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異世界から来た奴がモテモテチート過ぎてウザい  作者: 痛瀬河 病
第三章 祭りに群がる者たち
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買い物、得た物

 ルークは鬼々の方へ正面から殴りかかった。

 既に右手は真っ直ぐに相手の方へ突き出している。

 まるで本当にくれてやると言わんばかりにだ。

(なら、遠慮なく)

 鬼々はルークの右手へ大鎌を落とすように振り被った。

 当然、その大鎌を右手を裂いた後に、そのまま止まらずルークの全身をずたずたにする。右手はダイナマイトの導火線でしかない。


「高い買い物だ」


 ルークの右腕がだらりと力を失った。

 だが、鬼々の大鎌はそんなことでは止まらない。

 刃がルークの右腕に触れた。



 そして、その場からルークの右腕と鬼々は消えた。



 否、正確に言うならば、ルークの右腕と鬼々だけではない。

 そこに建設されたはずの渡り廊下まで完璧に消え、城の本館と塔の間に中途半端なでっぱりだけが存在し、そこにルークと神崎がへたり込んでいた。


「な、なにが」


 状況を理解していない神崎が呟く。

 しかし、それはルークの口から説明される前に解決した。


『我ヲ呼ンダノハ、オ前カ』


 重低音の声が場を支配した。

 神崎は慌てて声の方へ注視する。

 それは今にも崩れそうな壊れた渡り廊下の外、屋外から響いてきていた。


 何かがいる。

 そして、そいつはルークの右腕と鬼々を消滅させた犯人だ。

 神崎は確信した。


 ルークがボロボロの身で補足を神崎に与えようと口をもごもごと動かす。

 だが、彼は右腕を抑え、衣服を剥ぎ必死に止血しているが、目の色は虚ろで焦点はもうほとんど合っていない。


「俺が、俺が異世界(ナ・)転生(ロウ)で、呼び出したんだ」


 ルークがうわ言のように呟く。

 神崎がその様子に初めて正気を取り戻し、ルークの元へ駆け寄り膝を落とす。


「ルーク‼ ルーク‼ しっかりしてくれ‼ 今、医療施設に連れていくから」


『貴様ラ、我ヲ呼ビ出シテオイテ無視トハ、ヨイ度胸ダナ』


 その声は先ほどよりもより存在感を増し、まるで脳に直接響くようた。

 ギロリ。

 窓の外で何かが覗いた。

 目だ。

 大きな目が神崎とルークの方を覗いている。

 爬虫類のような湿った鱗も見えた。

 

 神崎は息をのんだ。

 ルークが心配だったが、立ち上がり恐る恐る外壁のなくなり切り取られた通路の橋に歩を進めた。


『ナンダ、オ前ハ、人ノ子カ』


 圧倒される。

 そこには竜がいた。龍だ。ドラゴンだ。でかいトカゲだ。

 体長は二十メートル近い黒光りするドラゴン。口から覗く牙は鋭く、人間なんていつでも丸呑みにできるといわんばかりに鈍い光を放つ。大翼、小翼がそれぞれ一対ずつあるが、空中を浮遊しているはずなのにそれは左右に広がるだけで動いている様子はない。もしかすると別の要素で揚力を得ているのかもしれない。

 神崎も先のトライとの戦いで色んな種類の魔物を見たが、ドラゴンを見たことはなかった。

というより、


異世界(ナ・)転生(ロウ)って人間以外も転生させられるんだ」


 その驚きのほうが強い。

 ルークの言葉が真実なら、このドラゴンはルークのスキル異世界(ナ・)転生(ロウ)で呼び出したことになる。


『我ハ、世界ヲ統治スル【黒竜ボラムゴア】デアルゾ。世界ノ中心デアル琥珀石ガ収メラレタ神殿ニ眠ルモノダ。早クアノ我ヲ眠リカラ覚マシタ忌々シイ勇者ノ元ヘ返セ』


 口は動いていない。

 もしかするとドラゴン独自の発声方法があるのかもしれない。

 そして、ドラゴンはありがたいことに自己紹介をしてくれた。

 ここで神崎は大体の察しをつける。なので、言いにくいことだが言っておかなくてはならないことが生まれた。


「あの、ボラムゴアさん? 多分なんですけど、あなたその勇者に殺されちゃったんだと思いますよ。それをここで蹲っているルークにこの世界に呼ばれたんだと思います」

『何?』

「このルークの力は異世界の住人をこちらの世界に連れてこれる力なんですよ。僕もその一人です。死んだ時か、死ぬ直前かは曖昧なんですけど、そのタイミングの生物がここに呼ばれるみたいですね」


 神崎も異世界(ナ・)転生(ロウ)についてはあまり詳しく知らないので要領を得ない説明になる。しかし、ドラゴンはでかい図体の割にそれなりに理解力はあるようで何故か納得してくれた。


『ナルホド』

「あっ、えらく素直に受け入れましたね」

『ナニ、我ヲ倒シタラシイ勇者モ別ノ世界カラ来タト宣ッテオッタカラナ』

「あぁ、なるほど」


 どこの世界でもお約束はあるらしいと神崎は苦笑いする。

 神崎は先のなくなった渡り廊下に触れながら質問する。


「それでボラムゴアさん、ここにごっそりでかい穴開けたのはあなたなんですよね?」

『ソウダ。我ガ食シタ』

「何故なんです? ここで蹲っているルークもあなたに右腕を持っていかれたみたいなんですけど」

『知ラン。我ガココニ呼ビ出サレタ時、頭ノ中ニココヲ加減セズ喰ライツケトイウ言霊ガ過ッタ。気ニ食ワンガ、ソレニ従ッタマデダ』


 神崎は虚ろなルークを注視する。

(ルークが命令したのか? 異世界(ナ・)転生(ロウ)に転生者を従わせる力はなかったはず。もしかするとレベルアップの影響なのか?)


『ソイツノ右腕以外ニモ小娘ヲ一人腹ノ足シニシタガ不味カッタカ?』


 神崎はドラゴンの出現ですっかり忘れていた先ほどまでの死闘を思い出した。鬼々は突如現れたボラムゴアと名乗るドラゴンに喰われた。

 それはルークの意図する力で、彼女を殺したということだ。

 神崎は自分の力不足に悔しさはあった。もし、自分がもっと圧倒的に強ければ鬼々を殺さずに解決出来ていたのではないかという後悔だ。

 だが、それは現状無理だった。ボラムゴアがここに来ていなければ、死んでいたのは神崎とルークの方だった。それどころか、ホイホイ全体にもっと大きな被害が出ていたかもしれない。

 死への覚悟はできている。

 もう神崎に敵を殺すことへの躊躇はない。

 だが、やはり根の優しい彼は殺した後に出る名前のつけ難い感情だけは抑えられなかった。

 神崎は複雑な感情を飲み込んで答える。



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