滑稽だな
「自分の命がそんなに大事か?」
また、声がした。
ハレルの声だ。
「大事だね!」
声の方へルークが腰から拳銃を抜き発砲する。
しかし、虚しく空を切る音がするだけだった。
「そうやって自分可愛さにどれだけの命を消費してきた?」
まだハレルは姿を見せない。
クスクスと小人の少女アメの笑い声も聞こえる。
ルークは苛立つがすぐに攻撃を仕掛けてこないのなら好都合ではある。警戒だけは怠らず歩みを止めない。
(何かないのか、奴を足止めできる策が)
ルークは常に自身の安全の為に命を守る策は考えていた。しかし、そのどれもが核の違うハレルに通用するか怪しい。
ルークの頬に薄い切れ目が入った。
「俺の持つ宝刀『伝家』は特殊な刀でな。俺が斬るイメージを脳内で済ませて触れれば、その時点でもう斬ったことになっている。過去のお前たちを切り捨てているんだ。これが『伝家』過去を斬る刀だ」
絶対必中の刀。
斬る前に斬られているのだ。
反則級のアイテム。亜人族の中でも『三真』と呼ばれる三本しかない伝説の刀のうちの一本だ。
また、ハレルの前に扱いこなせるものが数百年現れなかった気難しいアイテムでもある。
「……いいのか、そんな手の内さすようにべらべらと喋ってしまって?」
「別にこれを聞いたところでお前は何も出来ない。この『伝家』を攻略したものなど長い歴史において一人としていないのだから」
そう、この世には知ったところでどうしようもないものもある。イメージするだけで裂けることも許されず、既に過去に斬られていたことになるのだ。どう対処すればいいと言うのか。
勿論、ルークにだって何も思いつかない。
ハレルはただルークを追い込むためだけに能力を開示した。
こんなことは初めてだった。
それだけにルークが憎いのだろう。
しかし、一つハレルは『伝家』について言っていない事がある。発動条件だ。当たり前と言えば当たり前だが、これだけ反則級の『伝家』にはハレルが振るう為の条件がある。そして、これもまた既に条件を満たしてしまっているルークには知ったところでどうしようもないのだが、知れば少しばかりルークは有利になる。
そんなことをわざわざ行ってやる必要もないだろう。
「……ならば、何故最強ではない?」
「⁉」
「それだけの刀がれば、鬼も魔王も倒せるんじゃないのか? 攻略した者が一人としていない? それはお前が、歴代の使用者が相手を選んでいるだけだろ」
「ふっ、伊達に生き汚くないな。絶望させるために話したのに、逆に活路を見つけようとしだすとは」
ハレルの肩に乗るアメがハレルにだけ聞こえる小声で笑った。
「ふふ、あの子可哀想ね」
「……そうだな」
(知ったところで、お前が発動条件から外れることは絶対にないのにな。滑稽なあがきの中殺されるのもまた奴に相応しい最後か)
ハレルは安全圏から『伝家』に触れ、イメージする。
ルークの凄惨な未来を。




