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158 二人は出会った

 眠い……あくびをしながらネグリジェから着替える。

 ええっと、おなか減った。

 ベッドから這い出ると寒さで身が縮む。

 応接間に行って早く火をつけないと死ぬ。


 階段を下りて応接間の扉を開くと暖かい空気が私を襲った。



「はぁ暖かくて幸せ……変たっ。ごほん、ディーオおはよう」

「君は今変態って言おうとしたな! ボクだって好きでこの格好をだな」

「朝からうるさいっ! 気のせいよ」



 いやだって、応接間あけたらガウンを着た男性が暖炉前にいるじゃない?

 誰だって変態と思うじゃない。

 男性の生足とかみえちゃってるけど、綺麗なものじゃないわね。



「それよりも、朝食よ! 顔洗った? 歯磨いた?」

「一応いうがボクのほうが年上だぞ」



 食堂に用意されている保存食を取りに行く。

 ディーオも動こうしたけど、応接間にいてもらった、せめてもの罪滅ぼしだ。

 ソファーに向い合わせに座って食事と暖を取る。



「さすがノエね、暖めるだけでおいしい。所で食休めしたら服見てくるわよ」

「おそらく店は開いて無いとは思うが」

「行かないとわからないでしょ。一軒ぐらいは開いてるんじゃないの? それとも私の服着る? あと、ちょっと見えてる」



 一応何がと言わない私の優しさだ。

 エルンさん乙女だからわかんなーい。


「死にたい……」

「はいはい、馬鹿言ってないで食べたら適当に過ごしていていいわよ。貸本屋から適当に借りた本積んであるから」



 私は立ち上がると玄関へ向かう。

 壁にかけてあるコートを手に取ると、行って来ますと声をだす。

 ガウン姿のディーオが歩いてくる。



「ああ、気をつけてな一応精霊も連れて行くといい」

「なるほど、カー助をおとりにして逃げるのね」

「少し使い方を間違えてはいないか? 精霊頼んで誰かを助けを呼ぶという選択肢は無いのか」



 私は大声でカー助を呼ぶと、バッサバッサと飛んでくる。

 肩に止まると、カーと鳴く。

 もう一度行って来ますというと外に出た。



「さっむ!」



 私は扉をもう一度開けて家へと帰る。

 玄関で私を見送ってくれたディーオと目が合った。



「別に今日じゃなくても……はい、行って来ます」



 怖い顔で見られたので大人しく外にでた。

 カー助はコートの中に無理やり入ってきて顔を出してきた、軟弱者め。

 昨日と違って完全休日日だけあって人が少ない。


 町馬車も走っている様子はないし、たまに人とすれ違うだけで静かな町だ。

 以前色々買った商店街へつくと、どこも休みの看板が立っている。



「なるほど……」



 と、なると旧市街のほうね。ってもあっちのお店知らないのよね。

 熊の手まで行けばいいか。


 とぼとぼとぼと酒場熊の手まで歩く。

 歩いた先に待っていたのは休日と書かれた看板。


 イラ!


 私がこんなにも苦労して歩いているのに休みだと……。

 ドアノッカーを叩く!


 叩く!


 さらに叩こうとして、背後から声をかけられた。



「おや、常連のねーちゃんじゃねーか」



 年は五十代ぐらいで、毛は薄いがちゃんとある。人のよさそうな顔をしているが、こういう人間ほど信用なら無い。

 一応カー助をいつでもぶつける準備をしておこう。




「ん? 誰」

「ジンだ。ここの常連。ブルックスにソフィーネさんなら昨日からいねーよ」

「はっ! まさか借金が払えなくて逃げた。一言言ってくれれば……三割、いや一月一割で貸したのに」

「違うとおもうぞ、温泉とか言っていたな……」



 あーーっアトラスの町だ。

 私が温泉が気持ちよかったと、ソフィーネさんに話して、そしたら休みになったら行こうかしらって言っていた。



「むー、そうだこの辺で衣服売っている店ない?」

「服か、ねぇな……ボロ着屋も年明けまで休みだ。腹が減ってるなら向こうの酒場はやってるぞ?」

「そう、情報ありがと」



 私が財布を手に取ると、手を振って断ってきた。



「いらねぇいらねぇ、今度店であったら酒でも奢ってくれや」

「どうも」



 ジンという男性は昼食を食べた後で帰る途中だったらしい。

 私に情報を教えてくれると、寒い寒いと帰っていった。


 うん。万策尽きた。


 さすがのナナでも男性の服売っている場所はしらないだろうし。

 ナナの服なんて着たディーオはもう見世物小屋に売り飛ばすレベルだ。


 とりあえず帰る事にする、大通りにでてあとは一本道だ。



 カァー。



「何っ!」



 突然カー助が鳴くので止まると、年末というのに豪華な町馬車、しかも貴族用の馬車が背後から走ってきた。

 当然私は道を譲る。



 素通りするはずの町馬車が私を通りすぎて突然止まった。

 すぐに背後の箱から人が出てくると見知った男性が降りてきた。


 小太りであるけど、品のよさそうな、それでいて知性もあるおじさん。



「エルン!」

「パパっ!」



 そう、マイト・カミュラーヌ。私のパパである。



「おお、かわいいエルン、こんな寒空に……どうしたんだい?」

「久々ね、何どうしたの? 仕事?」

「ああ、ぶわっくしょい……とりあえず馬車に入れ寒いだろ」



 それもそうだ。

 馬車の御者も困っているので私は部屋の部分へ乗り込む。

 やっすい町馬車と違って完全な箱タイプ、中は適度に暖かい。

 馬車の中で座るとパパが話しかけてきた。



「どうせ年末も帰ってこないと思ってな、仕事ついでにお前に会いに来たのだ。

 ついでに小遣いでもやろうと思ってな」

「さっすが大好き!」



 私はパパに抱きつくと、パパも嬉しそうにしている。

 前世のパパも優しかった気がする。

 気がするというのは記憶が曖昧だから、でも今のパパはお小遣いを沢山くれるのだ。



「今日は家に泊まるの?」

「そうしてもいいのだが、城での報告があるからなぁ、その後は会合だ」

「なるほど、よく言う接待ね」

「…………実もふたも無いがその通り。近頃は金も取れなくなって来てるのにあやかろうとうるさくてな」




 それはまずい。

 成金貴族であるカミュラーヌ家は金が取れなかったら、ただの地方貴族だ。

 パパの代から裕福らしいけど、その前はちょっと小さな家で領民と畑仕事を一緒にしていたと聞く。



「なに、エルンが死ぬまでは大丈夫だろう。はっはっはっは」

「なら安心」

「…………ふう、エルンの孫の代は無いという事なんだけどな、やはり期待せぬほうがいいか」

「ん? 何か言った?」

「何も言ってないぞはっはっはっは」



 なら良いんだけど、あれよあれよと馬車は私の家の前までついた。



「あ、よかったら休んでいったら?」

「ふむ、エルンの顔を見るだけで安心はしたが、ではそうさせて貰おう」



 貴族用の町馬車を待たせて、私は馬車から降りる。

 カー助がカーと鳴くと二階へ向けて飛んでいった、私とパパはそのまま玄関にいき扉を開ける。


 はて? 何か説明し忘れたような。



「たっだいまー」



 応接室からディーオが歩いてくる。

 私の隣にいるパパが、よっこらせと言いならが喋りだす。



「エルン、変な男とか連れ込んでないだろうな、連れ込んでいたらパパ泣いちゃうぞ。はっはっは…………は?」

「お帰りと言うべきなのか、服はみつかった…………か……」



 ああああああああ。

 ディーオの事説明し忘れてたああああああ。


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― 新着の感想 ―
[一言] ディーオ「エルンェ……」 エルン=パパ「ハイクを詠め」 エルン「テヘペロ」 はたしてディーオは生き延びることができるか?
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