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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第四章 人を喰らえ、人共よ
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やり方の違い

 剣を抜いた様子はなかった。

 しかし、自分の右腕は切り落とされている。

 ルークはその説明のつかない事象に困惑する。だが、今この状況ではその時間すら惜しい。


(誰でもわかる力量差だ。今は引くしかない)


 ここでの逃亡には二択から選ぶことが出来る。

 一つは前に。つまり前線の方へ逃げていくのだ。そうすれば、最低でもバルゴスやバレッタたちと合流できるし、上手くいけば神崎、強華、セブンズと目の前のハレルをぶつけることも出来る。しかし、今しがた連絡の入ったウーノのスキルによる前線の混乱状態。また、それ以上にルーク自身が戦場で最も標的として価値のある将なのだ。前線へ出れば当然目の前の晴れるだけではなくメアリカ、アシロの兵士たちの標的にもなる。


 ならば二つ目だ。

 これはオーソドックスに後方に逃げる。

 元々、兵を引いて戦うことも考えていた地の利のある森林地帯に逃げ込めばそう簡単には追いつかれない。そして、そのままホイホイに入国し、完全な籠城体制を取り、味方の到着を待つ。

 ホイホイの地下施設や城内の複雑な隠し通路を駆使すればかなりの時間を稼ぎきれる自信がルークにはあった。

 ただ、ホイホイには現在戦争で殆どの兵力をつぎ込んでしまったため、まともな兵士が残っていない。つまり追い詰められればそこで終わりだ。もしかすればドロク、ステニーのマッドサイエンティストチームが切り札を持っている可能性もあるが、期待薄だ。


(戦争自体は敵の最高戦力を叩いて、あとは頭を刈れば終了だ。それでもまだ時間はかかる。なによりウーノの居場所がまだ知れていない。前に進んで俺が取られれば逆転を許す行為に他ならない)


 ルークは床に落ちた右腕の義手を拾う。

 その一動作一動作は首元に剣先を当てられている様な緊張感の中にある。


「大した腕だ。いや、拾ったこの腕のことではなく、あんたの実力の話だ」

「それはどうも、貴様のようなクズに褒められても欠片も嬉しくないがな」

「随分嫌われたものだ。俺が一体あんたに何をしたって言うんだ」

「お前も仮にも俺たち『黒狩り』の名を謳ったんだ。理由は分かるだろ」

「はは、下調べはもっとちゃんと行うべきだったな。まさか『黒狩り』が亜人族で構成されたチームだったなんてな。魔獣の尾を踏んだ気分だ」


 ルークは力なく笑ったが、その視線には少しずつ力がこもっていった。


「元の国、イリアタは腐っていた。それはニアリス姫の強引な婚姻を見ても明らかだろう。なぁ、バカアホ王子?」


 そして、その視線はバカアホ王子に移る。


「何を急に! だからって、あんなやり方が許されるかよ!」

「許されるさ。現に俺はホイホイを豊かにした。領土は増え、民の懐は潤い、奴隷は消えた。元の国に比べれば天国じゃないか」


 ハレルは冷めた目で熱い言葉を紡ぐ。


「……クーデターは必要だ。俺自身腐った国のクーデターを起こしやすくするために、様々な国の王の首を取った」

「ハッ、ハレル殿?」

「流石、話が分かる。名はハレルというのか、良い名だ」


 注目がルークに移っている間に、ティグレはタイミングを窺う。


「しかしな、その後の国がさらに腐ったものになっては、何の意味もない」

「……俺が何をした?」

「パンプキンケーキ、あれはなんだ?」

「ホイホイに潤沢な利益を生む魔法の商品だ」

「魔法? 亜人族の前でよくそんな言葉が出るものだ。まやかしの間違いだろう」

「魔法でもまやかしでも益を生めばなんでもいい」

「それが民の首を絞める劇薬だとしてもか?」


 ルークは小さく舌打ちをする。


「必要な犠牲だろう。王の首を落とすお前と、国の発展の為に少数の民を犠牲にする俺に何の違いがある?」


 ハレルはその言葉に激昂する。


「ほざけ‼ 国の為⁉ 違う‼ お前はお前の為にしか動いていない‼ 真に国を思えば、絶対にそんな答えに辿り着かないはずだ‼ お前は俺が見てきた汚物たちの中でもぶっちぎって臭くて、醜悪だ‼‼‼」


 ハレルの激昂に、肌がぴりぴりと震えた。

 得意の相手をおちょくる笑みもルークの顔から鳴りを潜める。

 一歩でも動けば殺されるのではないか。

 そんな緊張感がその場にはあった。

 ルークは大きく息を吐く。


「大した志をお持ちのようだ。俺に負けず劣らずのな。そして、大した腕だ。いや、お前の腕ではない。この俺の拾った義手の話だ」


 それを合図にティグレは身を低く、前へ走った。

 ルークは拾った義手をハレルの前へ軽く投げる。

 それはハレルが剣を抜かず、軽く柄に触れるだけで、切り刻む。


「フルコースだ。良く味わってくれ」


 その瞬間、バラバラになった腕は発光した。

 けたたましい音、部屋中に逃げ場のない眩い光、そして鼻の粘膜を刺激する痛み。

 どんな強者でも不意に喰らうそれらにすぐさま回避して次の行動へ移ることは難しいだろう。


 事前に知っていたルークとティグレはそれを最小限の被害に抑え、部屋の出口から外に出る。


「最後は花火だ」


 時間差でルークの粉々になった義手は爆発を起こす。大した威力ではないが、簡易で作った指令室を吹き飛ばす程度の威力は持っている。


「奴らはあの程度では死なん。ホイホイに逃げ込むぞ」

「前に出て神崎たちと合流を計らなくていいのか?」

「神崎、強華は戦場のどの地点にいるかわからないから合流の目途は立たない。確実に合流できそうな面子はバルゴス、バレッタぐらいだ。だから、楽観視して混乱状態の戦場にで神崎たちとの合流を計るのは危険だ」

「……それがお前の選択なら文句はないよ」


 ティグレはルークに従い、その場を離脱する。


(ホイホイをあまり自身のホームだと考えるのも危険だとは思うがな)


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