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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第四章 人を喰らえ、人共よ
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人類の壁

 バレッタたちの活躍もあって、前線は大方ホイホイ、華中連合の理想的な形で進んでいた。どんどん進軍していき、メアリカ、アシロ連合の中央まで手が伸びていた。


「……ここからだな」


 その連絡を受けたルークが重い声を発した。


「……人類最高の力。ぜひ、欲しいところだな」

「欲しがってばかりだと全てを失うことになるぞ」

「分かっている。セブンズには一切の手加減なく殺せと言ってある」

「その間に神崎と強華がどの程度まで深く切り込み首を取ってこれるか。今回の戦争は結局のところ至って単純な構造のようだ」


 ルークとティグレは最後方の簡易指令室で待つばかりだ。

 前線に出て華々しく活躍することはない。だが、これが本来のルークの望んでいた形だ。それなりに駒が揃えば自分がわざわざ前線に出る必要はない。


「さぁ、頼んだぞ。俺の切り札たち」


 ルークは早くも戦況は中盤に入りかけていることをしっかりと認識した。




 オセロムという男は幼少の頃より強かった。

 メアリカ領内の外れにある小さな村で育ち、海が近い事からよく父親の漁を手伝っていた。出生に特にこれといって目立った点はない。ごく普通の男の子だった。

 ただ、強かった。

 理由なき強さが最も強い。

 なぜなら、核がないから。

 核とは支えであると同時に、最大の弱点にもなり得る。

 そして、支えは核以外でも作ることは出来る。




 オセロムは待ち構えた。

 最前線の平原より少し後方の岩場。

 自陣の中央でも味方の兵の戻りを感じ始めている。

 つまり、圧されているのだ。


「第一ラウンドは向こうの勝利かも知れんな。あの双子、苦戦しているのか? それとも死んだか?」


 オセロムの周りには異様な空間が出来ていた。

 それは重苦しく味方ですらおいそれとは近付けない。オセロムも戦闘の邪魔になるだけなので、それをわざわざ注意することもない。


 オセロムは戦場の空気を深く吸い込み、また長い時間をかけて吐いた。


「全く、この戦争、俺が居なければ負けていたかもしれんな」


 次の瞬間、七つの影は地面に沈んだ。

 いや、五つ。


「ほう、二人も俺の初撃を躱したか」

「ふざけ過ぎてる」

「間一髪ですです」


 ギリギリのところでオセロムの初撃を躱したのは、ムッツリとヨハネ。ムッツリは事前に後方に投げていた石クズと自分の位置をスキルで入れ替え、ヨハネは飛び出すタイミングが一歩遅かったお陰で回避に成功した。


「グッ、地面に張り付いて動けねぇ」


 ゴローの悲痛な声が漏れる。

 アレーニェ、リオン、ニニ、ワンコも声には出さないが現状に歯軋りする。

 セブンズは音もなく四方から囲み、絶好のタイミングで襲い掛かった。

 なのに、その大半が一瞬で制圧された。


「ふん、この俺に対し、七人か。舐められたもの……いや、話題になっている少年とあの四国会議で見かけた金髪の女がいないな。お前たちは囮か」


 オセロムはすぐさま、現状を理解し、狙いを看破した。


「ならば、お前たちにかけている時間はあまり無いな」


(狙いは当然、大将首だろう。ウーノもアシロの大将首も分かり辛い場所に隠れては貰っているが、長引くと厄介だな)

 オセロムは一番目の前に倒れているワンコの頭を踏みつけた。ワンコのあずき色の髪が泥と混ざり合う。


「一人一人に言葉をかける暇もなくて済まないが、死んでくれ」


 オセロムは首の骨を折る為に、足に力を込めた。

 ワンコの顔が歪む。ワンコは口の中の土を吐き出すように口を横に開く。


「……はだはだ不快だ」

「ん?」

「このルーク様の右腕である私をどいつもこいつも安く見積もっていることがだ!」


 オセロムの分厚い底のある靴が裂けた。

 その被害は靴だけにとどまらず、足の裏をも裂いた。

 オセロムが久し振りの出血の感触を確かめた。


「ほう」


 その瞬間、地面に這いつくばっていた五人の身体の拘束が解けた。瞬時に立ち上がり、距離を取る五人。

 オセロムはそこまで深い傷ではないようで、物珍しそうに足元を眺める。


「俺が同族相手に傷をつけられたのなんていつ以来だ? 思わずスキルを解いてしまった」


 オセロムは腰にさしていた武器をおもむろに取り出す。

 それは何の飾り気もない棒。木製の棒は先端に行くほどに太くなり、最終的に丸太の円周ほどにまでなっている。漆を塗り、黒光りするそれはどこまでもシンプルな武器、こん棒である。

 

「さて、一つずつ頭を潰して回るか」


―パァン、パァン


 相手の次のアクションを待たず、その銃声は響く。

 先に距離を取っていたムッツリとヨハネである。その銃撃をオセロムは手に持つこん棒を使うまでもなくスキルで撃退する。


「なっ! 銃弾が地面に落下した」


 そう、二人の銃弾はオセロムの手前で地面に引き付けられるように落下したのだ。

 

「お前たち次は逃がさんぞ」


 オセロムがムッツリとヨハネを睨む。

 その瞬間、直感的にまずいと思ったが、ヨハネは地面に張り付けられた。

 が、ムッツリは自身の放った銃弾と自分の位置をスキルで入れ替え、回避する。

 

「ほう、お前は中々便利なスキルを持っているな」

「……これが便利に見える?」


【能力名】

 道化(ジャ・)魔術師(グリング) 

【LEVEL】

 LEVEL8  

 ~次のLEVELまで、合計三十六万二千キロの投擲が必要。

【スキル詳細】

 自身が投げた物と自身の位置を反転させる。

 ただし、投げてから一時間以内、自身との距離半径百メートル以内の物体に限る。

 同じ物体に二度以上このスキルを使用することは出来ない。


 ムッツリはあくまで自分の投げた物としか位置の入れ替えが出来ない。

 つまり、今自分で放った銃弾の位置と入れ替えると言うことは、


「まぁ、眼前だよね」


 オセロムの真ん前。

 死地を意味した。


「その勇気に敬意を」


 オセロムがこん棒を振り下ろした。

 ムッツリは両手をクロスし、ガード体勢をとるがそれでどうにかなる威力ではない。

 リオンが咄嗟にスキル・威風堂々(ダストデビル)で風の刃を飛ばし、オセロムの注意を逸らそうとするが、それはこん棒で防がれ一瞬の間を生むので精一杯だった。


―ズゥン‼‼‼


 重い音の後に、結果だけが残る。

 ムッツリが地面に深く沈み、関節が本来の可動範囲からそれ、見るも無残な肉人形へと変貌していた。


「まず一人」


 その場の誰もムッツリの生死を確認する余裕すらなかった。



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