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94 身代わり君

 南国の風から心地よい穏やかな風に吹かれ、季節は秋へと変わっていんだなーと思う。

 無事グラン王国へ入った私達は、コタロウの親へと一応挨拶をして直ぐに別れた。

 あとはノンビリと馬車の旅である。

 近道を通る必要もなくゆっくりだ。


 私が荷台で、ガルドは御者の代わりだ。

 旅してみると、私を様付けで呼ぶ割に、横柄な態度が目立つガルドであったけど、意外に気を使ってくれる。


 野営はもちろん、宿や船でも部屋は別だし。

 邪魔にならない所で自己訓練もかかなさい。

 元の顔がいいのか、町で買い物をしてもオマケをして貰っている。


「エルン様、門が見えたようだ」

「本当? 嘘じゃないでしょうね」

「ここで嘘を付いてもしょうがない」

「ええっと……熊の手の酒場にヘルン王子からの手紙を渡して、あとは自由にだっけ?」

「そう聞いている」

「じゃ、そのように手配して」



 私は身支度を整えしながらガルドへ命令をする。

 グラン城下町で手続きをして、早速熊の手に行ってブルックスへと手紙を渡す。

 事の顛末(てんまつ)を書いた手紙らしく、王の下へ届けられるそうな。

 後は個人的にお土産を渡して家へと向かった。


 なんだかんだで二月近く空けていた事になる、もちろん手紙を送っているので心配はさえていない。


 はずだ。


 ナナからは何時帰って来るんでしょうか? と何度も手紙が来たような。


 私の姿を見た、家の門番が敬礼をして来た。

 やっほーっと手を振って話しかける。


 一瞬身構えたような顔をした家の門番に笑顔を返すと、引きつりながらもう一度敬礼を返してくれた。

 これでも馴れたほうなのよ。


「ええっと、この人はガルドって言って私の召使いなみたいな人で護衛や警備、雑用といった事をする人。

 立場上はノエと同格かノエよりちょっとしたって事で。

 あとソコソコ強いから訓練してもいいし、しなくてもいいし。それとお土産は後で届けさせてるから、適当にわけて」


 ひらひら~と手をふって挨拶を終える。

 エルン・カミュラーヌが男を連れ込んだ! と噂されたら面倒だ。

 異国で拾った召使いならまだましだろう。


 ん? 本当にましなのか? どっちにしろ男を買ってきたって噂されるような……。


 バタン!


 突然扉が開いて、前に歩いていたガルドが頭を打ちつけた。

 出て来たのは、可愛いメイド服の専属お手伝いさん。


 

「エルンおじょうさまあああああああああああああああああああああああああああああああああああああげっほげほほほげほ」

「うお、の……ノエ」

「おかえりなさい、おかえりなさいませ。突然扉を開けて申し訳ございません。

 見ず知らずのおかたエルンおじょうさまの護衛ありがとうございました、それでは失礼し」

「まったまった、この人はガルドっていってノエと同じ召使いで雇ったのよ」



 おでこを押さえたガルドは立ち上がり、ガルドだと、自己紹介を始める。

 ノエの顔が青ざめていく。



「…………も、もしかしてノエは要らない子ですか?」

「なんでそうなるのよ」

「ノエが小さいから、ノエが女性だからエルンおじょうさまを満足にっ――――」

「まったまったまった! 何変な事いうのよ! こらそこの門兵こっち見ない!」


 私の注意に門兵があさっての方向を見る。


「だれよ、ノエに変な事吹き込んだのは! 誰か来たのね」

「ええっと、先週あたりにナナさまと、ミーナさまがお訪ねに」

「………………だめよ、変な人の言葉真に受けたら」

「で、俺はどうしたらいい?」

「あ、ごめん。ええっと、改めてこっちがノエ」

「なるほど、ノエ先輩よろしく頼む」

「せっせんぱいっ!」


 年上の男性に先輩と呼ばれ、驚いた顔をしているが、ちょっと嬉しそう。

 気持ちはわかる。

 私も、転生前の学校で下級生に呼ばれたときは嬉しかったと、思う。

 まー記憶ないんですけどね。



「年齢は俺のほうが上かもしれないが、仕事に対してはノエ先輩のほうが上だ。何もわからないのでよろしく頼む」

「はっはい!」

「じゃぁ部屋は悪いけど、外にある使ってない物置を改築して、材料費は全て出すから好きに使って、細かい給付金はノエより一割低いって所で」

「当然だ」



 というものの、部屋は余っているので、ノエの隣でいいってガルドに聞いた所、一緒に住むのか? と逆に聞き返された。

 そりゃ通いよりお金掛からなくていいだろうと思って言った言葉だけど、年齢的にいくら召使いとはいえ一緒に住んだら不味いだろうと言われた。


 ちなみに年齢を聞いたら二十を越えた所らしい。


 別にコタロウみたいな人間と一緒に住むのじゃないんだし、襲うつもり無いならいいのにと思うんだけどねー。


 下心が見え見えの人間は追い出すしと、説明はしたんだけど。

 俺も男だと謎の説明をされて私が折れた。


「じゃ、そういう事でノエ後はお願い。ノエが出来ない所、力仕事が居る場所、そういう場所を教えてあげて」

「任せてください! せ…………せん、先輩として頑張ります!」

「よろしく頼む」



 ガルドはノエに任せて自室へと向かう。

 久々のベッドに倒れこんだ。

 お日様の匂いがするって事は、掃除してくれているのがわかる。


 開けはなれた窓から黒い物体が飛んでくる。


「あら、カー助おひさしぶり」


 外からカー助が帰ってくると、室内にある止まり木にとまり一鳴きする。


「エルンさアアアアアアアアあああああああんんんんんんんんんん」


 私はベッドから飛び起きる、ついさっき同じ様な声を聞いた。

 何所から!?


 ごっふ。


 私は横腹に衝撃を受けてベッドへと倒れた。


「おかえりなさい!」

「た……ただいま。ナナ」


 私は窓から入ってきたナナへ挨拶をする。

 ベッドの近くには飛んでるホウキが落ちていた。


「はい、学園にいたらエルンさんから手紙が来たとかで若しかしたらって飛んできました」

「文字通り飛んできたのね……」

「はいっ!」

「でも、今度から玄関からお願い、一階にお土産あるから一緒に行きましょう」


 慌ててナナは謝りだす。

 廊下に出ようとして、私は盛大にこけた。


 足の小指が扉にあたったのだ。


「エルンさんっ! 大丈夫ですか!?」

「う、うん。痛みはなかったわね……」

「あっ……」


 腰から何か落ちてきた。

 肌身離さずもっていた『身代わり君』その藁人形が光り輝くとくずれて落ちた。


 身代わり君。

 ナナからもらったレア度S級のアイテムであり、効果は名前の通り、使用者が死に直結する物理的ダメージを一度だけ身代わりしてくれるアイテムだ。


「ちょ! 今の一撃で発動ってどういう事よおおおお!」

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 身w代wわwりw君www ダンジョンの崩落やアイスピックの一撃にも反応しなかったのに、今www 今回の旅の締めくくりに一番の笑撃だった(´艸`*)
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