仕方がないね、それが宿命
別に自分だけがそうであると言うわけではない。
世界中のほとんどの生物は自分の思い通りにことを運べていない。
メアリカの最大主ウーノはそう自分を慰めた。
足元の自身の影の面積が少しだけ大きくなった。それは一つの合図、衝撃的な事実を告げる合図だった。しかし、それを口に出し、ウーノはゆっくりと事態を飲み込んでいった。
「おいおいおいおい、オセロムにつけてた影が戻って来たじゃないか。殺されたかな」
ウーノの護衛についていた兵士はここがどこかなのも忘れ、声を荒げる。
「ばっ、バカな! オセロム様が並みの兵士に後れを取ることなんてあるはずがありません!」
「相手が並みじゃなかったんだろ。これは想定外だ。いや、想定していた中では最悪の結果だよ」
「……ウーノ様はオセロム様が殺されることまで想定されていたのですか?」
「まぁまぁまぁまぁ、最悪の場合は当然想定しておくものだ」
「では、我々をどうすればいいのでしょう。これ以上進むとなると敵兵との衝突は避けられません」
「あらあらあらあら、一番遠回りしてみたけど、こんなものか」
そこは最前線よりややルークたちホイホイ、華中連合よりの場所。ウーノはこの戦の大将でありながら最前線より遥かに危険地域に最低限の護衛だけをつけ、進んでいたのだ。
「オセロムならいい具合に敵軍をかき乱してくれると踏んでいたんだけど、私の掲載芋狂ったものだ。おまけにこの大博打。ルーク殿の無謀さが移ったのかもしれないね」
「笑い事ではありません!」
「はははは、敵もこちらも一枚岩ではない。崩せる場所は敵の胸の中だよ。ホイホイ、あの国の中にさえ入りこめれば私の放った間者と落ち合い、内部から崩せると踏んでいるんだけどね。なにせ、パンプキンケーキなんてろくでもないものを作ってる国だ。どこかしらに不満の種は咲き始めてるはずなんだよ」
「……ウーノ様らしくありませんね。それは最早作戦とは言えません」
「そうそうそうだね。これはギャンブルだ。むこうさんはどう思っているか知らないけれど、私としてはこの少数の部隊で身を潜めつつ、戦況が好転しているならこのまま目立たず隠れていようとも思ってたんだよ。下手に大勢引き連れたり、でっかいキャンプを張ったりするよりは見つかる可能性は格段に低いだろ」
しかし、と言いたげにウーノは自身の足元の影を見た。
「数では圧倒していたんだけどね。やっぱりホイホイの隠し玉があったのかな。一番隊、四番隊、七、八、九、十一番隊、それぞれ隊長が殺されてるね」
「なっ! うちの国の精鋭たちがこうも速く」
「はははは、速くじゃなくて端役だったのかもしれなな」
ウーノは自分の言葉に自分で落ち込む。
はーっと深い溜息の後に僅か四人の兵士を見渡す。
「うんうんうんうん、本当にうまくはいかないものだ。まぁまぁまぁまぁ、それも慣れっこだ。メアリカの最大主になった時だって、オセロムをスカウトした時だって、全くうまくはいかなかった。これが私の人生ってものなのだろう」
ウーノは「作戦を決行する」と僅か四人の兵士に言い渡した。
「仕方ないね。私の人生は山あり谷あり、ドラマティックなんだ。でも、それは端役じゃなくて主役の証拠だろ?」
ウーノは自身の影をぐにょぐにょと変形させ始めた。




