165 エルンさん個人依頼を受ける
私と国王は正座をして下を向いている。
「いいですかっ! 本来ならば死刑、いや一族死刑で領地没収が当たり前だ!」
私の隣で正座している国王が、小さくしゃべる。
「だから、判っておる。ガール補佐官もそんな怒る出ない」
「王よ! 王は正座などする必要はない。私は王にそのような事をさせたいのではない!」
城での大爆発。
ちょーーーーーーーーっとだけ、我を忘れた私が投げちゃったメガボムはカインが素早く床から飛ばし、ガルドがキャッチして窓から捨てた。
そして、想像以上の大爆発が外で起きると城中が大パニックになり、城の兵を引き連れたガール補佐官が部屋に乗り込んできたのだ。
そこからお説教が始まった。
「頭はげのくせに」
「そこ! 何が言ったか?」
「いいえ、大変もうしわありません。偶然護身用のメガボムを落とした私が悪いのです。ガール補佐官様に大変申し訳ない事をしました」
「…………普段から大人しくしていればいい者を」
王様がどっこいしょっと言って正座から先に立ち上がった。
ずるい。
「まぁまぁ、余もこうして生きておる。カインも生きておるし、何かあればヘルンが継ぐだろう」
「王よ! そういう問題では……」
「ふむーでは、王の権限で何も無い。こういえばいいかのう?」
「くっ……王よ……いつもそれだ」
ざまあみろー。ガール補佐官がめっちゃ悔しそうな顔してる。
うわ、こっちむいた。
「お前! いま舌を出してなかったか?」
「まったく持って……自らの行いを反省している所です」
「この女狐め」
王様がごほんと咳払いをする。
「所でガール補佐官よ」
「なんでしょうか?」
「例の物のメドがつきそうだ。遠い伝手から返事が来てのう」
「ぶっは……な、なにもここで言う事では、で。では……」
「うむうむ、何時も世話になっている礼じゃ。それで何とか気持ちを落ちつかせて欲しいのう」
お、ガール補佐官の顔がまんざらでもない顔してるわね。
それと、急に落ちつきがなくなったし。
「べ、別に怒っているわけじゃ。判っていただければいいんです。
では、警備の時間なので。おっと、ガルド王子。いやガルド講師よ、強き者がわが国で剣を教える考えが決まって嬉しい。ぜひ国の助けになってくれ」
ガルドが小さく返事をすると、ガール補佐官は兵士とともに帰っていった。
「ふう……さて、帰ろうか」
「ふぉっふぉっふぉ。さてエルンちゃん依頼をたのもうかのう」
「うっ」
かばって貰ってまで依頼は断りにくいわね……一応聞いてみますか。
「ええっと何をでしょう」
「ほれ薬を作ってほしいのじゃ」
「え、やだ」
ほれ薬、名前からしてわかる禁断のアイテムで、その作り方は学園の地下図書館の奥にあると、ゲームでの話。
効果は一日しかもたないアイテムなのに、ものすごい高価で売れる。
そのために一回しか作れないし売れないという奴だ。
「ふぉっふぉっふぉ、ではガール補佐官にそう伝えておこうかのう。
いやー残念がるのう、もしかしたら断った錬金術師を私怨で殺すかも知れないのう。
エルンちゃん、気をつけて帰りなさい」
「…………やーだーそんな依頼なんですか? って言ったんですけど」
「カイン、第四部屋の用意をフランシスに用意をするように、あとは自主訓練に」
カインは小さく頷くと部屋を出て行った。
また知らない名前が出た。
「ふぉっふぉっふぉ、フランシスというのはカインの元教育係りのメイドでのう、今は西館のメイド長をしておる」
「へぇ」
私が王様と話していると、ノックとともに長身のメイドさんが入ってくる。
フランシスと申しますと頭を下げてきた。優雅に礼が終わるとあまり表情の無い顔を向けてくる。
でも、その顔がすごく綺麗……氷の微笑でもいうのかな、同姓の私でも一瞬目を奪われた。
「第四部屋が用意できました」
「ふぉっふぉっふぉ。ではこちらのお客を連れて行っておくれ」
「はっ」
お客様こちらへどうぞ。と、案内される。
私が前へあるき、ノエとガルドがついて来る。
ノエはフランシスのほうを見ては目を輝かせていた。
「ノエお嬢様どうかなされましたか?」
「ふえっ、お、お、お、おじょうさま!? ノエがですかっ!?」
「はい」
「えっとえと、あのメイド長さんときいて、かっこよくてきれいで……あの、あのノエもエルンお嬢様のメイドなんですけど、あのその、お仕事に興味あるというかですね」
あらあら。ノエがてんぱってるわね。
「ええっと……フランシスさん。時間ある時にノエに仕事を見せて欲しいんだけど……あっもちろんカインに許可を取ってからになるけど」
「カイン様の許可は要らないですね。私のほうは何時でも大丈夫です。しかし、後日となると城にそれだけの用事で入るのは難しいと思います」
「なるほど……じゃっ今お願いできる?」
「そうですね、ノエお嬢様つたないメイドですが、ご参考になれば」
「ひゃ、ひゃいお願いします!」
ノエが小さく頭をさげる。
その後ろでガルドがポリポリと頭をかき始める。
なるほど、ノエの事が心配なんだろう。よし、ガルドについて行ってもらいましょう。
「んじゃ、ガルド。ノエと一緒にメイドの心を学んできて」
「…………断る。護衛であれば行こう」
「んじゃそれで」
やけにあっさり引き下がったわね。
私はメイド長のフランシスさんに連れられて小部屋についた。
王の威厳などなさそうになった服装の王がやっほーと手を振っている。
入りたくないけど入る。
フランシスさんとノエ、ガルドは部屋を後にした。
しまったあああああああ、これじゃ私と王様の二人っきりじゃないの。
「ふぉっふぉっふぉ、二人っきりじゃのう。安心してほしいのう、変な事するわけじゃない。じいちゃん悲しい。ガルド講師はワシとエルン君の内密の話と思って気を使ってくれたしのう」
あ、だからあっさり離れたのか。
「えーっと仕事の依頼とか、でもあの、王様……それとも校長と呼べばいいのかわかりませんが。私の錬金術師の腕って無いですわよ」
なるべく丁寧に話しかける。
自慢のひげをもっさもさと触ってふむふむと頷いていく。
「ナナ君も、ディーオ君にも頼みにくい話だからのう
「たしかに。ナナは凄い悩みそうで、ディーオは反対しそう。一応確認しますけど……その用途は?」
本来は聞いてはいけない案件なんだけど、万が一私に使われても困る。
「ふぉっふぉっふぉ、ガール補佐官がのう、年甲斐もなく恋をしてるらしいのだ」
「ぶっはっ頭がはげて性格も悪いのに」
「エルンちゃん……」
「し、失礼しました」
「相手は花屋の娘でのう、その年なんと二十二歳」
ふむふむふむ、犯罪! どうみてもガール補佐官って六十は超えてるとおもう。
「じゃぁその女性に使う気……一瞬でも俺様に惚れろとか?」
「それがのう、その女性がガール補佐官に相談をしたのじゃ、なんでも好きな男性がいるらしくてな、中々告白が出来ない。
そこで城勤めなのに、よく花を買いに来ている常連のガール補佐官に、何かきっかけがあれば、とじゃ」
「えええええええ、それじゃ。自分はその花屋の娘が好きって言ってない?」
「言ってないのじゃ」
はあああああ、ただのキ――――頭が硬い爺さんかと思ったら、ちゃんと場はわきまえてるし、好きな子の恋が成就するように動いていたのね。
しかも、錬金術師が嫌いだから直接ディーオとかに相談する事も出来なかったらしい。
それで内密に王に相談をしていたと。
聞き終わった後、思わず拍手した。
「で、どうかの?」
「できる限りするわよ……じゃなくて出来る限りお受けします」
「普通に話してくれないのう……かなぴい」
ぴいじゃないわよ。




