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118 よかったわ、今回は何も問題なんてなか――

 ナナとリュートとカフェで軽く食事をして帰宅する。

 リュートは家に帰り、ナナからは最近困っている事ないですか? って聞いてきたので、家にあるお風呂の様子を見てもらう事にした。


 最近お湯の出が悪いのよね。

 錬金術で治るなら、業者呼ぶより早いし。



「エルンおじょうさまー紅茶が入りましたー」

「ありがと、それじゃ作業終わったらナナの分もお願いね。

 あ、ガルドは?」

「ナナさまの手伝いに行っていますー」



 私は応接室で優雅に紅茶を飲む。

 今日も我が家のメイド達は優秀だ。

 いや、私も手伝うって言ったのよ? でも、エルンさんは座っていて下さいって。

 料金も大丈夫ですからって言うので、晩御飯をご馳走する事にした。


 今年の冬は、スキーがしたいわね。

 滑った事ないけど……確か雪山イベントもあったはず。

 雪が降らないグラン王国に雪が降ったとか、素材を取りに行った山で雪降ったとか、限定素材もあったはず。


 問題は私にその素材を扱える自信がまったくない。

 不器用だからだ。

 しかもなぜか錬金術限定である。

 転生前はもう少し器用だったようなきもするし、だってバイク走らせていたし。

 なので観光かしらねぇ。


 にしても、不器用かぁ。



「それがし、不器用ですから」

「お、おじょうさま!?」



 いつの間にかノエが近くに居た。

 お茶請けのシフォンケーキを持って来た所だった。



「ちょっとやだ、聞いてたの」

「い、いえ。まったく聞いてませんです!」

「その、本で読んだ不器用な侍の名台詞よ」



 転生前にテレビで見た言葉で、時代劇での俳優の言葉だ。

 姫様を愛しているのに、身分違いという事から身を引き影ながら助ける一人の侍の話。

 イケメン俳優を使い視聴率もよかった。


 と、そんな事をノエに言ってもわからないので本で読んだという事にする。

 多分よくわかってないのだろう、サムライって何でしょうと考えた顔をしてる。

 異国の騎士みたいな職業の人よと伝えると、エルンおじょうさまは物知りです。と、嬉しそうだ。



「その物知りのエルン様。来客が来たぞ」

「やだ、ガルドも聞いてたの!?」

「エルンさんって物知りですよね」



 ガルドの影からナナも顔を出して来た。



「何か恥ずかしいわね。ガルド、コタロウだったら通してー、他の人だったら用件お願いー、ナナは終わったら食事するしこっちに座っていて」

「了解した」

「はい」



 案の定コタロウであり客間に現れる。



「随分と、もてたみたいね」

「おや、エルン殿嫉妬は見苦しいでござるよ。

 冗談でござる、そんな般若みたいな顔をしなくても……」

「別にしてないわよ」



 ノエに手配してもらって、コタロウの前に氷水を出してもらう。

 別に意地悪ではくて、冷たいのが好きだから。



「ふう、生き返ったでこざる。さて、嬉しい話と困った話があるでござる」

「どっちも聞きたくは無いわね」

「「…………」」



 素直に言うと、場が沈黙になった。


「あのエルンさん、少し可哀想な」

「ナナは、やさしいわねー。でも厄介事ばっかりもってくるのよ」



 背後からエルン様と同じだなとガルドの声と、ガルドさん! と慌てるノエの声が聞こえる。



「じゃ、いい話から」

「先ほど拙者に彼女が出来たでござる!」

「…………いい話をお願い」

「メイドのノエ殿! 拙者何か悪い事を言っているでござるか?」

「あーもう、ノエに助けを求めないでよ。コタロウ菌が移ったらどうするのよ。

 で、もっと悪い話なんてあるの?」

「運命の赤い糸が紛失したでござる」

「やだ、コタロウったらそんな、そんな顔して案外ロマンシストなのね」

「ええ! コタロウさん本当なのですかっ!」



 ナナが乗り出して、コタロウに続きを求めた。

 あれ?



「ナナ、もしかして……」

「はい、錬金術アイテムです。運命の赤い糸といって結んだ人同士を両思いにするアイテムでして……」

「やだなにその呪いのアイテム」

「呪いって事は」

「だって、仮に私とコタロウが結んだら相愛になるのよね」



 そうなります。と、ナナは教えてくれた。



「なんでそんな物失くすのよおおお!」

「お、落ち着くでござる」

「エルンさん大丈夫です。縁切りのハサミと夢見る眼鏡があります」



 運命の赤い糸。

 対象者の小指に結ぶと相思相愛になる赤い糸。

 

 縁切りのハサミ。

 運命の赤い糸を使った偽の糸を切る事が出来るハサミ。


 夢見る眼鏡。

 他人の運命の赤い糸を見る事が出来る。



 ナナは一通りアイテムの説明をしてくれた。


「ほう、ナナさんのほうがエルン様よりも物知りだったな」

「ガルド、うっさい!」


 やれやれというポーズを決め、押し黙っている。



「ええっと、ナナの話からいうと、その糸は偽なの?」

「はい、偽であり本物です。自然に出来た赤い糸は消えたり増えたりしますが、それと同じ効果を意図的にするのが、『運命の赤い糸』なのです。

 元はアラクネという半身が女性の蜘蛛の魔物の糸が材料らしくて。今度討伐に行こうかなって思っていた所です」

「頭痛くなってくるわね。そもそも、なんで凄いのを失くすのよ」



 実はでござる長い理由があるでござるよ。そう切り出したコタロウは、深く溜め息をつく。



「飲みに行ったら女性と意気統合して、ぺロっと喋ったら眼鏡と糸が無くなっていたでござる」

「「「…………」」」

「みじかっ! 飲んで喋って盗られただけじゃないのよ!」

「そうともいうでござるな」



 まったくもう、無意識に頭をかいていた手を止めて腕を組む。


「で、それを取り返して欲しいってわけ?」

「別にでござる」

「え?」

「困ったといっても、素人に扱えるアイテムじゃないと、ここに来る前に錬金術師の先生から言われたでござるよ。

 ただ一応耳に入れたほうが良いと思ってのござるよ。元々実家でゴミのようになっていたアイテムでござるし、本当に効果あるとも思ってないでござるよ。

 けっして拙者の恋人を探そうと――」

「でも、ナナが錬金術のアイテムであるって」



 ナナが小さく手を上げて発言を求めてる。

 私がなーに? と、聞くとナナが喋り始める。



「そうですね、効果は一時のものですので、作った人間にもよりますけど、効果は半日程度と思います」

「だから考え過ぎでござるよ」



 何か腹立つわね……。

 



 ◇◇◇


 コタロウの騒ぎから数日が過ぎた。

 ある男から用があるからと呼ばれ、朝一で学園へと行く、何時もの部屋で何時ものように、しかめっ面の自称天才の顔を見ながら、珈琲を頂く。



「で、ディーオ話ってなーに?」

「いい加減先生ぐらいつけ……いや、今日呼び出したのは他でもない。

 そのリュート君と結婚したいのだが、どうしたらいいだろうか」



 私はディーオの顔面へと珈琲を吹き出した。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] コタロウに彼女。 何……だと?(BLEACH感) 財産狙いだな!(偏見) 酒場で女性と意気投合。 懐狙いだな!(ガチ) 運命の赤い糸で結ばれたディーオとリュート。 二人は結ばれる定め……!(…
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