第25話 悪夢
夕食後のアルフォートとの話し合いの後、私はご機嫌な様子で部屋に戻っていた。
今まで胸を占めていたアルフォートから追い出されるかもしれないという不安が無くなったのだ。
「ふふふ!」
私は顔に笑みを浮かべたまま、化粧を落としベットにと横たわる。
そしてその瞬間襲ってきた眠気に抗うことなく私は目を閉じる。
そう、その時私はこの家に来てから始めて酷く安らかな気持ちで眠りにつくことが出来ていた。
……寝る時、だけ。
◇◆◇
「お前は本当に役に立たないな!レシアス」
「あの女の娘なんて、あんたなんて何処かでのたれ死んでしまえばいい!」
「お姉様、貴女に私の半分でも愛があれば良かったのに」
数日に至る睡眠不足により、直ぐに眠りに落ちた私を待っていたのはいつもと変わらない悪夢だった。
父、継母、ビビスが私に呆れ、恨みをぶつけ、そして嘲笑する。
その光景に私は声なき声を上げ……
「はぁ、はぁ、」
次の瞬間、私は目を覚ましていた。
身体は酷い汗をかいていて、そして信じられないほど早く心臓が波打っていた。
寝る前に感じていた幸福感はもうどこにもなかった。
もう数日間まともに寝れていないせいで身体には酷い疲労が溜まっていた。
もう倒れてしまいそうな、そんな疲労が今も私の中で荒れ狂っている。
「何で、ここでも私を苦しめるの……」
……けれども今の私にはもう一度目を閉じる勇気などなかった。
私を集まって責める家族達、彼らの姿は頭にこびりついていて、目を閉じれば直ぐに浮かび上がってくるのだ。
だから私は必死に眠気を堪えてベッドの上でくるまる。
「……だれかぁ」
酷い疲労のせいか、その時何故か私は無性に孤独感を感じて気づけばそんな声を出していた。
そして私の頭にアルフォートの姿が浮かぶ。
「駄目……」
けれども私はアルフォートにだけはこの姿を見られてなるのかと、そんな考えを頭から振り払った。
何故かはわからない。
けれども私はこの自分の姿を見ればアルフォートも幻滅して自分のことを追い出すとその時確信していた。
「ぅぁっ」
だから私は声を押し殺しながら泣き、朝の訪れを待つ。
こんなのいつものことだと、そう自分に言い聞かせて今にもアルフォートの元に行きそうになるのを堪えながら。
「レシアス嬢!」
「………ぅあ?」
ーーー けれども次の瞬間、アルフォートが私の部屋へと飛び込んできた。




