26転生脇役ヒロイン呆然とする
「おいおい、お前ら二人して仲良く叫んでないで。
ソニアは調査に戻れ」
スタンがあまり説得力のない状態――リナを大事そうに横抱きにしているので――でそう言うと、
「そうだよねー。
オッサンに抱かれてないで地面に降りない?
リナちゃん・・・
オッサンはリナちゃんを下に降ろせよ、バーカ!
チクショウ・・・
俺のリナちゃんが・・・
グスン・・・ ウラヤマシイ・・・ クスン」
何やら言葉尻がボソボソと呟きになるレオナルド。
「リナ立てるか?」
「あ。大丈夫です」
ゆっくりと降ろしてくれるスタンに胸がキュンキュンするリナ。
あま~い空気が場違いに充満する・・・
「うちの班は上にまだいるんですよ。
私はゴブリンキングに捕まりかけたんですけど、穴から落ちて助かりましたが。
上がどうなってるのかが分かりません。
急いで合流しないと・・・」
「「「キングに捕まりかけた?!」」」
「ええ、多分あのキングはメイジの派生だろうってソフィア王太子妃が言ってました。
一人で魔法を使って天井から脱出するつもりだったのかもしれませんね」
「どこッ?
どこか触られたのッ!」
血走った目でリナの頭の上からつま先までを念入りに確認するちょっとだけ怖いソニア(郁ちゃん)が叫ぶ。
「え?
キングに足首を掴まれたけど・・・」
「ヤロウッブッコロッ!!」
そう叫ぶとビュンッと天井まで向かって動く足場を作り上げて飛んで行くソニア。
まるで空中を走っていくように見える・・・
「あ・・・
ソニアさん魔法」
ゲーム上では魔法はからっきし駄目だったはずでは?!
「だ、大丈夫でしょうか?」
思わずスタンをリナが見上げると
「あ~・・・。
ゴブリンが無事じゃないかも」
「「え・・・?」」
「アイツは『小鬼惨殺女王』ていう通り名があるんだ」
「「えええぇッ?!」」
ゲームではそんなあだ名などソニアには付いてなかったと思わず目が点になる。
いや、そもそも魔法は使えないはずだったっけ・・・
やはりゲームとは違う世界なんだ と今更ながら呆然として、天井の穴を見上げるリナである。
「とにかく戻らないと・・・」
「おい、レオナルド。
ソニアを連れ戻すぞ」
「うぃ~ッス!」
レオナルドがやる気なさそうな仕草で敬礼した。
×××
「リナ!
大丈夫だったか!」
スタンの魔法で上に転移すると、くまの◯ーさんのような顔の団長が飛んで来た。
「ハイ!
彼に助けて貰いました!」
「おお、ウチの団員がお世話になりました!
良かった皆が心配してた・・・
と言いたい所だが、見れば分かるように取り込み中でな・・・」
団長が困り顔で額を拭いた。
「ウキーーーッ!」
「一体ソニアさんはどうしたんですか・・・」
見れば屈強な騎士達に拘束されている・・・
目を凝らすと、その向こうにゴミクズのように緑の体液塗れになった灰色の塊が見える気が・・・
――ひょっとしてアレってキング?
「いや、あのな、急に穴から冒険者の彼女が現れてゴブリンキングをダガーで滅多打ちにしてトドメを刺さしたんだが、足首を切り落とすと言って聞かんのだ・・・。
まあ、もうとっくにキング自体は死んでるんでな~」
魔物の特殊個体を仕留めた場合、通常は魔塔の研究室に運ばれるのが鉄則なのだ。
「あんまり切り刻まれると魔塔から文句が出るんでな・・・」
団長が遠い目をする。
長い経験上イロイロとあるんだろうなとリナは思った。
別に騎士隊と魔塔が反発し合っている訳では無いが・・・
あそこはオタクの巣窟だからな、と頷いた。
「ああ。
やっちまったか・・・」
「ソニアちゃん・・・」
微妙な顔でそう呟くスタンと顔色が悪いレオナルド。
隊長と周りの兵士達もレオナルド同様に顔色が悪かった。
「ソニアさーん。
もういいんですよ~!」
「止めないで里奈ッ!
女の敵ッ!」
「もういいんだって死んでるんだからなッ!」
スタンが声を掛けると、グリンッと此方を向くソニア。
「実家にバラすぞッッ!」
・・・動きがピタリと止まった。
「アイツ、あーいうのが実家にバレると不味いんだよな」
スタンさんが眉を下げながらため息混じりで呟いた。
「え?」
「もう冒険者家業は辞めるって約束なんだよ。
平常時と人が変わり過ぎるから、婿が来なくなるって両親に泣きつかれてな・・・。
あいつの実家は国内一の商会だろ?
マジで困るらしいぞ」
「「「「・・・」」」」
でしょうね、と全員がゆっくりと頷いた・・・。




