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37 告白フラグと昇級試験

 私は肩にカラスのカー助を乗せて学園のとある教室へと入った。

 教壇と黒板、その前方には机と椅子があり、大学を思い出す。


 教壇に立つ人物は私の顔をみると溜め息をついた。


「よく来れたなエルン」

「そりゃ、呼ばれれば来るわよディーオ先生」


 そう、教壇に立つ人間はディーオだ。

 精霊ちゃんを手に入れてから一週間以上立った日、私はディーオにとにかく学園に来いと手紙で呼ばれたのだ。


「所で何の日か知ってるか?」


 突然の質問に考える、なんだろ? 建国記念日は多分違うわよね。

 ディーオの顔を見ると少し頬が赤い。


 なんだろう……あれこのシュチュエーションって。


 マズイマズイマズイ。

 人の居ない教室。

 教師に呼び出される女生徒。

 その教師は顔が赤く緊張している。

 告白!? って奴よね心臓がドックンドックンしてるきがする。

 これもそれも、ナナがディーオ先生とエルンさんって仲がいいですよねと、言ったのを思い出したからだ。


「そ、その気持ちは嬉しいけど……まだ早いと思うのよね」

「早いも何も遅いぐらいだ! テストぐらいは出ろ」

「…………はい?」



 ん????



「テストだテスト。退学したいなら別にかまわんが、学園長から便宜を図ってくれと、ボクが一番嫌いなお願いをされてな。今日は補習で呼んだ。

 それよりも、その肩のカラスはなんだカラスは」



 あーーー、そうよね。


「だったら最初から補習っていいなさいよっ!」

「怒りたいのはボクのほうだ。学園の予定表ぐらい見てくれ……ナナ君をはじめ殆どの生徒は既に合格した」

「え。じゃぁテスト受けてないのって」

「ああ、君だけだ。だからよく来たなと、言ったんだ」



 なるほどなるほど、顔が赤いのはなんでもない、怒っているからなのね。

 あはははは、もう変な勘違いさせない欲しいわね。


「あーはいはい、受けますよ。受ければいいんですよね。

 それとディーオの服を引っ張っているのは精霊ちゃんで名前はカー助、なんだかんだでカラスに憑依したわ」

「珍しい物に憑依させたな、カラスって役に立つのか?」

「憑依させたくてさせたんじゃないわよ、成り行き。案外可愛い所もあるのよ」


  

 それまでディーオの服で遊んでいたカー助の動きが止まった。

 私に可愛い所もあるといわれて、カァカァと嬉しそうに鳴く。

 こんなにも役に立ってますけどーってオーラーを出しているのが見える、見えるんだけど……。



「役には……全然」

「そうか」


 私は正直な答えを言った。

 だって、カラスよ? カーと鳴くだけで手先が器用なわけでもない、掃除が出来るわけもない。

 クチバシは器用だけど、カラスに出来る事は大抵私にも出来る。

 目覚まし代わりになるかもしれないけど、ノエが居るし。

 生きてるカラスに憑依したので無駄飯も食べるしフンもする。


 一応その生きた動物に憑依した件も含めて、再度精霊の森へ行き、みーおうにも相談したけど小動物に憑依するのは結構あるらしく害はないと思うニャと言われた。

 何が問題があればクーリングオフをしようと思ったけど、大丈夫なら仕方が無い。


 あとは天寿を全うすれば精霊界へと戻ると教えて貰った。

 

 その点ナナのくまたんは、指が無いのに物を持って家事をする。

 仕組みはわからないけど凄い。

 実際に厨房を貸してみた所クッキーを焼いてくれた。

 あれは便利だ、掃除もしてくれると言うので、掃除をしないナナにはぴったりだろう。


 カー助は私の残念な気持ちが通じたのだろう、大きくカァーと鳴くと、開いている窓に向かって飛んでいった。



「さて、はじめるか」

「そうね」



 私もディーオも心配しないのは、契約した精霊ちゃんは一時的に主人の元を離れても戻ってくると知っているから。


 カー助夕飯までには戻ってくるのよ。


 私は渡された紙とペンを見る。

 筆記試験で簡単な計算と、これまた簡単なレシピの穴埋め問題だ。

 中和剤の作り方。錬金術石けんの作り方。


 木の中和剤:・木のぽよぽよ核・木炭・蒸留水

 水の中和剤:・水のぽよぽよ核・蒸留水

 錬金術石けん:・廃油・蒸留水・水の中和剤


 一通り書いた後に、ディーオへと返した。

 その場で採点すると、こんなもんだろうと呟く。


「ちょっと馬鹿にしてるわよね?」

「可も無く不可も無くって所だ。この『錬金術師として何をしたいか』って所が空白だな」

「ああ、そこ?」



 だって特に無いもの。

 何度も言うように、お金に困らなくて優雅に暮らせたらそれでいい。

 錬金術師も王から念押しされて続けただけだし……。


 ふと、気づいて私は指を数本折るように数える。

 転生してからそこそこの月日は立った。


「どうした?」

「私……何も作ってない!」


 ディーオは哀れみの目を私に向けてくる。

 小さく咳払いすると、テストの紙をウチポケットへとしまいこんだ。


「…………何も作るだけが錬金術師とは限らないと前に言った事がある。

 とりあえず、錬金術師は続ける気か?」

「え。まぁ一応は」


 他に稼げそうな事ないし。

 こう見えても、普通の学生よりは社会を知っている。


「か弱い女一人が生きていくには資格はあったほうが良いと思うし」

「例え戦争が起きても君だけは生き残りそうだけどな」

「はっ! いつの間に口に!?」

「ともあれ合格だ」

「はい?」

「試験は合格と言ったんだ、才能が無いとは言え、続けたい人間を最初の試験で落とすほどボクも鬼じゃない」


 若干馬鹿にされてる気がする。


「最初のって何よ最初のって」

「国を上げての資格だぞ。仮にどこぞの貴族が金を積んで卒業してみろ錬金術師の評判が下がる」

「どこぞってっ!」


 絶対私の事よね。文句を言おうとするとディーオが髪をかき上げて私の言葉をとめた。


「しかし、不本意(ふほんい)ながら君には功績がある。もっと魔物よけの香だ。

 作ったのはナナ君であるが、レシピは君の発案だ、どうした嬉しそうじゃないな」


 え、そりゃだって…………あれはゲームで見た知識なんだし。元はといえば未来のナナが思いつく物を私が奪った奴だ。

 そう手を叩いて褒められると罪悪感しかない。


「別に」


 教室の扉がノックされた。

 私もディーオもそちらをみると、以前お世話になった保険医の先生が扉を開けた。


「ディーオ先生。緊急な用件で」


 なんでしょうと、ディーオは保険医の先生へと近づいていった。

 話している声は小さくで聞こえないけど、亡くなったとか、大事な人とかが聞こえてくる。


 なるほど、大切な人が亡くなったとかなのね。誰の? もしかしてディーオのとか?

 でも、取り乱した様子もないから、多分違う人ね。

 ディーオが振り返り私を見てくる。


「悪いが君のおしゃべりに付き合うほど暇ではなくなった。テストは合格、あとは好きに帰りたまえ」

「ん。わかりましたー」


 誰も居なくなった教室で私が席を立つと、窓から黒い物体が飛んできた。

 カァーと無くカー助だ。


「さて、帰るわよ」


 カァカァ嬉しいのか肩に乗ると鳴く。

 うん、煩い。


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[一言] 『悪役令嬢に恋は難しい』 実写映画化未定!
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