作戦会議(後編)
毎日投稿できるように頑張ります。
「――――よし決めた。最初からオターネストに行くぞ」
「相変わらず、いきなりだな。何か理由はあるのか?」
「ある。俺が敵と同じ立場なら、ライカをオターネストに連れて行くからだ」
怪訝な顔をするおっさんに、俺は自信たっぷりに断言した。
ライカの存在は、こちらの最高戦力であるボルゾイを完璧に封じるトランプのジョーカーのようなものだ。
ライカが人質としてサルーキの手元にある限り、ボルゾイは魔王軍の言いなりにならざるを得ない。
それならば――――
「俺なら、ライカを解放しないで人質として利用し続ける。最初から解放しないと決めているのなら、さっさとオターネストに連れて行った方がいい」
胸糞の悪い話だが、そうするのが最も合理的だ。
「解放しないって……。本当なのか?」
「そもそも、降伏したらライカを解放するなんて、あいつは一言も言ってないだろ」
俺が指摘すると、おっさんは豆鉄砲を食らったような顔をして黙り込んだ。もしかすると、気づいていなかったのかもしれない。
「降伏したところで、保証されるのはライカの命だけだ。多分、解放どころか、会うことすらできないと思うぞ」
もっとも、ボルゾイが魔王軍の一員として十分な戦果を上げれば、見返りに会わせてもらえるかもしれない。
幾人もの人間を殺した後、お互いに会わせる顔があるのなら――――という話になるが。
(悪趣味すぎて反吐が出る)
『そう考えると、やっぱり、降伏するのは論外ですね』
俺の心の声に、山田がしみじみと賛同した。
「オターネストの件については、お前たちの判断に任せるよ。……でも、そうすると、森人の集落の方はどうするんだ?」
「放っておいても大丈夫だろう」
ボスであるサルーキが三日後と明言した以上、それよりも早く、部下が独断で動くとは思えない。
少なくとも三日間は、集落にちょっかいを出してくることはないはずだ。
「どうしても心配なら、何人かで見張りをすればいい」
俺がそう言うと、おっさんを含む数人が即座に名乗りを上げた。
「それじゃあ、これで話は終わりだ。俺とハウンドは、準備ができたらすぐに出発する。行き当たりばったりの作戦だけど、失敗した時のことは考えないぞ」
そのために、皆にも腹を括ってもらったのだ。
俺の言葉に、全員が神妙な顔つきで頷いた。
「ボルゾイもそれでいいな? ライカの命、俺が預からせてもらうぞ」
「……頼む」
それまで、殆ど口を挟まずに成り行きを見守っていたボルゾイは、居ずまいを正して深々と頭を下げた。
「すまない。本来であれば、私がもっと早く決断をしなければいけない問題だった。ライカのために、皆を巻き込んでしまい、本当に申し訳なく思っている」
「謝らなくていい。俺が勝手にやることだ。――――それに、前にも言っただろ?」
今生の別れみたいになるし、しんみりと送り出されるのは性に合わない。
俺は景気づけのつもりで、以前は聞き流されてしまった大風呂敷を、もう一度、派手に広げることにした。
「俺は最終的に魔王をぶっ殺すつもりなんだ。それに比べたら、オターネストに乗り込んで、ライカを助け出すくらい、どうってことはない」
「お前、それ、本気だったのかよ……」
「本気だぞ」
苦笑するおっさんに、俺は真顔で言い返した。
「邪魔な奴を片っ端からぶん殴って行けば、最終的には魔王もぶん殴ることになるからな」
『そんな道の真ん中を歩くチンピラみたいな理由で、世界を救う気ですか!?』
(文句あるのか?)
たとえ俺が勇者であろうと、見ず知らずの赤の他人のために、命を懸けるつもりはない。
俺が動くのは、自分に利益がある時と、気が向いた時だけ。
俺が命を懸けるのは、納得のいかない展開を、強引に引っ繰り返す時だけだ。
「無茶苦茶で、デタラメだな。……でもまあ、お前なら、何かやりそうな気がするよ」
「当たり前だ。――――お前ら。もし、俺がライカを連れて無事に帰ってきたら、俺のことを勇者と崇めろよ」
「そんなことでいいなら、いくらでも崇めてやるよ」
だから、無事に帰って来い、と。
おっさんだけではなく、その場にいた全員が、俺たちに声を掛けてくれた。
その後、俺とハウンド、そして、森人の集落を監視する数人の有志は、準備を万端に整えて出立した。
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