表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/209

23 忘れていたパーティー

 豪華なソファーと磨かれたテーブル。

 私はその豪華なソファーへと体を横にして寝そべっている。

 場所は自宅の応接室。


 最近はここに居る事が多い。

 別に自宅なんだし寝室に篭ってもいいんだけど、そうするとノエの顔があまり見れない。

 それに篭っていると、何度もノエが様子を見に来る。


 今日もノエの入れてくれた紅茶とクッキーを食べながら借りてきた本を読んでいる。

 題名は『錬金術とは』『初級レシピの教え』『ゼロから作る錬金料理』『錬金術と武器』などなど。


「おじょうさま新しい紅茶とクッキーです」

「ありがと」


 どの本も似たような事しか書いていない。

 石鹸の作り方や、パンケーキの作り方、蒸留水の作り方など。


「こう、もっと上級のレシピが載った本ってないのかしらね、それともこの本を書いた人間って錬金術師として無能なのかしら、錬金術師って誰でもなれるのよね」

「え……」

「ん?」


 驚くノエの言葉に私が振り向くと、しまったという顔になっている。


「ノエ何か知ってるの?」

「い、いえ……」


 怪しい。


「ノエ何か……」


 カンカンカンカンカン。


 ドアノッカーの音だ。

 私が喋りだすと同時に、誰かの来訪を知らせる。

 ノエはどうしたらいいかキョロキョロする。


「ま、いいわ。行って来て」

「は、はいっ」


 小さな音を立てて玄関へと走っていく。

 そして戻ってくると慌てた顔で報告しに来た。


「お、おじょうさまっ!」

「誰だった? 新聞なら間に合ってるわよ」


 新聞というのは最近流行りだした物で、日本でいう新聞とはかなり違う。

 王都で起こった事やお得な情報を一枚の紙へまとめている奴だ。

 七日に一度ほど発行されている。


「いえ、あのカイン様がおむかえに来られています。ど、どうしましょう」

「え、なんで?」


 何の用事だろう、特に約束もない。

 とりあえず、通してというとノエはカインを連れてきた。

 赤毛の髪を整え何時もより緊張した顔で入ってくる。


「…………」

「…………何か喋りなさいよ!」

「……用意、出来てないのか?」


 用意、なんの用意だろう。

 特に採取の予定もないし、約束した覚えも……。

 あ……断ったけど城の昼食会?


「もしかして、城の昼食会の事? あれなら断ったよ」

「……何の話だ? この件で来た」


 カインは黙って私に一枚の招待状を見せる。

 どこかの家紋が入っていて、私も最近同じのを受け取った。


「あああああっ! リュートの奴っ あったわね……」


 そうだ、断り損ねた。

 というか、今の今まで存在を忘れてた、最初から行かないつもりだったし。


「いやでもなんで、カインが持ってるのよっ!」

「…………リュートの家の招待状は俺の家にも来る。後は父がエルンを迎えに行けと、その父がエルンは嫌がるだろうからしっかりエスコートしなさいと受けた」

「ああそう……」


 あの狸め……。

 私に誘いが来てたのを知っていて嘘の昼食会を誘ったわね。

 でも別に、私がリュートのホームパーティーに行くか行かないか、王様には関係ないと思うんだけど。

 うーん、うーん……。


「…………何か言ったか?」

「なにもよ?」


 ここで断ったら、カインの事だからありのまま言うでしょうね。


 エスコートしにいったけど、面倒だから断られたので帰って来たと王様に。

 そうなると、私の噂はどこからかもれて王族のエスコートを断った女として、悪評が増えるでしょうし。

 ああ、もうっ! 仕方がない、私は時計を見る。


「カイン、後何分?」

「…………移動込みで一時間半、移動は一時間という所だ」

「って事は三十分ね。ノエ着替えるから手伝ってくれる? カインは適当に待っていて、そのクッキーでも食べてて」

「はいっ!」


 ノエが大きく返事をして私の後ろについてきた。



 ◇◇◇



 ぴったり三十分かけて用意を終えた。

 黒ベースで派手すぎないハーフドレスに身を包む。


 客間で待っていたカインは私を見て驚いた顔をしている。

 孫にも衣装って所でしょうね。


「何?」

「…………綺麗だと思って」

「そりゃどうも、じゃっノエ留守番よろしくね。後誰にでもお世辞言うと勘違いされるわよ」

「はいっ、いってらっしゃいませ」

「…………俺は別に……」


 カインは何かもごもご言っているけど、良く聞こえない。

 待たせてある馬車に乗り込むと出発した。

 馬車の中は二人っきりだ。


「…………これを、もったほうがいい」


 円形の筒を私へと手渡した。

 見た事がある、ミニボムLV1で黒煙を撒き散らす爆弾だ。

 殺傷能力はないが、過去にこれで衣服と顔中を黒くされた。


「なにこれ」

「ミニボムLV1だ」

「知ってるわよ」

「…………君は大人びているが、女性だ。

 万が一の場合があるし、その……不意をついて逃げる用にと」

「ありがとう」

「っ」


 私は素直にお礼を言う。

 心配してくれるのは嬉しい、ただ女だからってのはどうかと思うが。

 日本と違い、そういうのは仕方がない。

 それに実際そうだから、反論してもね。


「顔が赤いわよ? 馬車酔いしたのなら止めてもらうけど」

「大丈夫だ」

「ならいいけど……」


 貴族の馬車というのはどうも遅い。

 揺れを最小限に抑えるためとは言えしょうがないんだろうけど、それでも揺れるのは揺れる。


「で、何のパーティーだっけ?」

「…………エレファント様の快気祝いをかねてのパーティーだ」

「リュートの母親よね、じゃぁ、挨拶聞いて直ぐ帰れるわね」

「………………」

「何よ、言いたい事あるならいってくれた方が助かるんだけど」

「…………少なからず交流会もかねてる……貴族のパーティーの出席は?」

「自慢じゃないけど無いわ!」


 あるのは、日本にいた時に知り合いに強制的に連れて行かれた婚活パーティーぐらいだ。

 似たようなもんでしょう。


「あ、あれ」


 私は馬車の中から外を見ていると、見知った人物を二人見かけた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ