123 エルンさんとうとう牢屋(の前)に行く
「で、ボクの所に来たわけか」
何時もの学園で、何時もの教師用の個室。
出された珈琲に、勝手に砂糖とミルクをいれて飲む、特に注意はされないのでいいのだろう
最近では、なんで毎回ボクの所にくるんだ? という疑問さえ言わなくなって来たディーオが腕を組んで考えていた。
「そう、何とか会えない? 確か親友なのよね」
すでにリオの事は事情は話しており、それについての答えを考えている。 ……らしい。
「なるほど……アレ会ったのなら話は早い、リオだけならまだ会わせてもいいが……あの単眼の鬼はやっかいだな」
「あーノリスの事ね、ちょっとお茶目だけどいい子じゃない」
「そのお茶目でボクは大変な目にあったんだが」
「私に怒られても……」
ディーオは椅子に深く座ると、私に謝ってくる。
「ボクは君達みたいに、回りくどいのは好きじゃないからな」
「人を変な風に思うの辞めてもらいますー」
私だって回りくどいのは面倒だ。こう、すぱっと、鮮やかに。
「なるべく、人は少ないほうがいいんだろ?」
「まぁそうね……」
だからこそディーオの所にきた。
カインに言うと何か感づかれるかもしれないし、ぽろっとコタロウには喋ったけど別に私がヘルンに会いたいとしか言っていない。
「仕方が無い……こういう時こそ精霊を使ったりするんだが……」
どういう事? と聞くと、精霊なら城に忍び込むのも容易いだろうと教えてくれた。
「カー助に頼む?」
「…………辞めておこう、問題があったら困る」
「そうよね」
「あと、勘違いしてこまるが、ヘルンとは友人ではあるが今はお互いに立場がある。
ボクみたいな天才錬金術師でもホイホイと呼びつけていい相手ではない」
いちいち天才を混ぜるのがディーオらしい。
嫌味の一つでも言おうかと思って辞めた。さすが私我慢が出来る子。
「変な事考えてないか?」
「ぜんぜん!」
「仕方が無い、鳳凰の羽を取りに行く」
「突然なんだ、鳳凰の羽って頭にでも刺すのかしら? 背中につけて飛ぶの?」
「…………声が漏れてるぞ。
婚約が決まっている時期はボクだって中々会える訳がない、贈り物の一つでも持っていかないと駄目だろう。
そこで、円満の証である鳳凰の羽でも持っていけば謁見は出来るはずだ。
そこまでいけば、後は話す機会なんてあるだろう」
「さすが、ディーオ先生!」
「調子のいい時だけ先生と呼ぶな」
いっつも先生つけろって煩いくせにコイツは……。
「じゃぁ、気をつけて行ってね」
「まて、君も行くんだぞ」
「なんで!」
私が文句をいうと、部屋にノックが響く。
ディーオがどうぞというと、見た事も無い男性がディーオと私の顔をみてほっとしていた。
何故に私?
「ディーオ・クライマ様、エルン・カミュラーヌ様ですね」
「そうだ」
「城の警備兵ですが、そのコタロウ・コンタル様が城の裏口から入ろうとした所を、通路で引っかかり捕らえました。
身元引受人としてお二人の名前を出すので、関係者かどうかの確認をですね」
「「関係ない」」
私もディーオも同時にはもった。
城の衛兵は困った顔になり、なおも話を続ける。
「ですが、冒険者ギルドのマスターと、特別顧問と言われるので一応城まで来て貰えますか? お二人が彼の知人以上というのは調べがついていますので」
ディーオが、なんでボクが何時に顧問になった! と、騒いでいるけど。私も任命した覚えは無い。
最初は一人だった衛兵が三人四人と増えていき、最終的に五人になった。
これって犯罪者の扱いじゃないのよ!
私とディーオは顔を見合わせて結局従う事にした。
だって暴れて罪が重くなったらいやじゃない。
立派過ぎる馬車に乗せられてカッポカッポと城に向かった。
鉄格子のついた部屋でコタロウと面会する。
「おや、遅かったでござるな」
「遅かったって……コタロウはともかくなんて……」
「エルンさまお久しぶりです、元気でしたか? シンシアはコタロウさまとのゲームに負けて、ちょっと元気ないです! こちらのかたは……ええっと]
「お初にお目にかかります。ディーオ・クライマ。学園で錬金科の教師をしている者です」
鉄格子越しにディーオが一礼する、相手が子供でもこう紳士に立ち回れるのは凄い所だ。
私はつい年齢で判断しちゃうのよね。
「あっヘルンさまの親友の方ですよね。
ヘルンさまの親友はシンシアも親友ですっ。
仲良くしてください!」
「ご贔屓に」
外面の挨拶のディーオに対して、シンシアは少し悲しい顔をしてるけど、いきなり親友と言われてもねぇ。
「で、シンシア……様はなんで牢屋でコタロウと遊んでるのよ」
「何時もみたいにシンシアで大丈夫です。 お城を見学していると、エルンさまを呼んでほしいでござると叫び声が聞こえたの! みたらコタロウさんで、エルンさまを呼んだから一緒に遊ぼうと思って、でも、牢屋に居ないといけないっていうから、シンシアも一緒に入ったの!」
まわりの兵士がザワっとするのがわかる。
そりゃそうでしょうね、一国の王女がただの貴族に呼び捨てにしてくれって言っているんだから。
「コタロウ?」
「顔が怖いでござる! 拙者はエルン殿が城に入りたいと聞いたので、てっきり……いいや、やっと宝でも盗む算段かと思って、事前に抜け道を探していただけでござる。
聞いてくだされ、抜け道はちゃんと見つけたでござるよ」
ガッツポーズで親指を立ててくる。
私は青筋を立てているだろう。
「おや、エルンどの、指の代わりに青筋を立てるとか、中々シャレが聞いているでござるな」
「ボクがいうのもなんだが、交流関係はちゃんとしたほうがいいぞ」
「そこの衛兵さん、剣を貸してくださるかしら?」
私は衛兵に、微笑むと剣を借りる。
衛兵の顔が引きつっているけど、今は関係ない。
重たい剣を両手に持って狙いを定める。
「いっぺんしねええええええ」
「ぶっほ、エルン殿マジギレは不味いでござるっ! 助けてほしいでござるよ、錬金術師の先生」
「大丈夫だ、腕ぐらいなくなってもつなげよう」
「ぶっほ、シンシア姫助けてほしいでござる」
「でも、シンシアゲームで負けちゃったし……」
「ぶっ意味不明でござる」
「あー動くな狙いがずれる!」




