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18 レアモンゲットDAZE!

 ノエの手を引っ張り私は横へ飛ぶ。

 赤から青へ青から緑色などの変色する半透明な、巨大ぽよぽよ。


 レアモンスターだ。

 ゲームの中でも同じ場所で採取をしていると、極まれにあわられる異種のモンスター。

 当然初心者の頃は『まけちゃった』で帰るんだけど……。


 私はソイツに、膝から下が押しつぶされた。

 重みは無く生ぬるいお湯に足を突っ込んだ感じだ。

 どうやら、ゲーム見たくは帰れないらしい。


「足を抜けっ!」


 叫ぶ声と共に、カインが剣を抜いて、その特殊なぽよぽよ。虹ぽよぽよへと斬り付けた。

 ぱっくりと割れるも、体が大きくてコアの部分まで刃が届いていない。


 裂けたからだは一瞬で戻り刃の部分が飲み込まれる、そのまま刃の部分があり得ない方向に曲がっていく。

 粘つく虹ぽよぽよから足を無理やり引き抜く、ノエを抱いたまま少し離れた。


 カインは虹ぽよぽよから距離をとると私のほうへ顔を向けた。


「ダメだ。逃げるぞ」

「え、う、うん」


 私は立ち上がろうとして転ぶ。

 飲まれていた部分が血だらけに成っており足があり得ない方向へ曲がっている。

 素人目でもわかる、折れてる。


「おおお、おじょうさまっ!!」


 助けたノエが私の体を引っ張るけど、腕だけ引っ張られて腕のほうが痛い。

 カインの刺した剣は、虹ぽよぽよの体内で溶かされていくのが見える。


 虹ぽよぽよはカインのほうではなく、ゆっくりであるが私達のほうへ迫ってきてる。

 あ、やばいかもこれ。


「エルンっ! 顔をふせろおおおおおおおおおおっっ」


 ちょっとだけ懐かしい声が聞こえた。

 私は渾身の力でノエを引っ張ると、その上へと覆いかぶさる。

 顔を伏せてもわかる、私の周りでいくつかの爆発が起きていた。


 ボン。


 ボン。


 ボン。


「手持ちは全部使いました!」

「わかった、カインっ」

「了解した」


 可愛らしい声も一緒に聞こえる。

 うーん、あまり聞きたくない声。嫌いってわけじゃないけど……むしろ好感度のほうはある。

 でも、そのあの子せいで不幸になる可能性が高いとなると、複雑な気分だ。


「もう大丈夫だエルン」

「エルンさん大丈夫ですかっ!」


 上げたくないけど顔を上げる。


「久しぶりね。リュート……それにナナ。なんでここに……」

「東の森での採取でナナの護衛だ」

「なるほど、悪かったわねデートのじゃまして」

「ち、ちちちがいますっ!」


 慌てるのはナナだ。

 本当、憎たらしいほど可愛い顔よねぇ。苦手意識なのは前の記憶もあるからかしら。


「そういえばアレはっと」


 振り返ると、巨大な虹ぽよぽよの核に剣を刺しているカインが見えた。

 核さえ破壊すれば周りは液体に戻るのね。

 地面があちこち焼けているのはナナのボムLV2などかな。

 リュートにしては珍しく苛立った声が聞こえる。


「そんな事を言ってる場合じゃないっ! それにしても危なかった、あんな大きなぽよぽよは初めてみた」

「エルンさん、直ぐに怪我の手当をしないと」

「あ、そうね。ノエ痛い所はない?」


 状況についてこれないノエが周りをみる。

 私の足をみると『おじょうさまの足が足がっ!』と泣き出した。


「やーねーついてるわよ……ちょっと曲がって怪我してるだけで、痛みもないし。

 少し力が入らなくて立てないだけよ」



 私が冷静なのは、周りが騒いでるからだ。痛みはないのは虹ぽよぽよの麻痺毒かな?

 リュートはナナに向き直る。


「ナナ、傷薬は?」

「リュートさんさっきの奴で全部です」

「く……俺達のはここに来る前に使ってしまった。エルン、悪いが君の持っている薬を出してくれないか?」

「え? あー……ごめん、私も無い」


 別にさっき全部使ったとか、余計な事は言わない。

 リュートは痛いかもしれないが、このままは危険だと曲がった足を真っ直ぐにした。

 ごりっと音がすると見た目だけは真っ直ぐになる、痛みはなかったけど気持ち悪い感触だけのこる。

 次に私の視界が突然高くなった。


「うおっ」


 私ながら可愛げの無い悲鳴だこと。

 顔をあげるとリュートの顔が近い、いやーこうみるとやっぱいい顔してるわよね。

 これじゃ私騙されて、ころっと殺されるわ。


「街まで運ぶ」

「え、いやいいわよ」

「いいってどうやって帰るつもりだ」

「オレが運ぶ」


 そういうのはいつの間にか近くに居るカイン。

 真っ直ぐにリュートを見ている。


「カインか……いや戦いで疲れているだろう俺が運ぶ」

「護衛で雇われたのはこっちだ……」

「護衛だったら役目を果たせ、怪我をさせてどうする、彼女の足は折れているんだぞ」

「運ばせてくれ……責任は取る」

「まったまった、ほら、カインも頑張ったのよ」



 おいおい、リュート。相手は第二王子よ、そんなポンポン怒鳴ったら後が……。

 あれ?


「リュートとカインって知り合いなの?」

「言ってなかったっけ、同じ騎士科」


 そうなのか、うーんでもカインの正体まで気づいているかは謎よね。

 それまで黙っていたナナが大きく手を上げる。


「つまりは、エルンさんを運ぶのに喧嘩してるんですよね?」

「喧嘩ってわけじゃ……」

「だったら、私とノエちゃんと運びます!」

「ノエですかっ!? おじょうさまのお役に立てるなら何でもしますっ」


 いや、どうみても無理でしょ。

 私より小さい身長が二人揃ってどう運ぶのだ。

 あれか、地面を転がして運ぶのか?

 

「ふっふっふ、疑ってますねエルンさん。アレをみてください!」


 ナナは自信満々で宣言した。


 ◇◇◇


 なるほどね。

 ナナとノエに運ばれている。

 仕組みはいたって簡単。

 ノエが持ってきた布、私はそこに横になり左右をナナとノエが持ち運ぶ。

 私はハンモックにつられる感じで移動しているのだ。

 前方はリュートで、最後はカインが担当している。そのカインの背中には虹ぽよぽよの核が入ったカゴを背負って貰っている。


「に、してもすごいです、超レアな魔物ですよ」

「さっきのぽよぽよ?」

「はいっ! もしかしたら何か表彰されるかもですね」

「私一人じゃ死んでいたし、ないない。

 所で東の森では何かいい物見つかった?」

「万年キノコと――――」


 はーやっぱ、ナナは凄い子ね。

 確実に錬金術師としての腕を上げている。

 それに比べて私は、うーん……。


 ナナやノエと話している間に街を囲う塀が見えて来た。

 黙っていたけど、さっきから足が凄い痛い。

 痛みを麻痺させる毒が抜けたのだろう、採取一つで大変な思いをするだなんて……。

 

 ああ、あと。なぜ学園がボム系アイテムを買い取るのがちょっとだけわかった。

 


 門兵が私たちに気づき何事かと走ってきた。

 今日の日記は分厚くなりそうね。

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