184 レストランの大騒動
オシャレなレストランへと入る。
白いテーブルが沢山並んであり、比較的奥の席へと案内された。
連れの二人が席にすわったので私も座る。
「ぶひひ、不機嫌な顔はもうやめるでござるよ。店員さんも怖がってるでござるよ」
「誰のせいで不機嫌とおもってるのよ!」
「そう怒るな……別に一人ぐらい増えても構わない」
「でしょうね!」
ディーオと二人で城をでた後に、背後からデートでござるか? と声がしたからだ。
思わず振り向くと、どぞこの保釈金を出してあげた男が元気そうに声をかけて来たからだ。
私もディーオもデートではない! と否定した所。
出所祝いがほしいでござる。ちらちらって言ってきたので一人でやってなさい。
と、言ったんだけど…………普通に付いて来た。
「ほんっとう、とけ込むの旨いわよね」
「拙者でござるか? 人見知りでござるよ」
「どの口が言うのよ……」
ふう……まぁいいわ。
私もそんなに鬼じゃないし、デートってわけでもないんだしー。
一人ぐらい増えてもね。
適当にお勧めを三人前お願い。と店員さんに頼み水を飲む。
昼時も過ぎた辺りなのでお店は比較的空いてる、カップルや女性同士も見えて若い客層が多いという感じだ。
運ばれてきた料理をホークで突くと、一組のカップルが入ってきたのが見えた。
普通の可愛らしい女性で、緊張した顔の男性が後ろをついている。
「ぶほ」
「ちょっと、汚いわよ。なに?」
「あの子は花屋の看板娘でござる! 後ろにいるのは…………オトウトでござるかね?」
「…………誰か見ても彼氏でしょ。もう少し現実を見たほうがいいわよ」
「ゴホン! あまり他人を詮索するような事は控えたほうがいい」
ディーオの忠告もあって私は視線をそらす。
出された、お肉を上品に切り分け口に運ぶ。うん、思っていたよりも美味しい。
ってか、意外なのは変態……もといコタロウも上品に料理食べれるのよね。
貴族出し当たり前か……。
なんとなく、出入り口を見ながら食べていると、帽子を深く被った老人が入ってきた。
店員から帽子を……といわれて首を振って何か店員に渡した。
直ぐに違う人間が飛んできて老人は私達に見えない場所へと座った。
「…………ねぇディーオ」
「ああ、ガール補佐官だな」
「どどどどうしよう、挨拶に行ったほうが? アレよね」
アレとはもちろんホレ薬の事だ。
言葉を濁したのはコタロウがいるから、コタロウに知られると拙者も欲しいでござる! と騒ぐに違いない。
ディーオも察してくれて、惚れ薬と名前は出さないでくれている。
「そうであれば、挨拶に行かないほうがいいだろう。
お忍びでの事に見える。ボクら出来るのはそっと店を出たほうがいいだろう。しかし……」
「気づかれずに外には出れないわよね」
「仕方が無い少し息を潜めるしかないな」
私とディーオの言葉を聞いてコタロウが不思議そうな顔をしている。
「裏口から出してもらえば解決するでござるよ?」
「「…………」」
そんなの解ってるって言うの! 私もディーオもガールがどんな相手に惚れ薬を飲ませたいか気になってるって話だ。
わかる? わかったら少しは空気読みなさいよ!
もっとも、ディーオに関しては私の勝手な考えだけど。
と、心の中で言うとディーオが静かに口を開いた。
「いや、突然裏口から出る人間がいると注目を浴びるだろう。何かの騒ぎでもあれば別ではあるが」
「だから、静かに出して貰えばでござ……うう、にらまれたでござるよ。ひえ、こっちもでござる」
「「にらんで」ない」わよ」
にしても、あのスケベ補佐官どんな女性を落としたいのかしら。
出入り口を張るしかないわね。
「おや、花屋の女の子。妙にソワソワしてるでござるね」
「そりゃ、デートならソワソワするでしょ。それよりさっきから男しか入ってこないけど。補佐官ってそっちのけあるわけ?」
「ボクに振るな……しかし、静かに食事にしに来たのにキミといるといつもこうだ……」
「やだ、私が悪いって言うの?」
「エルン殿静かにでござるよ」
イラ。
なぜに私がコタロウに注意をされなければ……そもそも花屋の看板娘を見たって彼氏いるんでしょ?
もしかして、コタロウってネトラレしたいタイプなのかしら?
よく見ると可愛いわね、あら彼氏が床に落ちたハンカチを拾おうとしてる間に香水の小瓶を開けて、相手の水に入れたわ、香水を飲ませるってサイコパ……。
「いや、アレって惚れ薬じゃないの!?」
「なななんとでござる!! あの、飲ませればモテモテになると言う伝説のアイテムでござるかっ!」
しまった! 思わず声が出た。
惚れ薬という言葉に反応してコタロウが立ち上がった。
店内の注目が私達の席に集まる。
「ディー――――いないっ!」
ディーオが座っていた場所は既にいなく、お金だけ置いてあった。
首を回すと裏口から出て行く後姿だけが見え消えていった。
パシャっと水の音が聞こえると、花屋の女性は料理事、床に捨てたのが見えた。
「うおおおおお、飲めばモテキ到来でござる!」
コタロウは床に落ちた惚れ薬入りの液体や食べ物をペロペロとなめだす。
汚い、というか周りのお客含めドン引きである。
直ぐに悲鳴に変わる。
彼氏は花屋の女性を庇うようにコタロウから守って…………。
「エルン・カミュラーヌ! どういう事が説明してもらおうかっ!」
どこぞの補佐官の声が私にかけられる……。
振り向きたくないけど振り向くしかない。
「これは奇遇ですね、ガール補佐官さま」
「今更おべっかを使って、この騒ぎをどうするつもりだ!」
「この騒ぎって……」
◇◇◇
「迎えに来たぞ」
そういうのは途中で逃げたディーオだ。
私は、お城にある貴賓室で顔を上げた。
「遅かったじゃないの」
「無理を言うな、店への賠償と王との密談。君の処罰を無しにするなど大変だったんだ」
「でもありがとう」
ディーオはただ逃げたのではなくて、あの後に起きる混乱を抑えるのに城に戻ってた。
おかけでガール補佐官から私に処罰を受ける事も無かったし、兵士に囲まれて別々に城へと移動した。
「しっかし、王からガール補佐官に渡した惚れ薬が花屋の娘に行くとわね」
「そうだな……あの男性も惚れ薬に頼らなくても彼女の事が好きだ! と公言していたし、もう問題はないだろう」
「そうね、思わず周りから拍手起きたし」
こうして、惚れ薬にまつわる仕事は一通り終わった事となる。
迷惑料として私はお店に、白金貨三枚を包む羽目になった。
「おかしい、仕事をしてマイナスだ……」
「さすがに可愛そうだな、ブルックスの店も今日からと聞いた、そこでよければ奢ろう」
「え、本当? ではありがたく」
「よう、保釈されたんじゃなかったのか?」
「聞いてくれでござるよ牢番殿! 酷いでござるよ! 不純物と混ざって効果が無いとか聞いてないでござるよ!」
「まぁその、よくわからんが頑張れ」




