196 ゲーム内のカジノってセーブ&ロードが基本なのよね
学園から帰り、久しぶりの自宅を見るとほっとする。
玄関を開け、だったいまー。と、言うとお腹の部分に衝撃が走った。
「ぐっふっ」
顔を下に向けると、ノエが抱きついていた。
「おかえりなさいませ。心配したんですっぐず」
立派な頭突きね。
思わず息が止まったわよ。
「あー……見舞いには来なくていいって伝えたもんね。一応安全を取って寝るだけだし風邪うつしても困るしって理由あったのよ?」
「はい、ナナさんから聞いていましたけど……心配で」
ノエの頭をなでなでとして家へと入る。
「ガルドは?」
「今日はお城です! エルンおじょうさまが退院なので休んだほうがいいと言ったんですけど……」
「別にいいわよ、ノエさえいれば」
「あわわわわ、す、すぐにお菓子ご用意します!」
ん? なぜか急いで走って行ったわね?
応接室にはいると、手紙や書類が溜まっていた。
解りやすく、ガルドの字で重要と非重要と紙と共に仕分けされていた。
確認すると、片方には貴族の見舞いや縁談の手紙……借金の申し込みに、恨みの手紙。
もう片方には数少ない仕事の結果が書かれていた。
仕事というのは、もっと魔よけのお香の売り上げと売った個数などを書いた紙。
最近定期的に売れており金貨二枚ほどが私の手元に入ってくる…………すくなっ。
材料費や職人や販売ルートや全部丸投げしてるから仕方が無い。
自分でやるのも面倒だし、ミーティアに任せておけばいいわ。
縁談と恨みと借金の申し込みは、何もみないで暖炉にすてる。
おーよく燃える事。
そもそも、悪役令嬢時代ですら縁談の話こなかったのに、ちょーっと大人しくなったらこれだもん。
暖炉に当りながら願望を呟く。
「最近気づいたんだけど、楽して儲けるってつらいわね。部下を沢山いないとダメだし……宝くじで一獲千金ほしいわ」
失礼します。と、ノエが入ってきて紅茶とシフォンケーキを持ってきた。
「ね、ノエもそうおもうわよね?」
「ええっと……宝くじとはなんでしょう?」
ノエは頭がいいから私の意見にあまり反対しない。
「国が売るクジね。そうねぇ一枚銅貨三枚ぐらいで売って当れば白金貨百枚とかのシステム」
「えええっ! 国が破綻しないんですかっ!?」
「しないわね、その代わりクジを数億枚売り出すの、そうすると売り上げが白金貨千枚ぐらいいくのかな」
「あの、ノエ難しい事はよく解らないんですけど。それって詐欺では……?」
やっぱり? 一度カミュラーヌ家主体で作ったらどうかとパパに相談したけど、いい返事はもらえなかった。
厳選な抽選、券の複製防止、お金の管理、売り場の場所、それに関わる人件費などどうするのだ? とパパと相談し合ってあきらめたのだ。
ただ、案は素晴らしいといって王に掛け合ってみるとパパが言っていた。
カミュラーヌ家は責任を取れないなら王国に分投げて甘い汁だけ吸おうという話だ。
汚い、さすが汚いわパパ。
というか、その後発表されないというのは、ダメだったんでしょうね。
王国が財政で困ってるって話も聞かないし。
「ええっと、ノエは詳しくないんですけど……ガルドさんは貴族が遊ぶ場所知ってるとおもいます」
「…………男女があれこれする奴じゃないわよね?」
「ノ、ノエそんなの知らないですっ!」
どうみても知ってる態度。
まだまだ子供と思っていたノエも成長して、おねーさんしんみりしちゃう。
でも、こっちの世界なら知っていて当然というか当然よね。
「あのっお金をかけれるとか――――きゃ」
ドン。
「あっごめん」
気づけばテーブルを叩いていた。
ノエがおびえた態度で私を見ている。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんな――」
「ち、ちがうのよーエルンさん怒ってないわよー」
精一杯の笑顔でノエの肩を優しく掴む。
それよそれ!
ギャンブル。ザ、お金儲け!
左団扇計画にもってこいじゃないの。
そういわれると確かにゲームでもあった。
子供だましみたいなミニゲームが、報酬が金貨一枚と消費時間が一日使うのでセーブ&ロード使うまでも無いという、しょうもない、オマケのようなシステムが。
まぁ仲間の新密度が上げるためにあるんだけど。
その場所がいけるようになる頃には、遠くに冒険したほうが新密度があがるという、昔のゲームあるある。なシステム。
その点!
私には別に新密度上げたいキャラもいないし。
どんな場所かは興味がある、ゲームと同じ金貨一枚程度しか儲からない場所だったら、その次は行かなければいいんだし。
作中のショートショート
ニ月某日
「エルン殿! エルン殿! 奇遇ですな外で会うとはでござるよ」
「何…………?」
「眉間にシワよせて酷いでござる、拙者まだ何も言っていないでござるよ」
「ろくな事ないからそうなるのよ……」
「拙者エルン殿に善意で超善意で、珈琲豆を持ってきたでござるよ。実家から是非エルン殿にと手紙もついているででござる」
「コタロウからじゃなくて、コタロウの実家からなら安心ね。ありがとって、近いんだから珈琲豆投げてよこさないでよ!」
「…………ちょっと転びそうになっただけでござるよ? 投げたように見えたかもしれないでござるか、転んだだけでござるよっ!」
「わかったわよ、しつこく言わなくても」
「…………しかしやはり効果ないでござるね。なんでもないでござるよ?」
「ブツブツキモイわよ……でも、ありがとう楽しみにして飲むわ」
◇◇◇
「と、いうわけでコレが新しい珈琲豆、ノエ。保管お願いね」
「はい! お任せください」
「さてと……早いもので2月ね。…………2月? まって! バレンタインの前の行事といえば! 節分っ! 豆、ぶつける、コタロウの呟き…………あの男っ! 私が鬼だって言いたかったのかっ!」
許すまじよっ!




