脚長の双子
ノーボスは指をキースは膝から下の足を拾い、自身の元ある場所へ重ねた。当然、それは元には戻らない。彼女たち双子の持つスキルは回復ではない。
だが、応用は効く。
バルゴスは己の目を疑った。
バレッタは愉快に笑った。
「おいおい、そりゃなんだ?」
ノーボスとキースの千切れたはずの身体の部位がぶらぶらと不安定ではあるが、本来あったその場所へ装着されている。
バルゴスは冷静に分析し、バレッタに耳打ちする。
「恐らくですが、敵の引きつける力を自身へ発動させたのでしょう。それなら説明が付きます」
「それはわかってる。私が言いたいのはそれだけじゃ見てくれだけだろって話だ。指をくっつけようが、足をくっつけようが、それが本来の機能を果たさないんだったらお飾り以下だ。お荷物にしかならねー」
バルゴスはその言葉に納得し深く頷いた。
「そうか、ならば」
バルゴスは持っていた剣でキースに切りかかる。彼女の片足はバレッタにより食い千切られたのだ。それが見てくれだけ装着されていても既に機動力は死んでいる。
そこにバルゴスは付け込んだ。
当然、その攻撃をノーボスがカバーするものだと思っている。なので、バルゴスはアイコンタクトでバレッタにノーボスへの牽制を入れるよう指示していた。
機動力がないということは避ける術がないと言うことだ。
つまり、受け流す、または受け切る、カウンターの三択だ。
勿論カウンターには細心の注意を払う。
だが、バルゴスの変幻自在の緩急あるスキルを織り込んだ剣術は受ける、カウンターの二点にもっとも対応され辛い攻撃手段だった。
キースの眼前で剣速を一・一倍に速める。
今度こそ決まったそう確信した。
そう確信した時にはバルゴスは空を見上げていた。
カウンターを喰らったのだ。
最も警戒していたはずのカウンターをだ。
(何故だ。説明がつかない)
バルゴスの脳内は混乱する。
そうそれは唯一警戒してなかった箇所からの攻撃だった。
(何故、キースはその足で攻撃で来たんだ⁉)
身体は起き上がることが可能だったはずだ。バルゴスのダメージはそこまで深くない。だが、完全に予想の外からの攻撃に立ち上がるのに数秒を要してしまうのだ。
「キース、早くトドメを。時間がないわ」
「えぇ、分かっているわ、ノーボス」
バレッタと交戦しているノーボスの指示を受けて、キースはバルゴスの方へ前進する。
その千切れたはずの足でだ。
「ちっ!」
舌打ちと共に、バレッタが動いた。
ノーボスの片手斧を腕で受ける。
「えっ!」
片手斧はノーボスも驚くほどにあっさりとバレッタの表皮を切り裂き、骨を折る。先ほどまでの動きから精彩を欠き、明らかに躱せた攻撃を躱さなかった。
バレッタは歯を食いしばる。
ここで自分が戦闘不能になっては攻撃を受けた意味がない。
「戦場では何があっても動きを止めるなよ」
それは今の防御法に驚いたノーボスにか、それとも予想外の攻撃受けて地に伏すバルゴスにか、あるいは両者にか、しかし確実にバレッタはその言葉を口にした。
片手斧はバレッタの攻撃を受けなかった方の手で砕かれる。その圧倒的握力はスキルによるものだけではないだろう。
日頃の鍛錬、そして凶悪な狂気。
「お前らのスキルなんて知ったことか、ここじゃ殺したもん勝ちだ‼」
し
皮膚が裂け、鮮血が舞い、骨の砕けるその腕を敢えて回復させずノーボスに振るった。鮮血が等速で辺りに散っていく。それはノーボスの目を一瞬くらませる。
血を払う為に目を拭う。
そのために腕が上がる。
そこには無防備な首が見えていた。
「楽しかったぜ」
ノーボスの首はバレッタの手の平で包まれ、最後に手の平に収まった。
果物でも握り潰すように、バレッタの手は動作し、果物が熟れ枝からもげるようにノーボスの首は落ちた。
次の瞬間にキースの歩行は困難になり、地面に伏し、混沌とした複数の痛みに泣き崩れることしか出来ないのだった。
【能力名】
海湖池川水溜
【LEVEL】
LEVEL7
~次のLEVELまで、同スキル保持者と二千五百七日過ごす。
【スキル詳細】
このスキルはこの世で唯一二人が保持する。
そのスキルを持ち合ったもの同士は互いの能力を全て共有することが出来る。
持続硬化時間、代償、全てにおいてこのスキルにリスクは発生しない。ただし、発動条件として両者の距離は百メートル以内とする。
また元から保有している能力を共有する場合は効果をその分上乗せすることとなる。
(例、同スキル保持者の他のスキルの使用可能。また使用中も両者がそのスキルを同時に使うことが出来る。
例、歩行能力は元からどちらもが備えている能力ではあるが、スキルで共有することでその能力は二倍近くになることになる)
つまりキースの足が千切れていてもノーボスの足が歩行可能であればそれを共有することで歩行を可能にしていたと言うわけだ。
しかし、その相方はもういない。
互いに持ち合っていた引き付けるスキルと反発させるスキルもキースは半分、元から自身が持っていた引き付けるスキルしか使えないのだ。
バレッタは戦闘不能になったキースへの興味を無くし、膝立ちであっけに取られていたバルゴスに近寄り面白そうに笑った。
「戦場での先輩としてのアドバイスだ。お前は状況を把握しようとし過ぎる。相手のスキル、武器、手札を探ろう探ろうとしている。それは悪いこっちゃないが、それにだらだら時間を取られて決定打を失うぐらいなら辞めた方がいいぜ。まぁ、そこはケースバイケースか。今回は時間をかけても相手のスキルが分かりそうになかった。だから、自分の手札の中の有効打を見つけたらそれを使って速攻畳みかける。これが正解だ」
「……勉強になります」
バルゴスはここ最近で積んできた実践を鼻で笑われたような身悶えする感情を胸にバレッタへの言葉に返事を返した。
最前線の戦いは彼らの勝利で終わった。




