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183 納品と報酬と悪魔の罠

 呼んでもらった馬車を降りて城前へとつく。

 私が先に下りて、ディーオが降りると城の門兵がこちらを見ている。


 ああいう人ってこっちが用事あるのに、絶対に近寄っても来ないし何も聞いてこないのよね。

 当たり前と言えば当たり前なんだけど態度が気に食わない。



「――だいたい、ああやって笑顔も見せないってなんなのよ。怖いわよ。あの人なんて鬼みたいじゃない」

「警備だからな、声に出てるぞ」

「はっ!」



 鬼みたいな門兵は突然に笑顔になりだす。

 やば、聞こえたのよね。

 あとそれがまた怖い。あれだったら表情がないほうがまだいい。


 詰め所からいつもの兵士が慌てて出てきた、鬼のような門兵に何か言うと鬼の表情が消えた。

 そして私達の所に走ってくる。



「これはこれは、お早いお付で。地下の牢に――」

「まった!」

「はい?」

「嫌な予感がするから聞かないわ……無理に聞かなくても大丈夫よねその話」

「まぁ……前回も本人が何とかしてるので大丈夫とは思いますが」

「ええっと、ディーオお願い」



 どこかの太った覗き魔の話は聞きたくない。

 あの後、その覗き魔から、なんで助けに来なかったでござるか??? と手紙が来たのを思い出す。

 だったら、最初から知らないふりをすればいい。



「よし入れるぞ」

「え? もう話ついたの?」

「考え事もほどほどにしたほうがいいだろう。王との個人的な面会の話は伝えた。

 後は城内の控え室で待つだけだ」



 ほえー前回は城の外での待機だったのに、今回はいきなり中なのね。

 なんだろ、ちょっと負けた感じがする。


 城門を抜けてテクテクとディーオの後を付いて行く、城の中からは別な兵士に案内されて何度か来た貴賓室? っぽい所に連れて行かれた。

 適当にお過ごしくださいと、部屋を見渡すと高そうなワインとグラスが置いてある。

 ワインを二つのグラスにいれて、片方をディーオ。

 残った片方は壁に体重をかけて私が飲む。



「本来こうなのよね」

「何がだ?」

「いや、こないだナナやミーナと城の話になったんだけど。

 あの二人って顔パスで入れるらしいのよ」

「ナナ君は王から……もとい、学長室で校長という立場の時にフリーパス券を与えたと聞いたな……それとアレは」



 腕を組んで言葉を止めだす。

 そこで止めると気になるわよ。



「アレってミーナの事でしょ。ミーナもそういう特権あるの?」

「いや、アレはフリーパス券と言うのを発行前から、何所からか入ってくるとボクが学生の頃に校長から相談を受けた。なんでも謁見中でも、就寝中でも来るから何とかしてくれてって」



 小さくクックックと笑い出す。



「ほう、エルンちゃんもフリーパス券ほしかったかのう?」

「ひいいいいいいい」



 突然耳元で声がしたから驚いた。

 横を向くと王様が長い髭を手で触りながら喋ってきている。



「いらなっ要りません! はい、要らないです!」

「ふう、相変わらずエルンちゃんとは打ち解けないのう……」

「それより、王よどこから来るんだ……」



 グラン王……ええっと、正式には……なんだっけ。



「ヒュンケル・グランじゃ」



 ひいいい、また心の中を読まれた!



「読んでおらんよ? そうかなって思っただけじゃよふぉっふぉ。そしてディーオ君。

 ワシはそこから入ってきたのじゃ、二人が驚くと思ってのう」



 まっすぐに暖炉を指差す、つるしたロープがチラチラと見えた。

 ディーオが呆れた声で王へと喋りかけてる。



「はぁ……下で火を燃やしていたらどうする気だ……」

「そうなれば、二人とも王殺しじゃのう」

「ひいいい」

「何、そうなったらヘルン新国王に直談判するとしよう」



 冗談の通じない奴じゃのう。と、王は言うと私に向き直ってくる。



「さて……呼んだと言うのはアレかの? そしてディーオ君がここに要る事がちょっとわからないんじゃが」

「ええっと、その……ディーオ説明お願い、お願いします」



 君にしては低姿勢だな。と、今必要ない事を言ってディーオは着いてきた理由を王へと説明しだす。

 王は全部を聞いた後に、ふぉっふぉっふぉと笑うけど眼光が鋭く見えて怖い。

 もしかして、秘密の依頼で秘密を喋ったら死刑とか?



「しっけい」

「あわわわわわ、しっしけい!」

「…………落ち着けエルン君。死刑じゃなくて失敬だ」

「おかしいのう、冗談で場が和むとおもったのじゃが」



 笑えない冗談はやめて欲しい。

 ともあれ無事納品して、要らないと断ったけど白金貨を五枚ほどもらった。

 ディーオに一枚渡そうとしたら、着いてきただけだ。と断られた。



「じゃ、お二人とも気をつけてのうー、余は帰るのじゃ」



 王は一言いうとまた暖炉の中を通って上へと上がっていった。

 本当ちょっと火をつけてみたいけど、我慢よ。

 死刑にはなりたくない。



「さて……用が済んだのなら帰るべきだな」

「それはいいんだけど……奢るわよ。報酬も貰ったし。現金じゃなきゃいいんでしょ?」

「ふむ……では、そうさせてもらおうか。ナナ君達にも」

「わかってるわよ、元から報酬は払ってるけど奢るわ」



 私とディーオの意見がまとまると、兵士の一人が私に近づいてくる。



「何?」

「ええっとですね、地下牢にいる人間の釈放に白金貨三枚程……」

「ごめん、急いでるから!」



 兵士は私の腕を握って離さない。

 う、力負けする。

 そんな変態の知り合いには関わりたくないっちゅうの。どうせ今回も自力で何とかするんだろうし。

 腕を掴んでいる兵士は必死に叫んでくる。



「いいえ! 王から今のエルン嬢様なら白金貨持ってるから取り立てるようにと命令を受けてまして」

「はぁ!? なにそれ、手持ちが減るじゃない!」



 私の意見に、隣で加勢も手助けもしないディーオが、ふむ。と言いながら喋ってきた。



「元から計算外の金だ払ってやればいいじゃないか」

「ちょ、それとこれは違う。あっちょっとディーオ先に帰るとか卑怯よ」

「ボクの用件は終わったからな」



 ◇◇◇



 結局白金貨三枚を払う事になった。

 すごい損した気分である。


 城の外にとぼとぼ歩くとディーオが立っていた。



「先に帰ったんじゃないのー?」

「そう不機嫌になるな、ボクが奢ろう」

「は? なんで?」

「錬金術師として依頼をこなせるようになったんだ」

「アイテムは他人任せなのに?」



 それでもだ。とディーオは言うと先に歩き出す。

 まぁ奢るつもりだったのはこっちだし、じゃぁ軽くワイン代だけ貰おうかしら。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] えっリュートが新国王? 後継はヘルン王子じゃなかったっけ? [一言] エルンが顔パスにならない理由? そりゃあ衝動的にとは言え、王様に向かってメガボム投げつける危険人物だしね! 致し方…
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