真面目に真っ直ぐふざけてもうちょっと遊ぶ
『真面目に真っ直ぐふざけて遊ぶ』の続きです。
視点は角三です。
「いいなあ、君達は。そういう面白そうなことができて」
コロッケ、食べながら舞戸にさっきまでの事、話したら、そういう事言った。
「しょうがないだろ、お前が入ったら死ぬぞ。ところで何だこれ。美味いな」
「ああうん、ライスコロッケね。リゾットのコロッケっていうか……うん、まあ、分かってるよ。私が君達の『遊び』の中に入ったら間違いなく死ぬよ」
鈴本が食べてた丸いコロッケ、俺も食べてみる。
……あ、美味い。とろんってしてて、ええと、なんか美味い。良く分かんないけど……うん、美味い。
「舞戸さんでもできるような遊びもあるんじゃないですか」
社長がかぼちゃのコロッケ食べながらなんか言い出した。うん、それも美味かった。
「かくれんぼとか、どう?」
針生が普通のじゃがいものコロッケ食べながら提案したけど。
「あ、鳥海が『探知』持ってるんだから駄目か。俺も日陰に居る人はある程度分かっちゃうし……」
……あ、そっか。そういうスキル、あるんだ。
「かくれんぼが駄目って相当だよね……」
加鳥が食べてるのはカニのクリームコロッケ?美味そう。
「んー、対人じゃなければいいんじゃないの?得点制で射的にするとか……あ、物の例えで。射的にしたら加鳥のワンサイドゲームだし」
うん、しかも舞戸、発射できるスキル、無いし。
「じゃあ、鬼ごっこ。但し、僕らはハンデ付きで」
「ハンデ付きじゃあ君達が楽しくないでしょ」
羽ヶ崎君が食べてるのは……なんだろ。あれ。
「それ、何のコロッケ?」
「ジャガイモのコロッケにチーズとトマトソース包んである奴?」
それも美味そう。え、何種類作ったんだろ……。
「……で、ええと、だね。私も入っていいんだったら、さあ……棒倒し、とか、どうだね?」
……次の日。朝ごはんのあと。
昨日、整地したとこに、社長が……山、作った。
で、そのてっぺんに、石の棒、っていうか、塔が……刺さった。
「ルールは簡単、1人ずつ順番に山を崩していく。どのぐらい崩すかは……そうだな、一度に全体の5%以上。測定は社長が行う。で、普通に棒を倒した奴が負けだ。禁止事項は、棒自体に触れる、棒自体にスキルを作用させる事だけ。じゃあ始めるか」
またじゃんけんで順番を決めると、絶対あいこが沢山続くから……立候補で、針生が最初になった。
「じゃ、いっくよー」
針生が宣言してから、山を崩す。
……飛んで、いきなり山の裾の方が削れた。……あ、陰になってる部分か……。
「じゃ、次、舞戸さんねー」
「ほいきた。じゃあ反対側は私がいくかな」
舞戸が『転移』して、針生が削った反対側をハタキではたく。
そしたら、一気に山が崩れて棒が少し動いた。
「……うわー」
「次は加鳥ね」
「うん。じゃあ……『滅光』!」
……山が。
「ちょっと調子に乗りすぎたかなあ」
「明らかにな……」
うん、削りすぎ、だと思う。
「もっかいいこうか……」
「はい、じゃあ次は角三君ですね」
刈谷が『流星雨』で山を大きく削って(それでも遠慮したらしいけど)、俺の番になった。
……どうしよっかな。
「『グロリアスブレイド』」
これでいっか。
調節して、山の端を切り落とす。
……棒がまたちょっと傾いた。
「じゃ、また針生だ」
「どこ削ろっかなー……」
……なんていうか、結構頭使うし、細かい操作もいるから面白んだけど……地味。
お昼まで棒倒しやったんだけど、結構地味だった、っていうのが講評。
うん、楽しかったけど。
「あのさ、よく考えたら、かくれんぼじゃなくて、逆に鬼ごっこだったら私でもいい線いくと思う」
「確かに『転移』があれば移動はできますけど……タッチ、できないんじゃないですか?」
……昼ご飯は、サンドイッチだった。朝作っておいた、みたい。
「うん、なんとかなると思う。ただ、タッチするのは私じゃなくて、この子たちが、になるけど」
……あ、うん。舞戸のスカートの裾から、わらわら、って、メイドさん人形がいっぱい出てきた。
「ああ、いいんじゃないか?そうしたら後は動きの読み合いだし、そうなれば舞戸にも分はあるだろ」
うん、『転移』って、逃げるときには少なくとも、かなり使い勝手良さそうだし。
「じゃあ、制限時間は30分。時間切れになった時に鬼だった奴が負けだ。禁止事項は1つ。誰もタッチできない状態になっていいのは通算30秒までだ。影に潜りっぱなしになったりしたらタッチするどころじゃないからな」
うん、隠れようと思ったら針生は完璧だから……。
最初の鬼はくじ引きで鈴本になった。
「30数えたら動くぞ」
その間にとりあえず逃げる。
……機動性が悪くなるから、俺も鳥海も鎧は脱いでる。
けど……最大速度が、鈴本に敵わない気がする……。
「うわあああああああ!」
今、針生が追いかけられてる。……空中戦になってる。
やっぱり、あの2人が追いかけ合うと空中戦になっちゃうんだ……。
「……っと、油断するなよ?」
う、わ。急に方向転換してこっち来た!
俺も逃げる!
……残り、27分。
「タッチぃっ!」
結局針生がタッチされたけど、その後すぐに鳥海にタッチしてまた交代。
「あちゃー、んじゃあ、30秒数えるからー」
……鳥海は、そんなに足、速くないけど。でも、人の動き読むの、巧いから……。
「29、30!行くよー」
鳥海が走り出して、すぐ舞戸に近づく。
「う、うわ!『転移』!」
舞戸はすぐに『転移』で離れた所に逃げるけれど、それを読んで鳥海が『転移』で動く。
「『転移』!」
すぐに舞戸はまた飛ぶけど、鳥海の読みもまた結構近い。
何回か『転移』合戦になって、それで結局。
「『転移』……うおわああ!」
「はい、タッチ」
鳥海がぴったり読みを当てて舞戸がタッチされた。
残り、19分。
「いくよー!」
舞戸がいきなり『転移』して宙に浮く。
それから消えた。
……後ろに気配を感じて動いたら、舞戸がいた。
けど、それも一瞬で、すぐにまた居なくなる。
絶対俺のこと狙ってるから、とりあえず正面突破で真っ直ぐ逃げる。
戸惑ってる間ならともかく、真っ直ぐ走ってる相手に舞戸は追いつけない、と思うから。
……諦めたのかな、舞戸は特に追ってこなかった。
けど、どこに居るのか全然分からない。
……どこだろ。
探してたら、急にもふっ、って、感覚が腰のあたりにあって。
……見たら、メイドさん人形が何時の間にか俺にタッチしてた。
「はい、タッチ!じゃあ角三君が鬼ね!」
そう言って舞戸はまた居なくなった。
……メイドさん人形も、そんなに動きが早かったり、しないんだけど……いつ来たんだろ……全然わかんなかった。
残り16分。
俺は脚が早い職業補正じゃないけど、元々だったら、この部で一番早い、と、思う。
……加鳥が近い、かな。
見つけて真っ直ぐ走る。あんまり難しい事考えるよりはそっちのがいい気がするし。
「え、うわあ、来てる!」
加鳥が気づいて逃げ出すけど、俺よりは遅い。
「『イレイズビーム』!」
……あ。
足元の地面が消えて、慌てて飛んで避ける。
「はあ!?ちょ、そういうのアリなの!?」
見てた羽ヶ崎君が驚いてるけど、うん、別に禁止はされてなかった……かな。
ビームは俺自身を狙っては来ないから、足元に気を付けながら追いかける。
……うん。追いつける。
「タッチ!」
「うわあ、やっぱり角三君、速いなあ……」
……うん。
残り、14分。
それから加鳥に羽ヶ崎君が捕まって、羽ヶ崎君に針生が捕まって、針生に社長が捕まって、その後社長にすぐ捕まえ返されて、針生が刈谷捕まえて、刈谷が舞戸捕まえた所。
残り2分切ってるけど。
……どこからメイドさん人形が来るか分かんないから、周りに気を付けながら走り続けておく。
「っ!っと、危ないな」
「ぐあああ!外したっ!」
鈴本の声と舞戸の声が聞こえた。……外した、らしい。
怖いから俺も周りを確認するけど、一応、人形は見つからない。
……でも、見つからないだけでいそうで怖いから、やっぱり走りっぱなしておく。
あと2分弱ならずっと走ってても平気だし。
そのまま走ってたら、もう時間切れになる。
……残り30秒を切った、時だったと思う。
走ってる俺の目の前に、舞戸が出てきた。
……ぶつかる、って思った瞬間、舞戸は消えてて。
代わりに、もふ、って、またメイドさん人形がくっついてた。
「タッチ!ははは、角三君、真っ直ぐ走ってたら読みやすい事この上ないぞ!」
立ち止まったら、凄く嬉しそうな舞戸がまた出てきた。
……タッチされたら30秒待ってからスタート、っていうルールだから、残り30秒切ってから捕まったから、俺の負け、ってこと。
……あー……。
「舞戸さんも中々やりますね」
何時の間にか社長が来ててにやにやしてた。
……俺の動き方が読みやすい、って、分かってたんだろうな。
「ま、さっきのは角三君の落ち度だな」
そんなに俺の動き方、読みやすかったのかな……。
……悔しい。
「……もう一回、やらない?」
聞いたら、全員即答した。
……勿論、第二ラウンド開始。




