地下の怪物は笑う
数秒後に地下水道が震えるような咆哮が響いた。
ハレルとの戦闘が始まったのだろう。
「……で、アレは何だ?」
「えー、ルーク、君が作れって言っておいてアレは酷いな」
「面倒なやり取りはしないぞ。見た目から獣族がベースであることは分かった」
「そうね。ベースはセブンズが処分したホイホイに偵察に来た獣族。そこに更に身体能力強化に優れたマジックを大量に習得していた亜人族をミックスした私の自信作の一つだよ。割合として獣族8亜人族2でブレンドしてみた」
「ふむ、面白い組み合わせだな」
「あっしはもっとデザイン性も重視したかったんですがね」
マッドサイエンティスト組とルークは真剣な顔で何やら議論を始め出した。
その様子をティグレは自身の考察を加えて考える。
(セブンズやアレーニェの部隊に侵入者はなるべく生け捕りにさせていたのはこういう理由だったのか)
「で、あれはいじくられる前の記憶は残っているのか?」
「殆どの子は自我崩壊してるけどたまに残っている子もいるし、何かのキッカケで思い出す可能性もなくはないよ」
「ちっ、そこが今後の課題だな。強い兵士を作っても命令を聞けなきゃ意味がない」
ティグレは三人の会話が落ち着いたのを見計らって、会話に加わる。
「なぁ、ルーク。そろそろ話してくれてもいいんじゃないか? あの化け物はなんだ?」
「見てわからないのか?」
「分かれば聞いてないとはわからないのか?」
「……なんで偉そうなんだ」
この世界での生活が最も日の浅いドロクが話を引き継ぐ。
「ティグレさん、外で戦っているアレは亜人族と獣族の混ぜ物です。ティグレさんはアレに近い種族を知りやせんか?」
ティグレはこの世界の全ての種族を一つずつ思い浮かべる。
身体能力の秀でた亜人族。
多種多様な事象変化を巻き起こす亜人族。
その下位互換、最弱種族の人族。
世界の人口の殆どを占めているのは彼等三種族だろう。
そして、世界最強種族、鬼。
個として最高の力を持つとされる世界の支配者、魔王。
この二種族(魔王を種族と呼ぶにはいささか違和感があるが)は、個体数が圧倒的に少ないが、個の力量はこの世界のほぼ最高値に達する。
(あと、何がいたっけ?)
ティグレは普段使わない頭で思い起こす。
変態集団である変態族。
そして、その他様々の種族の混ざりものとして細々と生きている混合種族。
「あっ、混合種族」
「そう、あっしらはそれに目を付けました」
「……奴らはそれぞれが混ざり度合いが違い別個体で集団で動くことがなく。その上、他種族からは出来損ないと嘲笑われている。ある意味では人族以上に差別の対象。力量としても半端に混ざったもの同士が反発して力すら満足に使いこなせないものも珍しくない。お前たちはあんなものを作ってどうするつもりだ?」
ティグレの説明をルークが掻っ攫う。
「……半端でなければいい」
「え?」
「俺たちが選択し、最善最高の配合をする。そこで生まれる個体は半端でなく、究極の完全固体。元が人間故に制御はたやすいがやはり戦闘能力に限界地の見える再狂士とは違う。その一歩も二歩も先の世界」
ステニーはうっとり顔で吐息を漏らす。
「私達はそれを人工混合種族と呼んでいるわ」
優秀な駒を作る為だけの生の冒涜。
そこに踏み入れた者は誰もいない。
誰も彼もがその一歩手前で最後の何かに留めるよう手を引かれ元の世界に帰っていく。
ルーク。
たった一人の非力な青年にティグレは力を与えた。
それがここまで世界をごちゃ混ぜにしていく予想出来た者はいないだろう。
ティグレを覗いて。
(そうか、ルーク。お前はやりたいようにやればいい。やはりお前の欲する心は最高だ。倫理観なんてゴミ箱にぶちまけている)




