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金が欲しい祓い屋と欲望に忠実な女子校生  作者: 暮伊豆


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15/90

神の住む山

ところで、清はなぜあのような高価な栄養食品を葉子に与えたのだろうか?

月のバイト代より随分と高いのではないか?


理由はいくつかあるが、一つは葉子が炎を揺らすことに成功したからだ。それゆえのご褒美、ではない。炎が揺れたということは、霊力などと言う目に見えない怪しげな力を消費したということなのだ。従ってあの時点での葉子の霊力はほぼ空っぽ。回復しなければ訓練が継続できない状態だったのだ。

それならそれで雑用でもさせればいいものを……


しかもその後の霊力マッサージ。清は明日の準備をしていたはずだ。その準備にも霊力は必要だったりする。それなのに葉子に霊力を使ってしまえば確実に明日の準備が遅れる。下手をすれば明日の仕事に響くかも知れない。しかも、あのマッサージは触れながら行った方がかなり効率が良い。そもそもめったにやらないが、やるなら代金と引き換えに施すものである。


清は葉子をどう思っているのだろうか?

先行投資をして正社員にした暁には扱き使うつもりだろうか?




日曜日。朝から清は葉子を助手席に乗せ車を走らせている。行き先は渡海市から東へ70km、魂皮(たまがわ)町である。この地にはある1柱の強力な神の分御霊(わけみたま)が祀ってあるお山がある。目的地はそこだ。


「せんせぇ〜今日はどんなお仕事なんですかぁ?」

凄野山(すさのやま)に結界張りだな。あそこには浮遊霊とか、はぐれ魑魅魍魎が寄り付きやすいんだよな。」


「除霊とは違うんですかぁ?」

「違うな。集まるのは無害な物ばかりだから除霊はしなくて済みそうだ。山頂周辺に結界を張って終わりだ。」


「じゃあ私は何するんですか? 山の中でナニをしてもいいんですよ?」

「君の出番は仕上げの時だな。まあ荷物持ちは当然やってもらうが。」


そして車は山のふもとに到着。時刻は午前9時過ぎ。山頂までは1時間もかからないはずである。


「さあて歩こうか。しっかり頼むぞ。」

「あのーせんせぇ、これ重いんですけど……」


「がんばれ。俺も重い。」

「もぉー!」




「せんせぇ……」

「何だい?」


「休憩しませんか……」

「そうだな。少し休もうか。」


「ではそこらの繁みでしっぽりと……」

「元気なら出発するが?」


「嘘です嘘です! ほんの先っぽだけなんて思ってません!」

「いつも思うが君のその無駄に豊富な無駄知識はどこから無駄に来るんだい? 君の中学では無駄に普通なのかい?」


「やだぁ先生ったら。いい質問ですねぇ! それって私に興味があるってことですよね! 何でも聞いてくださいよぉー!」

「やっぱいいや。さて、行こうか。」


「あー、待って待ってください! 答えますから! 本です本! ママがこっそり読んでる『かんのー小説』ってやつです!」

「ふーん。そんな字ばっかりの本を読んでるのか。意外だな。」


「だから予習はバッチリです! いつでもドンと来てください! ちゃんと勝負下着もバッチリです!」

「そんなもんどこで買うんだよ。プラザか? アトラスか? 高いだろうに。」


「ママが、先生のとこにはこれで行くようにってあれこれ買ってくれたんですよ! ウェルカムです!」

「よくそのサイズで勝負下着レベルのものがあったな……お母さん大変だったろうに。」


「がびーん! またゆったぁ!『でっけえもんは小さくならねえ』って言葉がありますけど、小さいものは大きくなるんですぅ!」

「そうかそうか。牛乳飲んで頑張れ。さて、そろそろだ。」


山頂には5m程度の石碑が建っている。またその石碑を中心に半径10mぐらいが樹木の生えていない空白地帯となっている。


ここに魑魅魍魎が集まってくるのだろうか?

まだ昼にもなっていないのに、なぜか薄暗く感じてしまう。太陽を遮るものなどないのに……

『でっけえもんは小さくならねぇ』

by Dr.石塚

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