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35 ナナと精霊ちゃんと私の精霊ちゃん

 後で貰うはずのお金をその場で貰った私は家へと着いた。

 証人になってくれたディーオに謝礼の話をしたら、国から貰っているからいらんと、断られた。


 別に金品を渡そうとしてるわけではなく、お昼ぐらい奢るわよと言っただけなのに、可愛くない奴だ。


 仕方が無いので帰る事にする。

 馬車を呼んで貰い、控え室で一人で待つ。


 ディーオはまだ用事があるとかで私一人だ…………別につまらなくとかそういうのは無い。

 そのまま帰宅すると、かわいいノエが出迎えてくれた。


「おかえりなさいっ!」

「ただいま」

「あの、だ、大丈夫でしたでしょうか」

「大丈夫の大丈夫よ。なんだったらお金払うつもりが貰ってきたし」



 私の答えを聞いて不思議な顔のノエに、紅茶とおやつを頼む。

 一通り三時前のおやつを堪能した後に、一連の事を説明した。


「さすが、おじょうさまですね!」

「何がさすががわから無いけど、ありがとう」

「王子様から、内緒にしてねって凄い秘密と思います!」


 

 なのかしらねぇ。


「あ、そうだ。ノエこのお金良かったら使って」


 私はテーブルに置いたままの袋を指差した。

 

「中には白金貨二十五枚が入っている、これだけあればノエの家も助かるでしょ」

「え?」


 ノエは数秒固まった後に泣きそうな顔になった。


「これはほどこしなんでしょうか…………ノエは、おじょうさまに雇って貰って凄すぎるお給金を貰っています…………家はその裕福ではないですけど、母からは何もしないでお金を貰うなと…………いえ貴族様にはむかうとかじゃなくて…………」


 あっ。私は慌ててノエに声をかけた。


「ち、ちがうのよ。恵んであげるとかそういうのじゃなくて。

 純粋にお世話になっているから、良かったら使ってほしいなって思っただけで。

 別にノエの家を馬鹿にしてるとかじゃなくてね。

 そ、そうよねこんな大金行き成り上げるわっても困るわよね」


 私の言いたい事が伝わったのか、ノエは慌てて謝ってきた。


「ごめんなさい。おじょうさまが親切にしてくださったのに。

 でも、ノエが貰っても大きすぎて困るお金なんです」

「じゃ、じゃあこの中から一枚。ボーナスとして上乗せ、それぐらいなら気持ちよく受け取ってくれる?」

「で、ですけど…………」


 

 普段からノエに感謝しているのと、メイド業務以外にも色々して貰っている事を言うとノエは一枚ならと受け取ってくれた。

 とても大事そうにポーチに入れるのをみると、こっちまで嬉しくなる。


 売った宝石はもうキャンセルは効かないだろうし、買い戻すとなると無理だし別に買い戻したい物でもない。

 元はパパや、過去に私にお近づきしたいって男共から貰った物だから思い入れも何も無いからいいんだけどさ。

 今なら美貌を売りにした職業の女性達の気持ちが少しだけわかるわね。

 

 ともあれ、時間はかかるけど日本円で一千万以上のお金が中に浮いた。

 どうするか、毎日美味しいものを食べて飲んで一生を暮らしたい。

 でも一千万いいえ、白金貨百枚程度じゃもって数年よね。


 土地を買う? うーん買った所で運用できないし王国に居る以上税金を納めないといけない。変な土地を買うと赤字。


 日本なら株! という手もあるけど。

 この世界株はあるのかしら。


 でも、株なんて日本でも買った事はない。


「さま、おじょうさまっ!」

「え、はいはい。何ノエ?」

「ナナさまがご来客に来ました」

「え? なんだろう通して」


 ノエは直ぐにナナを連れて来た。

 一例して部屋から出たので客間には二人っきりになった。

 ナナは大きな腰ぐらいのクマの人形を持っている、なんだろ自慢しに来たのかな。


「ずいぶんと可愛い人形ね」


 とりあえず褒めてみる。

 これでも前の世界ではぬいぐるみを集めて居た。とおもう。

 といっても、こんな大きいのではなくゲームセンターで取った奴で種類も系統もバラバラだ。


 褒められた事嬉しいのか、ノエは何度も頷いた。


「見てください。くまたんです!」

「くまたん? ああ、ぬいぐるみのなま…………えええええええっ!

 動いた、動いたわよっ!」


 くまたんと呼ばれたぬいぐるみが手を振ってきた。

 ナナの手から滑り落ちると、二本足でたってペコリと可愛くお辞儀する。


「可愛い…………ナナこれって」

「はいっ! 精霊ちゃんです。一番にエルンさんに見てもらいたくて急いで来ました」

「いいわね精霊ちゃん」

「エルンさんのは…………」

「ああ。あれまだ何もしてないわ窓の所に飾ってたわね」


 持ってくるわねと、ナナの居る部屋を出た。

 階段を上がり自分の寝室の扉をあける、窓の近くに光り輝く小瓶が見えた。

 中の液体の色は黄色から赤にかわって点滅していた。


「信号機みたいね」


 思わず声がでると、赤から青に点滅し始めた。

 意思表示なのか。


 ついでに部屋の空気も入れ替えたいと窓を開けた。

 心地よい初夏の風が部屋に入って…………。



 カァ。


 カァカァ。


「あ。カラス」



 一匹、いや一羽と言うんだっけカラスが私を見ていた。

 日本では忌み嫌われている鳥でも、こう転生した先で見ると思わず微笑む。

 それに、たまに居る白いカラスとかいうのは、あれで愛嬌があったりする。


「確か何でも食べるのよね。朝の残りでも上げようかしら」


 チッチッチッチッチッチっ!


 私は可愛く舌を鳴らす。

 可愛くというのが重要だ。カラスはカアと鳴いた後首をかしげる。


 もう一度カアと鳴くと大きく羽ばたき私の方へと飛んできた。


 開けた窓枠に綺麗に着地すると黒い瞳で私を見る。


「やっぱ頭いいのね。まってね今何か食べる物を……」


 …………私の目の前でカラスは精霊ちゃんの小瓶を一口で飲み込んだ。

 え? ちょ。

 私は直ぐに窓を閉めた。

 驚いたカラスは部屋から逃げようと飛び回る。


「は、吐き出せっこの馬鹿カラスっ!」


 近くにあった花瓶を手に取ると、天井付近で飛んでいるカラスに狙いを定める。

 一気にぶん投げた。


 寝室のあちこちに水をばら撒き、その花瓶は見事カラスに当たった。


 よし! 腕に力をいれるとその後が悲惨だった。 


 そのまま天井に押し付けられ花瓶は割れるし、カラスとともに床に破片が降ってくる。

 慌てて壁際に避難した所で、ノエが何事でしょうかっ!? と、部屋に入ってきた。


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― 新着の感想 ―
[一言] くま、クマ、熊…おっとこれ以上いけない。 流石ヒロイン、精霊ちゃんのボディも可愛らしい。 一方、我等が悪役令嬢さんはというと…… 信号機のよーなトリコロールカラーの精霊ちゃんとカラスがフュー…
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