最前線の戦い 前編
味方兵士の悲鳴を耳にし、キースとノーボスはそちらを気にし始めた。
「どうやら向こうにも切り札があるみたいね、キース」
「えぇ、こちらの兵士を消耗してしまう前に助けに入った方が良さそうよ、ノーボス」
二人は涼しい顔で立っていた。
荒れ狂う戦場の中で立っていた。
前回の四国会議では後れを取ったが、本来彼女らも十分過ぎるほどに人族の枠から出た大国の切り札たち。そうそう負けが続くはずもない。
「行かせると思うかい?」
バレッタが口から息を漏らしながら二人を睨む。
既に衣服の色だけではない赤をバレッタは身に纏っていた。
「余裕よ、お姫様」
「噂通りの強さに、予想外の回復スキルだけど、やはり私達の敵ではないわね」
バレッタに二人が視線を集めている間にバルゴスが背後に回った。
そのスピードは獣族の血を混ぜたことで人類の目に追える速度ではなくなっている。
「うおおおおおおおお‼‼‼」
キースがバルゴスの剣を腕でガードした。
普通なら真っ二つ。
しかし、当然と言った具合にその現象は起こらず、逆にバルゴスの剣がキースの腕に弾かれた。
「くっ」
「この子は学習能力がないようね、ノーボス」
「えぇ、さっきから突進してくるばかりだわ、キース」
バルゴスは二人を睨み、すぅっと息を吸った。
【能力名】
変幻自在
【LEVEL】
LEVEL4
~次のLEVELまで、対人戦闘時間、一時間が必要。
【スキル詳細】
自身又は自身の触れている対象の一つの速度を変化させる。
元の速度の1・2倍もしくは0・8倍に変化可能。
ただし、連続の使用は体にかかる負荷も変化させた倍率になる。
(例)
木刀を一回振るのに体への負荷が十必要とすると、使用時は十二になる。
バルゴスが剣を振るう。
そのタイミングに合わせるようにバレッタも動き、二方向からの攻撃がキースとノーボスを襲う。
【能力名】
握力超過
【LEVEL】
LEVEL8
~次のLEVELまで、同程度以上の戦闘能力を有するものとの戦闘が八十回必要。
【スキル詳細】
自身の握力を百倍する。
発動時、倍化の威力調節は出来ない。
持続時間なし、自身が意識を保ち握力を込めれるだけの余力がる限り発動可能。
ただし、発動時は発動していない通常時より疲労が蓄積しやすい。
バレッタの攻撃は超握力だよりの一直線な攻撃だが、バルゴスは自身の獣族の血から生み出される超スピードに自身のスキルを混ぜ合わせた緩急攻撃を繰り出す。
「これは工夫しているつもりなのかしら、キース」
「きっとそうよ、ノーボス。だけれど、見当違いな工夫ね」
バルゴスは自身の衣服を、剣を、スピードの緩急で不規則な動きを繰り返した。もはや、その動きの終着点を判別することは誰にも出来ない。
勿論、キースやノーボスでもそれは例外ではなかった。
ノーボスは一直線に向かってくるバレッタをひらりと躱し、斧を振り下ろした。それを必死で身体を捻ることでバレッタは躱そうとするが、右腕の肘から下を切り落とされた。
「確かに、一直線の攻撃よりは読みが付き辛い分、厄介かも知れませんね、キース」
「えぇ、そうね、ノーボス」
二人は飛び掛かるタイミングを窺い高速移動を繰り返すバルゴスを憐れんだ。
「「私達以外ならね」」
今度こそ背後を取った。靴底に地面を滑る感触。
足元から完全な死角。
ガードするタイミングすらない。
バルゴスは勝利を確信した。




