132 対寒地用特殊絶対装備 グレート皇帝――
「で、何をすればいいわけ。お金? 名誉?」
「どれもいらねえよ、いや、金は欲しいな。この歳になって小遣い制になってな」
「悲しいわね」
「ごほん、先生は使いすぎなんです」
私が同情すると、ガーラの声が聞こえた。
場所は既にガーラの家の中だ。
カルロスの所に戻ってきて解決方法を聞きだしてる所である、ガーラは私が途中で買って来た雪ウサギのケーキをそれぞの前に出してくれた。
頭の部分を切り落として食べる、こういうのってしょうがないとしてもグロいわよね。
「まぁ単純でわかりやすいし、これでどう?」
私は財布から売れば白金貨三枚はする宝石を三つほど取り出す。
「すげえな……貴族ってのは、こんなポンポン金が出るのか。ちまちま働くのが辛くなるなっと、失礼」
「自由に言っていいわよ」
「っと、すまねえ。俺がもっと若い時なんて二週間魔物を倒しても銀貨二枚だぜ、赤字だっていうのってか、怖いから睨むな」
「別に睨んでないわよ、本題はいつよ」
カルロスは、そうだったなと。ごほんと咳払いする。
やああああああっと本題を言い出した。
「鳳凰の卵だ。不死鳥というだけあってアレの卵はやばいぐらいに効果がある。
アトラスの風邪の特効薬もアレの殻を粉末して使ったものだ」
「じゃぁ、それを飲ませれば」
「たぶんな、一応俺は前例は知ってるから大丈夫とは思うが」
「ありがと。じゃぁ早速取りに行ってくるわ」
「まてまてまてまて、一人じゃ無理だろ」
はっ! そうだった鳳凰の場所には男女ペアで行かないといけない。
私と誰か道を知っている男性が……って、目の前のカルロスと視線があう。
「え。行ってくれるの?」
「まぁな。とはいえ行けるのは二名までだし、俺と……お前でいいか?」
「もちろんよって」
なにやら寂しい視線が背中に突き刺さる。
ちょっとだけ振り向いた。
「え、わ、わたしの事は気にしないでくれ。先生に迷惑をかけるつもりはないっ」
死んだような目で、断るガーラをみて心が痛む。
たぶんだけど、元からカルロスとガーラで行く予定が合ったのよねこれ。それを何所の馬の骨がわからない私が横から取ったと。
「そう、むくれるな。帰ってきたら稽古でもなんでも付き合うぜ」
「ほ、本当ですかっ。そう、これも先生が人助けをするんだ。喜ばしいです、ではエルンさん早速用意しに行きましょう。着替えてきます」
ガーラは口から先生と稽古だ稽古だと呟いている。怖いわね、ちょっとヤンデレなのかしら。
「さて、俺たちも準備だ。準備が出来次第霊山入り口でまっててくれ」
「わかったわ」
私は直ぐに用意しにいきましょうという、ガーラにつれられて町へとでた。
町にあるに、防具屋さん。
ガーラが小さい頃から知っている防具屋さんらしく、融通がきく職人さんが切り盛りしてるとか。
防具といっても登山道具や、衣服や武器などが所せましにならんでいる。
「マドックさーん」
「らっしゃい、おやガーラが、なんだ結婚式でも決まったか?」
「何を言うんですがっ! 今日はその相談がありまして」
ガーラが私を紹介したので、簡潔に言う。
「ええっと、暖かくて動きやすくて、攻撃力はそこそこで、防御力もある装備。あ、収納は沢山ほしいわ、割れ物扱うし。あと、転んでもなるべく怪我はしたくないし、関節を守れる部分が分厚いとなおヨシ。私は素人だから、専門的な知識はわかんないし、素人でも動ける、そんな装備頂戴! 人の命が掛かっているので早くね」
店主は持っていた手袋を落として私を見てきた。
「エルンさん無茶くちゃでは……」
別に変な事は言ってないんですけど、むしろ客がどんな装備を欲しいのか全部伝えたんだし感謝して欲しいぐらい。
「ないの?」
「一応一つだけあるっちゃあるが……」
「本当!? 言って見るもんね、お金はそこそこあるわ。無かったらガーラの家に付けて頂戴」
「趣味で作った奴だからそんな高くねえよ……」
◇◇◇
町の人が何事かと見守る中、私は集合場所についた。
先に来ていたカルロスが私達を見た後に、持っていた剣を落とす。
私はビック皇帝ペンギンの気ぐるみ中から、何が問題でも? と言って見た。
「いや、そのなんだ。貴族の中では流行なのか?」
「そう思うなら、カルロスも病気じゃないの?」
グレート皇帝ペンギンの着ぐるみ。
高さ二メートル強、横幅は一メートル以上かしら。
見た目は超巨大なペンギンである。
店主がお祭りの時に、客寄せで作っていたが無駄に性能を上げて、店の奥にしまっていたらしい。
どういう技術がしらないけど、中の人間の力を増幅させる力があるらしく、この短い足でジャンプすると一メーターは軽く飛ぶ。
さらに軽い。
薄いカーディガンを羽織っているような軽さで、なおかつ着ぐるみなのに蒸れない。
なんだったら裸より楽と錯覚しはじめる。
寒くなったらクチバシを閉じれば、出ている顔はとじれるし、その間は視界は悪くなるけどペンギンの目からみた映像が見えるようになっている。
さらに名前がいい、グレート皇帝ペンギンよ。皇帝の上にグレート、もういう事なし。
思わず店主に、これ商品にしたら爆売れよ! と感動した言葉を言うとそうだろうと返ってきた。
店主曰く、売れすぎて町中がペンギンだらけになる、と真顔で言われて納得した。
そんなのになったら大問題ね。
売りものにならないなら仕方がねえと、さらに改良したとかなんとか。
「何ひとつわからんけどな、ガーラ、説明を頼む」
「はいっ、マドックさんの所の特注品です」
「たっく、あのじいさん……じゃぁいくぞ……はぁ」
それでわかる二人って何かいいわね。
ガーラがお気をつけてと手を振ってくれた。
近くにいた子供が大きいペンギンさんが手を振っているーと聞こえてくる。
私は小さい子供にも手を振ると、凄い喜んでくれた。
すばらしい! 手を振っても逃げないだなんて、今まで笑顔で手を振っても子供は泣くし親は子供を抱きかかえて逃げるし。
「――そうよ、これが普通なのよね」
「普通じゃねーよっ、どこに全身着ぐるみのペンギンがいるんだよっ。
ほれ、さっさといくぞ命かかってるんだろ?」
「っと、そうだったわね。じゃぁ道案内よろしく」
「おうよ」
私は小さい子に手をふると一歩踏み出した。完!




