表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女の覇権安定論 ~力を求めし者よ、集え!~  作者: 内藤ゲオルグ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

422/464

戦士の証明

 闘身転化魔法を発動できる御曹司は、あの場にいるアナスタシア・ユニオンの最高戦力。戦力の柱が倒されれば、膠着こうちゃく状態だった戦況は完全にグルガンディの側に有利に傾く。もう結果は見えたも同然だ。

 まさか強力なアンデッドであるドロマリウスを戦力としてじゃなく、自爆の道具として使うとはね。悪党らしいやり方に感心してしまう。


「あのドロマリウスってアンデッドにやられたら、その人もドロマリウスになってしまうんでしたよね」

「そう聞いてるわ」


 ドロマリウスの呪いの火に焼かれ死んだ場合には、そいつもドロマリウスとしてよみがえる。前に襲撃した研究所の奴からはそう聞いた。

 もし呪いの火に焼かれたら、それで死ぬ前にトドメを刺さなければならない。殺してやれば、アンデッドにならずにそのまま死なせてやれる。ただ理屈で分かっていても、仲間を簡単に葬り去れるもんじゃない。

 果たして若いあいつらにそれができるだろうか。あるいは、そもそもその情報を知っているだろうか。


 やらないなら私たちが代わりに引導を渡してやるしかない。

 闘身転化魔法を発動できるほどの戦士が、もしアンデッドとして生まれ変わったらどうなるだろう。その戦闘力を失うどころか、アンデッド化で強くなる最悪の展開が想像できてしまう。

 いや、分かんないけどリスクがあるなら、それは避けるに越したことはない。人であるうちに殺すべきだ。


「――――おあああああああああああああああっ」


 魂から湧き上がるような絶叫を上げ、御曹司が動き出す。呪いの火に焼かれたまま。

 巨大なハルバードを振り回し、黒い鎧をまとったスケルトンの群れを薙ぎ払う。死力を尽くすつもりか、それまでよりもずっと力の乗った凄まじい一撃を繰り出し、そこで止まらず嵐のような連撃を放ち始めた。

 重く頑丈な上に、衝撃を逸らす特殊な魔法効果があるはずの黒い鎧を叩き潰す勢いでハルバードが荒れ狂い、グルガンディの側に傾いたはずの天秤を逆に傾ける。


 もちろん黙って見ているだけのグルガンディじゃなく、飛び道具や魔法が御曹司に突き刺さるも、まるで意に介さずに暴れまくり手が付けられない。

 鬼神のような戦いぶりじゃないか。ここで命を燃やし尽くし華々しく散ったあの雄姿は、後々まで語り草になるようなものだ。

 みんなでその気合とド根性にちょっとばかり感心しながら戦いぶりを見届ける。


 集中力や魔力の制御能力を奪うはずの苦痛があっても、戦闘への極度の集中のためか御曹司の闘身転化魔法が途切れない。

 むしろ力強さを増す攻撃が、続々とスケルトンが身にまとった黒の鎧を叩き潰し動ける敵の数を減らす。

 まだ残る二体のドロマリウスが迫るも、すでに呪いの火に焼かれた男はまったく意に介さずハルバードを叩きつける。

 もはや返り血など知ったことではないとばかりに、嵐のような連撃を繰り出し再生を上回らん勢いで化け物を圧倒した。


 御曹司の武器は聖具やアンデッドに有効なアーティファクトじゃないらしい。あれじゃ、どんなに切り刻んでもたぶんドロマリウスは倒せない。

 それでも野暮なことは言えないくらいの戦いぶりだ。


 呪いの火に焼かれる苦痛はどれほどのものだろう。

 正直、見直した。いまなら総帥が期待する男だってのも理解できる。

 あれは正真正銘の戦士だ。武闘派組織アナスタシア・ユニオン、その前総帥の息子の立場に恥じない立派な戦士。奴は死に瀕した状況でそれを証明している。

 誰が認めなくたって、この私が認めてやる。

 そうだ、引導はこの私が喜んでくれてやろう。胸を張って死に、地獄で誇れ。


「あ、お姉さま」


 命を燃やすように凄まじい動きをした御曹司が、急にその動きを鈍くした。闘身転化魔法が切れたどころか、魔法による肉体強化が完全になくなったようだ。

 潮時だ。死に至るにはまだ少し時間がありそうだけど、事切れる前にトドメをくれてやろう。


 優れた戦士の死に際くらいは敬意を払ってやる。

 投擲で殺すことはせず、乙女の拳で死なせてやろうじゃないか。隠れた状態のアドバンテージは失ってしまうけど、そんなものはもういい。それに姿を現すのは私だけだ。こっちのアドバンテージを完全に捨てるわけじゃない。


 意を決したところで、しかし特別に強い魔力を察知して動きを止めざるを得なかった。

 グルガンディの一人が隠密状態を捨て去ったらしく、烈火のような魔力を撒き散らしながら御曹司の目の前に迫る。

 あいつだ。グラデーナが危険を覚えた強力な戦士とは、あいつのことに違いない。


 私が割って入る余地もなく、御曹司は敵が振りぬいた角棒のような武器にぶっ叩かれ、凄まじい勢いで遠くの壁にまで飛ばされ激突した。

 でも御曹司はまだ死んでない。とっさに武器を掲げて防御の姿勢を取ったのが分かった。武器は壊れずとも、その両腕は完全にぶっ壊されたように見えたけど、命を失うまでには至ってない。まったくもって、しぶとい野郎だ。即座に駆け寄るアナスタシア・ユニオンの仲間たちが数名。


 ちっ、せっかく私がこの手で最後の一撃をくれてやろうと思ったのに。あそこに入っていって手を下すのは難しそうだ。最悪の場合には投擲か魔法で命を絶つしかない。どうせあいつらには御曹司を殺せない。


 しかし妙だ。なんでいまさら?

 放っておけば御曹司はじきに死んだ。呪いの火に焼かれる御曹司は、死ねばドロマリウスとして復活する。アンデッドを操る魔道具を持つグルガンディにとっちゃ、新たな手駒が増えるに等しいってのに。なんでわざわざ攻撃したんだろう。


 それに角棒を持った男は一回の攻撃で諦めたりしなかった。まだ死んでないことが分かったらしく、執拗とも思える追撃に走る。

 当然、アナスタシア・ユニオンはそれを迎え撃つ。明らかに格上の相手だけど、ここぞの場面でいちいち怯むような弱者はいない。


 そして取っておきの切り札を使って見せた。こんな場面で最も使える道具、小さい範囲のだけど結界魔法の魔道具で見事に強者の追撃を阻む。

 外からの攻撃を強固に遮断し、内側からの攻撃は可能にする反則的な魔法だ。

 結界魔法で守られた戦士たちが放つ苛烈な攻撃を前にしては、いかな強者とて強引な突破は図りにくい。アナスタシア・ユニオンだって必死なんだ。その攻撃を前にしては、さすがの敵も足を止め防御に回らざるを得なかった。


 事態は進展する。それも良い方向に。

 守られた御曹司を介抱する奴らが何かを使い、それによって呪いの火があっさりと消えたじゃないか。

 そんなことが可能な道具は一つだけ。聖水だ。教会が作る聖水なら、呪いの火が消せたはず。私たちも欲しかったけど、コネがなくて手には入れられなかったものだ。

 たしかに、アナスタシア・ユニオンなら伝手はあるだろう。対アンデッド用の装備で固めていなかったとしても、このご時世だ。一応の備えとして聖水を持っていても不思議じゃない。


「なによ、助かるんじゃない」


 体を燃やす呪いの火が消えると、続けて回復薬を使ったようだ。

 弱々しくいまにも消えそうだった魔力反応が、少し勢いを取り戻すのが分かった。それでも死力を尽くした消耗が一気に戻るわけじゃない。ぐったりとした様子から意識は戻らず、あれじゃこの戦闘に復帰することは無理だろう。



 さて、そろそろ出番だ。

 最高戦力を失ったアナスタシア・ユニオンに対して、グルガンディの戦闘員にたぶん欠員はおらず、アンデッドもまだ多数が健在だ。放っておけば一方的な戦いで決着する。敵の能力や戦い方もある程度は掴めたし、恩を売るには絶好のタイミングでもある。これ以上の様子見は意味が薄い。

 最後の意地の抵抗を続ける奴らを横目に見ながら、みんなに向かって話す。


「いい? 結界魔法が破れるタイミングで割って入るわよ。まずは不意打ちでグルガンディを減らす。アンデッドは無視でいいわ」

「手順はどうしますか、会長」

「遠い位置にいる三人は私が投擲で片づける。とりあえずそれ以外をみんなで狙いなさい。たぶん、不意打ちでやれるのは半分もいかないだろうけどね」


 いまだに気配の薄いグルガンディの構成員だけど、ずっと観戦を続けた私たちには動きがバレバレだ。問題なく仕掛けられる。ただし、まだ二十人くらいはいる人数を不意打ちだけで仕留めるのは無理だ。


「さすがに全部は片づけられませんね。特にあの角棒を持った男は厄介そうです」


 あれは特別な強者だ。不意打ちでダメージを与えたとしても、それだけで仕留め切れるとは思えない。仕掛けるにしても、まずは確実に数を減らすことを優先する。

 ただ観察していて思ったのは、どういうわけか角棒の男を筆頭にグルガンディにはかなりの疲労が見える。

 もしかしたら突貫工事でこの地下大空間を作った影響かもしれない。まだ多少なりとも力を温存していたとしても、万全の状態にはほど遠いと思える。アナスタシア・ユニオンとの戦闘に集中するいまなら、高確率で奇襲は成功すると見込んだ。


「わたしがあのボスをやります」

「うん、ヴァレリアには奴を任せる。こっちの邪魔をされないよう全力でやりなさい。私も鉄球で一撃入れるから、それに合わせるといいわ」

「グルガンディを倒してからアンデッドですね、ユカリさん。でも結局、アンデッドを操ってる奴は分かりませんでしたね」

「ちょこちょこ笛の音は聞こえてるんだけどね。全滅させてから探すしかないわ」


 これまでの様子からして、隠れて笛を吹くような奴はいないと判断できる。だったら、勝手に笛の音っぽい音が出る魔道具を使っているとしか思えない。カラクリは戦闘が終わってから探るとしよう。


「……結界魔法の魔力が弱まってきました」

「極小結界魔法は短時間の使用を想定したものです。苛烈な攻撃を長時間に渡っては防げません。そろそろ破れますよ」


 よし、改めて闘争の意欲を高めよう。


「みんな、聞きなさい。この戦いはベルリーザにおいて、私たちキキョウ会の名を刻む大事なものになるわよ。見学者は少ないけどね、それでもアナスタシア・ユニオンの若手には刻んでやれるわ。だから、苦戦なんかせずに圧倒して片づける。いいわね?」


 隠れた状況で威勢のいい返事はできない代わりに、みんな力強くうなずいてくれた。


 御曹司と一緒にいる奴らは、たぶんアナスタシア・ユニオンの未来を担う有望な若手たちだ。

 そいつらの脳裏に私たちの戦いぶりを刻み込む。武闘派として息巻く奴らに、相次ぐ激闘を潜り抜けたホンモノを見せつける。それでこそ対等の存在として、このベルリーザでもやっていくことができる。若手たちの意識に、そいつを刷り込んでやることが今後に向けて重要だ。


 この私も呪いがなんだと言ってる場合じゃない。会長がみっともない姿を他者にさらすことなど、断じてあってはならないんだ。

 華麗に、鮮烈に、奴らが敗北した敵に勝利する。女の構成員だったら、アナスタシア・ユニオンを抜けてでもウチに入りたいと思わせるくらい圧倒的な戦闘を見せつけて勝つ。それをやってやる。


 息をひそめつつも気合が高まる。

 結界魔法の様子を探り、その他の状況監視も怠らない。

 そして私たちに油断はなく、タイミングも間違わない。

 結界魔法が限界を迎える瞬間に仕掛けた。


 目にも止まらない速さで私が鉄球を三度放り投げ、その他のメンバーも同時に投擲武器か魔法を放つ。

 ヴァレリアだけは矢のように走り、アンデッドの群れをスルーして後ろから角棒の男に迫った。その姿を視界に収めながら、追加の鉄球を投じる。


 すべてのことが一瞬で結果を出す。

 十人近いグルガンディが致命傷を負うか即死し、角棒の男は左の肩と手足を犠牲にしながら私の鉄球とヴァレリアの奇襲を辛うじて乗り切った。

 それらのすべてを見届けてから動くわけじゃなく、すでに全員が次の行動を開始済みだ。


 魔力を伴わない超速で迫る鉄球での奇襲は非常に効果的だ。私はさらに追加で遠い位置にいる二人をまた仕留め、ほかのみんなもアンデッドを無視して次弾を放つ。即死は私がやった五人に留まるけど、致命傷や戦闘不能に陥る重傷を負ったグルガンディが続出した。


 そうした状況をよそに、この場にいる私たち以外の視線は、唐突に姿を現した美少女に集まっている。

 ヴァレリアは私に似た紅蓮に輝く魔力を身にまとい、すべてを圧倒する存在感でこの場を支配した。

 御曹司が使う中途半端な闘身転化魔法とは、もう完全に違う魔法と言っていいくらい次元が異なる力強さと鮮やかさだ。角棒の男が発する烈火のような強い魔力や存在感だって塗り潰してしまう。

 その姿は図らずもおとりや陽動のように機能し、投擲や魔法での奇襲を目立たないよう隠してくれた。


 グルガンディとアナスタシア・ユニオンの両陣営にとってまさしく青天の霹靂へきれきであり、ただならぬ強者の介入に肝を冷やしているに違いない。


 客観的に評価して角棒の男は強い。単純な魔力量でもそうだし、経験だって豊富だろう。謎の気配を生む魔法か道具を巧みに使えば、気配察知能力に優れた戦士ほどあれには惑わされる。正面からというより、あっちから奇襲を掛けられると非常に厄介だと思う能力だ。諸々込みで考えてグラデーナが危険を訴えた意味は十分に理解できる。


 ただ、どうしてか重い疲労を抱えた上に私たちに観察を許しすぎた。奴らの動きや戦い方だって、短い時間の観察で頭に入った。しかも奇襲で多数を戦闘不能に追い込み、最高戦力と思わしき角棒の男にもこの状況では致命的となる負傷をすでに与えた状態だ。


 超速で忍び寄ったヴァレリアは、襲い掛かる寸前に闘身転化魔法を発動した。御曹司へ意識を向けていた男はギリギリで奇襲に反応したけど、ヴァレリアに気を取られ私の投擲で手と肩を砕かれた。無視できない負傷の隙を逃すはずもなく、すれ違うような移動を繰り返しながら防具のない箇所を狙ったヴァレリアのナイフが敵の体を切り刻む。

 角棒の男のことは優れた戦士と認めてやる。一瞬の隙に重傷を負ったにもかかわらず、それでも手足を犠牲に致命傷だけはなんとか避け続ける。でもそれで精いっぱいだ。


 命を繋いだことは褒めてやれるけど形勢逆転はあり得ない。もう勝負は決まってる。

 どんな切り札を持っていようが、祖国や任務のために情熱や執念を燃やそうが、ここから逆転を許すことなどあり得ない。完璧に近い奇襲を成功させたいま、角棒の男はヴァレリア単独で押し切れる。もはや勝ったも同然、不意打ちの初動だけで勝負を決めた。


 そして勝ったも同然でも、まだ勝ってない。勝つまで手を止めない。キキョウ会は甘くないって、アナスタシア・ユニオンの連中に強烈に印象付けてやる。


 意識の端でヴァレリアと角棒の男の戦いを捉えながら、グルガンディの構成員を仕留め続ける。

 もうアンデッドを操る余裕などないか、魔道具の使い手を倒したのだろう。スケルトンとドロマリウスには動きがない。

 不意を衝けば時間などかからない。立て直す時間など与えるはずもない。このまま――


「に、任務の完遂に命を使えっ……さらばだ!」


 ヴァレリアの短剣でさらなる負傷を負いながら、角棒の男が仲間へ呼びかける。自らの死を潔く受け入れた言い草はあまりに不気味だ。

 すると即死を免れ致命傷を負った奴らまでもが、最後の力を絞るように魔力を高めたじゃないか。


 人の執念とは恐ろしい。死に至る寸前でさえ、任務とやらのために命を燃やす。奴らの目的は私たちを倒すことじゃなく、何らかの任務を果たすことにある。それをさせるわけにはいかない。

 足りない魔力を命で補うような魔法行使は、危険だけど切り札の一つしては考えられる方法だ。それでも死に瀕した状態で、易々とそうした魔力制御ができるもんじゃない。無理しても成功せず、単に死を早めるだけの行為だ。


 瞬間的に愚かしいと思う一方で、嫌な予感と危機感を覚える。

 最後の足掻きを甘く考えるわけにはいかない。グルガンディの目論見は上手く行くんだと想定し、それはなんとしてでも阻止すべし。


「やらせるなっ」


 私たちは物陰から姿を現し、前に出ながらグルガンディ一党への攻勢を強める。戦闘不能なんかじゃなく、全員の息の根を止めるために。

 覚悟と覚悟のぶつかり合いで負けるつもりは毛頭ないけど、やっぱり他国に潜入した精鋭工作員が命を懸けた最後の足掻きだ。簡単に止められるもんじゃない。

 さらに一度は棒立ち状態になったアンデッドどもが、グルガンディの盾になるように動く。そして発動する何かの魔法。


 死と引き換えに高めた膨大な魔力は、どうやら地面を通じて広い地下の一点に集まる仕組みのようだ。いつの間にかクモの巣のような魔法陣が展開している。

 反射的にトゲの魔法で魔力の通り道を破壊に出るも、網の目のように張られたらしきルートを容易く迂回、阻止には至らない。

 やがて立体的な魔法陣がアンデッドの向こう側に浮かび上がり、数秒も経たずに消え失せる。それと同時に地下空間全体に、ふわっと広がるような魔力の波動を感じた。


 特に攻撃的な予兆や気配は感じられなかったけど、何も起こらないはずはない。

 命を賭した最後の魔法。バドゥー・ロットの呪いを連想して肝が冷える。たぶんこれを凌げなければ、私たちは敗北したと言えてしまう状況に陥るだろう。そうなるはずだ。


 私は奴らと違って、こんな所で命を落とす気はない。それでも勝って、奴らの覚悟を踏みつける。

 ふと、ここまでの苦労が脳裏をよぎる。逃げる者より追う者のほうが強いとはよく言うけど、それでも大変な道のりだった。


 疲労と呪いで体は重く、本調子には程遠い。それでも、私はまったく負ける気がしない。

 頼りにできる仲間がいるし、ピンチのほうが燃えるのは性分だ。楽な戦いなんかじゃ、心に火がつかない。

 誇りをかけた最期のあがきとド根性を、この私に見せてみろ!


 余所からきた悪党同士、どっちが格上か勝負といこう。

 きっとこれが最後の正念場だ。

キキョウ会の目的はグルガンディを始末し、その企みを阻止すること。グルガンディの目的は任務を果たすこと。

微妙にかみ合わない二つの勢力は、アナスタシア・ユニオンの介入もあり正面対決とはなりませんでした。

次話ではグルガンディの目的が明らかになります。お次もよろしくです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >前総帥の息子の立場に恥じない立派な戦士 おおー!今まで散々話には出てきつつもイマイチ人物像がボンヤリしてた御曹司が 生き死にがかかったギリギリの限界でユカリに認められた! 俗にいう「疾…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ