13転生脇役ヒロイン ゴブリンと遭遇する
ゴブリンはグレーの肌の『小鬼族』と呼ばれる魔物で、実は男しか存在しない。
自分達で子供を産めない彼らは繁殖の為に人族やエルフ族、ドワーフ族の女性を専ら攫って繁殖する。
その為目撃報告があれば国もギルドも関係なく駆除に馳せ参じるが、村を形成するほど多くのゴブリンが見つかった場合はゴブリン王、ゴブリン騎士、ゴブリン戦士などという厄介な特殊個体が存在する可能性があるため、スタンピード並みに警戒度が上がる。
当然産まれる為に女性が攫われている事は考えなくとも分かることだ。
近年我が国ではゴブリンによる拉致被害は無く、滅多なことではそこまで大きな集落は見つかることは無かったが、今回ばかりは勝手が違った――
「洞窟の中に村を形成してたんですか・・・
厄介ですね」
「拐われた女性の安否も確かめないと・・・
魔術師は索敵で村の中を探れ」
小隊長の指示で四人の魔術師が索敵魔法の小さな光を村に向かって放つ――勿論リーナもその中の一人だ。
「苗床にされた母体は村を形成する程子供を生んでたらもう助からん。
もし生きていても既に人としての意識もないだろう。
あいつら一ヶ月もしないうちに産まれちまうから苗床にされちまった女は確実にアイツラの毒が体内に残って気が狂うからな」
団長がコメカミを抑えて唸る横で、もう一人の魔術師の男性が魔鳥を王都の騎士団と辺境伯兵団、そして冒険者ギルドに飛ばした。
「何処から女性を攫ってきたんでしょう?」
「恐らくだが人族じゃないだろうな。
今の陛下の代になって戸籍登録ってヤツのお陰で庶民も貴族も関係なく、人一人が行方不明になるだけで大騒ぎになるからな」
「じゃあ、確実にナイトはいませんね」
この世界ではゴブリンの母体となる女性の種族によって特殊個体が決まる。
人族は騎士、ドワーフ族は戦士、エルフ族なら魔法使いだ。
溜息を思わず吐く小隊長達。
2小隊合同で現在40人編成の中隊という状態だが、魔術師は1小隊に二人。
現在魔術師は四人で残り36人は騎士達だ。
「魔法にも物理にもどちらかというと弱いゴブリンだが、特殊個体がいないことを祈るしか無いだろう」
「応援を待ちますか?」
小隊長の言葉に団長も流石に眉をしかめる。
眼の前の村は掘っ建て小屋を幾つも形成しており規模はかなり大きい。
自分達が洞窟の壁際に身を潜めて隠れて確認している場所から見える限り村の中を彷徨く個体だけでも4、50人は軽く超えそうだ。
「流石に応援を待つか・・・
一度撤退するぞ。
転移魔法を使えるヤツはそのまま展開しろ。
その他は転移魔法のスクロールの使用を許可し砦に戻る・・・・
オイッ!」
団長が急に慌てて洞窟の入口を指さした。
振り返ると6人程のゴブリンが急に現れ、人間に驚いて騒ぎ出した。
一人だけネックレスを首から下げた背の高い色白のゴブリンが混じっていた――ゴブリン魔術師だ――
「間違いない。
エルフ族が苗床だな」
小隊長の声が絶望的に洞窟に響いた。
「魔法陣で転移して来やがった」
ゴブリンは男は殺すが女は生け捕りにする。
この中隊に在籍する女性はリナだけなので攫う標的が彼女であるのは間違いない。
男達の中に一人だけ混ざった獲物を見つけて下卑た顔で気味悪く笑ったゴブリンメイジと視線が合い、リナは血の気が引いたのを感じた――




