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 取り敢えず、弟さんの話を聞こうということになって、私とアルトゥールと三人で、朝食ついでに食堂へと移動した。


 弟さんの名はユストゥス。

 彼はアルトゥールが銀狼になって行方不明になってすぐ、領地を叔父に任せて兄探しの旅に出たそうだ。


 叔父から魔法のコンパスを借りて、アルトゥールを追っていたが、山を二つ越えた辺りで猪に襲われコンパスを失い、ひと月以上、山中を彷徨っていたそうだ。

 馬だとコンパスの差し示す先を見失うから、徒歩で移動したらしい。この国の川魚は美味しいと褒めてくれたし、自給自足でここまで来たみたい。

 野性味溢れる生命力の強い青年だと理解した。


 それから、偶然見つけた街で狼の事を尋ねたところ、この国で動物が逃げ込める森はベリス侯爵領の森しか残っていないと聞き、訪ねてきたのだという。


 兄を心配して探しに来ただけのようで、この人が呪いをかけたとは到底思えなかった。


 アルトゥールは探るような目で弟へ目を向けていた。


「どうして兄様は中途半端にしか戻れていないのですか?」

「さあな。ユスの方が呪いに詳しいのではないのか?」

「そうは言っても、兄様は実際に狼体験を済ませた訳ですから、俺より先行ってますよね。しかも、婚約者なんかいらないとか、女性は面倒だとか興味ないとか散々仰っていたのに、こんな素敵なお相手の方が隣国にいらっしゃったなんて」


 ユスは私を見てにっこり微笑んだ。

 髪色は違うけれど、目付きや笑顔がアルトゥールそっくりだ。


「そんなこと今はどうでもいい。それより、この呪いは誰によってかけられたのか、ユスは知っているのか?」

「へ? えっと……誰っていうか。諸説ありますけど?」

「諸説?」

「はい。一説によると、俺達の先祖のロドリゲス伯爵は残忍な方で、森の狼や動物を惨殺して呪われたとか。他には、ロドリゲス家に嫁に来た魔女が狼を好きすぎて、夫を狼に変える魔法をかけて、それが今も残っていて、ロドリゲス家の男性のみ、その呪いが現れるとか……」


 ユスが真面目な顔でそう説明するが、私とアルトゥールは首をかしげた。

 呪いが現れるとはどういったことか。


「ユス。何の話をしているんだ?」

「ですから、狼になる呪いの話ですよ。俺もいつかその時が来るんでしょうけど、これは個人差がありますからね。でも、俺にはちゃんと可愛い婚約者がいるんで、直ぐ元に戻してもらえるでしょうけどね!」


 自信満々に話すユスを前に、アルトゥールが眉間に深くシワを刻んだまま固まった。

 それってつまり……。


「あの。ということは、狼になってしまうのは、ロドリゲス家に生まれた男児の宿命ということですか?」

「はい! 亡くなった父もそうだったと聞いていますし、叔父上もです。兄様が狼になった時、気が動転した様子で、そのまま外へ飛び出しちゃって。これは一族の者しか知らないことなので、衛兵には弓を向けられてしまって――でも、ちゃんと自分を愛してくれる方の元へ向かってたんですね。行く前に言っておいてくださいよ~」


 あ、狼は喋れないか、何て茶目っ気たっぷりにユスは付け足した。


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