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ソイツは大きめの掘っ立て小屋にゴブリンメイジばかりが5人ほどいる場所の一番奥の椅子に腰掛けていた。
背が高いのだが、横幅も身長と同じくらい生き物である。
表現としてはマッチ箱のような身体を想像するかもしれないが実際はもっと軟体動物っぽく、べったりと広がった、ゴミ収集所に放り出されたポリ袋のような身体をしている――分かりやすく言うとナ◯クジを連想する体躯である・・・
どう見ても醜悪という言葉がピッタリな風貌のゴブリンキングを目にした女性二人が、どっかのスペースオペラの中に出てきそうな悪役の宇宙生物を思い出し思わず遠い目をして
「「正に女の敵って感じだわ・・・」」
と、胸の辺りを押さえて呻く。
――美女を鎖で繋いで手に持って無い分だけ心臓に悪くないかも知れないが・・・
シルファの片眉が吊り上がった。多分愛妻の気分を害したゴブリンキングを頭の中で惨殺しているに違いない。
×××
「エルフもドワーフ達みたいに人族と連携してくれたらこんな惨事を防げるのにねえ」
ふう、とソフィアが溜息をついた。
「推定個体数が1000位って多すぎじゃない?
ゴブリンばっかりで嫌になるわ」
「うう。
鼻が曲がりそうで嫌です・・・」
女の子は一般的に臭いものが苦手なのだ。
ドブ臭いのとか、洗ってないスニーカーの匂いとか、おっさんの加齢臭とか・・・
・・・。
×××
「お、おっさん久しぶりだなー」
北の砦の中庭。
兵士や騎士、冒険者等がごった返す中で急に声を掛けられてスタンが振り返ると肩の上にワニのような魔物を載せた黒髪の青年が立っていた。
「? 誰だ」
「あ、すまん、分かんねーな。
アンタが魔人に乗っ取られてた時にサシで勝負した女の従兄だよ」
帝国人特有の肌の浅黒さに白い歯を見せるような笑顔は妙に人懐こい。
「え、じゃあ王太子妃殿下の?」
「あ、そうそう。
あれ?
アンタなんかえらく若返ったんじゃね?」
「ああ。
デスクワークから現役に戻ったら、やたらそう言われるようになった気がするな」
「デスクワークが向かねえんじゃねーの?」
「そうかな・・・?
考えたことが今まで無かったな」
首を捻るスタンに横に立っていたレオナルドが、
「確かに俺等と最初ギルドカウンターで出逢った時からいうと格段に若くなったっスよ」
「そうか?」
更に首を傾げるスタン。
「ギルドの仕事が楽しくないから老け込んでたんじゃないか?」
「え?」
「人間無理して好きでもない事してたら暗くなるしイライラするし、そら老けますよね~」
ギャハハハと笑うレオナルドにウンウンと頷くアジェス。
「お前若いくせにえらく達観してんな?」
「あ~俺?
俺は祖国で窮屈な生活してたんで、そっから離れて冒険者になってから実感しました」
「「へー」」
「やっぱ、嫌いな事をイヤイヤ我慢しながらだと心理的なジジイになりますよね~」
「そらそうだな」
能天気そうに見えるレオナルドも苦労していたからこそ、今はユルい態度で人生を楽しんでいるのかと、ちょっとだけ見直したのだが・・・
「可愛い子を見たら即ナンパっすよね!」
・・・スタンは気が付くと朝同様、自然とレオナルドの尻に蹴りを入れていた。




