだぞ」
ルークは答えを用意せずに笑う。
この男、最初から気が触れている。
狂っていることだけが取り柄の男だ。




